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私の薦めるこの一冊
マルガリータ
- 著者:村木 嵐
- 定価:本体1,500円+税
- 四六判 上製(カバー装) 304ページ
- ISBN978-4-16-329510-7 C0093
- 発行:株式会社 文藝春秋
4人の天正の遣欧少年使節については、昨年「ペトロ岐部と187殉教者」の列福式の前から、よく教会の中で話を聞く機会がありましたので、皆様もよくご記憶のことでしょう。
正史として、伊東マンショ、千々石ミゲル。副使として、原マルチノ、中浦ジュリアンの4人がイエズス会の巡察師ヴァリニァーノに率いられ、キリシタン大名たちの期待を背負い、1582年長崎港を発ちました。8年6ヶ月に及ぶ旅から帰国してみれば、日本には、宣教師追放令が出されており、国内の情勢が変わっていました。
本書は、この4人の少年使節の中で、唯一、棄教したと言われている千々石ミゲルの生涯を、妻となった珠の目から描いた小説です。
著者である村木嵐さんは、司馬遼太郎さんに仕えていましたが、亡くなられてからは夫人の福田みどりさんの秘書をなさっているカトリック信者の作家です。
殉教した中浦ジュリアン神父と今は千々石静左衛門を名乗るミゲルとの白州における苦悩あふれる対話、また、夫・静左衛門亡き後の珠とジュリアンとの対話は読む者の心を打つに違いありません。
著者は、殉教の時代に生きようとした一人の信者として、千々石ミゲルを取り上げ、何のために生きようとしたのかを追求しています。
さらに、ミゲルを慕う純粋な女性として珠を描くことによって、「現代に生きる私たちとの橋渡しになると考えました」と著者は語っています。
書名の「マルガリータ」は、珠がミゲルの渡欧の際にお守りのように渡した真珠のこと。ミゲルは、帰国後、それを珠に返したが、ミゲルの最期の言葉はまた、「マルガリータ」だったと書かれています。
本書は、第17回松本清張賞を受け、著者は「大型新人」として期待されている方です。