home>祈り>アレオパゴスの祈り>2015年 2月

アレオパゴスの祈り

バックナンバー

アレオパゴスの祈り 2015年 2月 7日


梅


今年の6月15日、聖パウロ女子修道会は創立100周年を迎えます。1914年、イタリアのアルバに聖パウロ修道会を創立したアルベリオーネ神父は、男子と同じ使命を持ち、社会的コミュニケーション手段によって、福音宣教する女子の会、聖パウロ女子修道会を創立しました。初代総長のシスターテクラ・メルロは、アルベリオーネ神父に協力し、今までになかった新しい修道会の創立に協力しました。今年は、シスターテクラ・メルロのことばを味わいながら、ご一緒に祈ってまいりましょう。

わたしたち一人ひとりが心に抱いている意向、祈りを必要としている人々を神の御手にゆだねて、しばらく思い起こしましょう。

お祈りしたい意向を心の中にたずさえて、ローソクをささげましょう。

聖霊がわたしたちの心を照らし、この祈りの時間を導いてくださいますようにと願いながら、

『平和を祈ろう』No.82、「聖霊いま、我に降り」①、③

明日、ミサの中で朗読される、マルコによる福音の一部を聞きましょう。

マルコによる福音(マルコ1.35~39)

朝早くまだ暗いうちに、イエスは起きて、人里離れた所へ出て行き、そこで祈っておられた。シモンとその仲間はイエスの後を追い、見つけると、「みんなが捜しています」と言った。イエスは言われた。「近くのほかの町や村へ行こう。そこでも、わたしは宣教する。
そのためにわたしは出て来たのである。」そして、ガリラヤ中の会堂に行き、宣教し、悪霊を追い出された。

イエスが、「なぜこの世に来られたのか」。福音書の後半部分では、その理由をイエスご自身が語っておられます。「近くのほかの町や村へ行こう。そこでも、わたしは宣教する。そのためにわたしは出て来たのである。」神は、日々のさまざまな出来事、人との出会いをとおして、「ご自分の救いのわざに協力してほしい」とわたしたち一人ひとりに呼びかけておられます。)

シスターテクラも、神からの呼びかけに応えた女性でした。
1894年2月20日。後のシスターテクラとなる、マリア・テレザ・メルロは、イタリアのピエモンテ州クーネオ県にある、カスタニート村に生まれました。カスタニートは、現在人口2000人ほどで、昔から農業、特に果物の生産で有名な村でした。テレザの家庭は農家で、4人兄弟の2番目として、生まれました。両親は畑の土地を所有し、比較的恵まれた環境の中で、テレザは育ちました。彼女は幼いときから、控えめでつつましい、とてもやさしい女の子でした。学校での成績は優秀でしたが、体の弱かったテレザの将来を考え、両親は、ししゅうや裁縫を学ばせました。)

テレザは18歳のとき、村の若い女性たちに裁縫を教える小さな作業所を始めました。彼女は作業所で、そして教会でキリスト教についての基礎知識である公教要理も教えていました。テレザは物心ついたときから、一つの夢を心に抱いていました。それは、シスターになって、神様のために自分の人生をささげることでした。貧しい人や体の不自由な人たちに奉仕する修道会に入りたかったのですが、健康上の理由であきらめていました。)

そんなとき、アルバでは、アルベリオーネ神父が少年たちを集めて設立した印刷学校が始まって、1年が経っていました。後にメディアによって宣教する聖パウロ修道会の始まりです。アルベリオーネ神父は女子修道会の創立のことも考え、何人かの若い女性、少女たちを集めていました。しかし、彼女たちはまだ出版事業を始めることができず、当面の仕事として第1次世界大戦で戦っている兵士たちのシャツを縫っていました。テレザの弟であるコスタンツォは教区司祭で、アルベリオーネ神父をとても尊敬していました。アルベリオーネ神父は、コスタンツォ神父の姉、テレザが、裁縫も公教要理も教えるのが上手だと聞き、女子の修道会に招きたいと考えていました。)

コンスタンツォ神父の計らいで、テレザは母親のヴィンチェンツァと一緒にアルベリオーネ神父と教会で会うことになりました。)

サンロレンツォ教会
テレザとアルベリオーネ神父が出会った
聖コスマとダミアノ教会


母と教会を訪れたテレザは、まず聖堂でしばらく祈りました。そして、母は娘に、「テレザ、ここで祈っておいで。わたしはアルベリオーネ神父様と話してきます」と言って、香部屋に行きました。数分経つと戻って来て、「いらっしゃい、神父様が待っておいでだよ」と言いました。テレザは静かにドアの方に行き、姿を消しました。母は聖堂で待ちながら、心臓の鼓動が高鳴るのを感じつつ、娘のために祈りました。やがてテレザは、落ち着いた上品な物腰で戻ってきました。その目は前よりもいっそういきいきしていました。テレザは母を見つめてほほえみました。母はほほえみだけでは満足できず、こうたずねました。

  「神父様はなんとおっしゃったの? 」
  「そのお仕事に協力するよう招いてくださいました。」
  「そのお仕事って? 」
  「神父様は、出版を使っての宣教事業で女性にも多くの善が行えるとおっしゃるのよ。」
  「でも……でも、それがあなたに何の関係があるの?  あなたは何をしなければならないの? 」
  「何も……nただ神父様に従うことだけ。」

