home>祈り>アレオパゴスの祈り>2015年12月

アレオパゴスの祈り

バックナンバー

アレオパゴスの祈り 2015年12月 5日


 水仙


今年最後の月を迎えました。教会の暦では、今週の日曜日から待降節が始まり、救い主の誕生を待ち望む季節となりました。また12月8日の「無原罪の聖マリア」の祭日から、「いつくしみの特別聖年」が始まります。この特別聖年は、「御父のように、いつくしみ深い者となりなさい」(ルカ 6.36)をモットーに、2016年11月20日「王であるキリスト」の祭日まで続きます。特に御父のいつくしみをよりいっそう味わうよう、フランシスコ教皇はわたしたちに呼びかけておられます。

今年、いただいたすべての恵みに感謝しつつ、聖母マリアとともに、救い主の誕生を待ち望みながら祈りましょう。またこの地上にまことの平和が実現しますように、特に戦争、飢餓で苦しんでいる人々のために、祈りましょう。

わたしたち一人ひとりが心に抱いている意向、祈りを必要としている人々を神の御手にゆだねて、しばらく思い起こしましょう。

(沈黙)

お祈りしたい意向を心の中にたずさえて、ローソクをささげましょう。

教皇は、「いつくしみの特別聖年」の勅書の中で、次のようにおっしゃっています。
「イエス・キリストは、御父のいつくしみのみ顔です。いつくしみは生きたもの、見えるものとなり、ナザレのイエスのうちに頂点に達しました。『あわれみ豊かな』(エフェソ2.4)御父は、モーセにご自分の名を『あわれみ深く恵みに富む神、忍耐強く、いつくしみとまことに満ちる者』(出エジプト34.6)と明かされ、さまざまなかたちで、歴史において、その神性を知らせてくださいました。『時が満ち』(ガラテヤ4.4)、その救いの計画に従ってすべてが整えられると、御父はおとめマリアから生まれた御子を遣わし、わたしたちにご自分の愛を決定的に明らかになさいました。御子を見る者は父を見るのです(ヨハネ14.9参照)。」(教皇フランシスコ著『イエス・キリスト、父のいつくしみのみ顔』No.1より)

出エジプト記には、神である主がモーセと語る場面がたびたび登場します。あるとき、モーセは、「どうか、あなたの栄光をお示しください」と願いました。すると主は、こうお答えになりました。「あなたはわたしの顔を見ることはできない。人はわたしを見て、なお生きていることはできないからである。」(出エジプト33.18~20参照)

しかし人間の苦しむ姿をご覧になった神は、時が満ちたとき、御子イエスをわたしたちに送られました。こうして神の栄光は人となり、わたしたちとともにいてくださる方となられたのです。

『カトリック聖歌集』No.103 「あわれみの神」① ②

無原罪の聖マリアの祝日に朗読される、福音を聞きましょう。

 マリア像
無原罪のマリア像(カトリック北仙台教会) 


ルカによる福音書(ルカ1.26~38)

六か月目に、天使ガブリエルは、ナザレというガリラヤの町に神から遣わされた。ダビデ家のヨセフという人のいいなづけであるおとめのところに遣わされたのである。そのおとめの名はマリアといった。天使は、彼女のところに来て言った。「おめでとう、恵まれた方。主があなたと共におられる。」マリアはこの言葉に戸惑い、いったいこの挨拶は何のことかと考え込んだ。すると、天使は言った。「マリア、恐れることはない。あなたは神から恵みをいただいた。あなたは身ごもって男の子を産むが、その子をイエスと名付けなさい。その子は偉大な人になり、いと高き方の子と言われる。神である主は、彼に父ダビデの王座をくださる。彼は永遠にヤコブの家を治め、その支配は終わることがない。」マリアは天使に言った。「どうして、そのようなことがありえましょうか。わたしは男の人を知りませんのに。」天使は答えた。「聖霊があなたに降り、いと高き方の力があなたを包む。だから、生まれる子は聖なる者、神の子と呼ばれる。あなたの親類のエリサベトも、年をとっているが、男の子を身ごもっている。不妊の女と言われていたのに、もう六か月になっている。神にできないことは何一つない。」マリアは言った。わたしは主のはしためです。お言葉どおり、この身に成りますように。」そこで、天使は去って行った。

東京教区、森一弘司教様の解説を聞きましょう。

ご降誕の祝日、すべての人々が待ち望んでいた方がおいでになります。その日は全人類にとって祝福の日です。しかし、全人類に先立ってその祝福を受けた方がいます。それはほかならぬマリアです。マリアが親類のエリザベトを訪問したとき、エリザベトはマリアを賛美します。

「主がおっしゃったことは必ず実現すると信じた方は、なんと幸いでしょう」(ルカ1.45)。神が言われたことば、それは救い主を必ず送るという約束です。そして、これはマリアが誕生する数千年前に言われていたことばであり、くり返し、くり返し言われてきたものです。しかし、その実現まで何百年も待たなければならなかったのです。

その間、イスラエル民族はさまざまな体験をします。それは、神の約束のことばとは相反する、悲惨な出来事でした。パレスチナは、しばしば外国の侵略の対象となります。男たちは戦争に取られ、罪のない人々が殺されたり、奴隷にされたりしました。家族はバラバラになり、孤児となった子どもたちが飢餓で死んでいくようなこともありました。人々の信仰の支えであった神殿も異国の軍隊によって破壊されます。イスラエルの歴史は、つらい出来事の絶え間ない連続でした。それは、絶望への誘惑の連続でもあったとも言えます。信仰を失うことにもつながりかねませんでした。何十年、何百年もじっと耐えながら、心の目を神の方に上げ続けることは大変なことです。真実の信仰が求められます。

わたしたちの日常の体験を考えてみましょう。悲しいことが何年も、何十年も続く中で、常に明るく希望を持ち続けることは並大抵のことではないでしょう。あきらめや失望など、心が暗くなってしまうことがあります。人間的な支えや慰めが奪われても、神がいらっしゃる……と思うことができたら、どんなにすばらしいでしょう。黒い雲に覆われても、その上に永遠の太陽があり、黒雲はいつか消えて、太陽が暖めてくれる。そう信じて、神の手にゆだねる信仰。神の約束されたことは必ず実現するという希望が、自分たちの生きている間に実現しなかったなら、イスラエルの人々はその希望を次の世代である子どもたちに渡しました。暗い歴史の中で、この希望を渡し続けたことにイスラエルの民の信仰があります。

マリアが生きていた信仰は、このようなものでした。不可能と思えることの中にあっても、神の約束は成就するという信仰をもって、マリアは天使のお告げにすべてをゆだねました。望みのない時に、なお望みをかける信仰の心が、神の祝福を実らせたのです。
  (森一弘著、『日曜日の説教集C年 神のやさしさの中で』より)

しばらくふり返りましょう。

(沈黙)

信仰によって、わたしたちに救い主を与えてくださった聖母マリアに感謝して祈りましょう。
『パウロ家族の祈り』p.215 「三位一体への祈り」

   天と地の女王、御父の愛娘(まなむすめ)、神の御子の母、聖霊の花嫁であるマリア、
   この世であなただけに与えられているすぐれた恵みを、尊びたたえます。
   あなたは、謙遜と信仰によって神のみ心にかない、完全な純潔を保ち、
   わたしたちの師、世の光、永遠の知恵、真理の源、真理の最初の使徒で
   ある救い主の母となられました。
   あなたは「永遠のみことば」という本を与えられました。
   いい尽くせない喜びと、比類ない恵みをあなたに与えられた
   三位一体の神をたたえます。
   知恵の賜物、イエスの謙遜で忠実な弟子となる恵み、
   真理の守り手である教会の敬けんな子となる恵みを、わたしのために
   求めてください。
   福音の光を地の果てまで輝かせ、さまざまな誤りを正し、
   すべての人をペトロの後継者である教皇のもとに集めてください。
   よい勧めの御母、上知の座、諸聖人の女王マリア、
   知識人、宣教者、執筆者を照らしてください。

   使徒の女王聖マリア、わたしたちのために祈ってください。

フランシスコ教皇は、11月25日から30日まで、ケニア、ウガンダ、中央アフリカを訪問されました。11月28日には、ウガンダで若者たちとの集いに参加し、生まれた時からエイズに感染している女性と、子どもの頃、武装勢力によって少年兵士となることを強要されましたが、逃亡し助かった経験を持つ男性の話をお聞きになりました。教皇は、2人の若者の話を大きな苦しみを感じながら聞いたと述べられ、彼らの信仰と勇気をたたえて、次のようにコメントを残していらっしゃいます。

お話を聞きながら、「ネガティブな体験は、人生の何かに役立つだろうか」と自問し、「役立つことができる」との答えを得ました。自分の人生には未来がない、人生が自分の前に立ちはだかる壁のように思われることがあっても、イエスの力によって、壁を未来に開く地平線に、失望と苦しみを希望に変えることができます。イエスは、歴史上、最もネガティブな体験に苦しみました。しかし、イエスは神の力をもって復活されました。イエスはそれをネガティブな体験に苦しむわたしたち一人ひとりの中でも行ってくださいます。なぜなら、イエスは主だからです。ネガティブをポジティブに変えることができるなら、それは勝利者と言えるでしょう。しかし、それはイエスの恵みを通してのみ可能なのです。皆さんはこれを確信していますか? 人生の辛い体験をポジティブなことに変えられますか? 憎しみを愛に変えられますか? 戦争を平和に変える努力ができますか? 皆さんはウガンダの殉教者たちの民です。それゆえに皆さんは信仰と命を持っています。これほどにも美しい信仰と命、これを「アフリカの真珠」と呼ぶのです。
バチカン放送局ホームページより

御子の到来によって、世界にまことの平和が実現しますように。平和の君であられる御子をたたえて歌いましょう。

 マリア像


『カトリック聖歌集』No.652 「あめにはさかえ」① ②

世界の人々の必要のため、またわたしたちが神のいつくしみを周りの人々に伝える道具となることができますように、主の祈りを唱えましょう。

この祈りの時間にいただいた恵みを感謝しましょう。

(沈黙)

祈りましょう 恵み豊かな父よ、世界が闇に覆われているようであっても、あなたはまことの光キリストによって、世界を照らしてくださいます。御子の誕生を待ち望むわたしたちが、あなたの恵みに強められ、兄弟姉妹たちに救い主の誕生の喜びを伝える者となりますように。わたしたちの主イエス・キリストによって。アーメン。 父と子と聖霊のみ名によって。アーメン。

これで今晩の「アレオパゴスの祈り」を終わります。



「アレオパゴスの祈り 年間スケジュールと祈りの紹介」に戻る

▲ページのトップへ