母は、試しに15日間だけ、先に入会していたアンジョリーナ・ボッフィの家にテレザをあずけてみることにしました。兵士たちのシャツを縫うという最初の仕事は、いつしか本の手縫いをしたり、製本、発送をしたりという作業に代わっていきました。そして、1917年には活字を組んで、印刷する作業を始めていきました。15日間は倍になり、3倍になり、ついにテレザの生涯のすべてになってしまいました。テレザは生涯を通じて献身し、アルベリオーネ神父という神の代理者をとおして知るみ旨に、余すことなく自らをゆだねることによって、使命を果たしていきました。
        (『よいたよりの使者』オルガ・アンブロージ著、アグネス・レト訳 p.43~46参照 女子パウロ会刊行))

(沈黙)

当時、修道女と言えば、観想会のように修道院の中で、祈りの生活や、病院や学校、貧しい人たちに奉仕するというイメージがありました。しかし、アルベリオーネ神父は、出版による宣教によって、社会に福音をもたらすシスターたちを育てようと考えていました。女性の社会進出がまだめずらしかったころ、この前代未聞のビジョンを理解する人は少なく、多くの反対を受けました。そのような状況の中、テレザは、まだだれも歩んだことのない道を歩もうとしていました。

聖堂
1922年、誓願を立てた最初の9人、一番左に座っているのが、テレザ


わたしたちがイエスのすべてのおことばを深く理解できたらどんなにすばらしいことでしょう。福音書が広く読まれ、愛され、それにそって生きられるように祈らなければなりません。現代的手段を用いて、あらゆる家庭に、社会全体に、福音をしみこませることができるでしょう。この実現のために、わたしたちは祈り、自分の苦しみをささげましょう。そうすれば社会はもっとよくなるでしょう。
       (『よいたよりの使者』p.190 より 女子パウロ会刊行) 

このことばを思いめぐらしながら、しばらく沈黙のうちに祈りましょう。

(沈黙)

わたしたちの住む社会には、さまざまな価値観があります。時には、福音的ではない考え方、メンタリティーに出会うこともあります。イエスの最も根本的な教えは、「互いに愛し合いなさい」(ヨハネ13.34)ということでしょう。命が守られ、愛によってお互いを大切にする社会が実現しますように。イエスの福音が多くの人に受け入られますように、特にマリア様の取り次ぎを願って祈りましょう。

『パウロ家族の祈り』p.211、「使徒の女王聖マリアに向かう祈り」①を唱えましょう。

   天と地の女王、御父の愛娘(まなむすめ)、神の御子の母、聖霊の花嫁であるマリア、
   この世であなただけに与えられているすぐれた恵みを、尊びたたえます。
   あなたは、謙遜と信仰によって神のみ心にかない、完全な純潔を保ち、
   わたしたちの師、世の光、永遠の知恵、真理の源、真理の最初の使徒で
   ある救い主の母となられました。
   あなたは「永遠のみことば」という本を与えられました。
   いい尽くせない喜びと、比類ない恵みをあなたに与えられた
   三位一体の神をたたえます。
   知恵の賜物、イエスの謙遜で忠実な弟子となる恵み、
   真理の守り手である教会の敬けんな子となる恵みを、わたしのために求めてください。
   福音の光を地の果てまで輝かせ、さまざまな誤りを正し、
   すべての人をペトロの後継者である教皇のもとに集めてください。
   よい勧めの御母、上知の座、諸聖人の女王マリア、
   知識人、宣教者、執筆者を照らしてください。
    使徒の女王聖マリア、わたしたちのために祈ってください。

神の呼びかけは、聖人と呼ばれるような、ある特別な人々だけにあるのではありません。わたしたちはそれぞれが生活している場で、神様に「はい」と応えるよう、招かれています。今、わたしは生活の中で、人との関わりの中で、どのような呼びかけを感じているでしょうか。沈黙のうちに、ふり返ってみましょう。

(沈黙)

『パウロ家族の祈り』p.48、「自己の召命のためにする祈り」を唱えましょう。

   天の父よ、あなたの英知と愛を信じます。
   天の国のためにわたしを造り、その道を備え、
   忠実な者たちに約束された報いを与えてくださることを信じます。
   わたしを照らし、道を示し、寛大にこれに従って歩む力をお与えください。
   御子イエス・キリストと、女王であり母であるマリアによって次の恵みを願います。
   臨終のときには聖パウロのように、
   「わたしは、戦いを立派に戦い抜き、決められた道を走りとおし、
   信仰を守り抜きました。今や、義の栄冠を受けるばかりです」と言うことができますように。

わたしたちが必要としている恵み、また日本をはじめ、世界で苦しんでいる人々のために、恵みを求めて祈りましょう。

   主の祈り、アヴェ・マリアの祈り、栄唱

この祈りの時間にいただいた恵みを沈黙のうちに思いめぐらしましょう。

(沈黙)

わたしたち一人ひとりに与えられている道を、歩むことができますように、願って歌いましょう。

『平和を祈ろう』No.85、「この道は」①、②を歌いましょう。

祈りましょう
   父である神よ、
   あなたはシスターテクラ・メルロを選び、
   社会的コミュニケーション手段によって福音を宣べ伝えるよう、彼女をお招きになりました。
   わたしたちもそれぞれに与えられた場で、祈りと愛の業をささげ、
   あなたのみことばの豊かさを人々と分かち合うことができますように。
   わたしたちの主イエス・キリストによって。アーメン。

   父と子と聖霊のみ名によって。アーメン。

これで今晩の「アレオパゴスの祈り」を終わります。



「アレオパゴスの祈り 年間スケジュールと祈りの紹介」に戻る

▲ページのトップへ