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 アンナ

2003年9月

まなざしの向こうに

アンナ

  • 監督・脚本:ウラ・ヴァグナー
  • 出演:アリス・ディーケリング、レネ・ソーテンダイク
  • 音楽:トマス・オスターホフ

2000年 ドイツ映画 98分


母を慕う娘と、夫との別離から立ち直ることができない母の物語です。ちょっと苦しくなる親子関係です。母親は親である前に、一人の女性だということを、改めて感じさせられる映画でした。“離婚”が多い現代にあって、子どもたちの悲しさを考えてしまいました。

物語

草原を走りぬけて来た女の子が、小さな池の前にかかんで、水の中をのぞき込んでいる。女の子は水に手を入れ、カエルの卵をそっとなでた。この子の名はアンナ(アリス・ディーケリング)、11歳。母親のソフィー(レネ・ソーテンダイク)と弟のローリーの3人暮らし。父フリッツは、戦争で死んだと母親から聞かされている。アンナに父親の記憶はほとんどない。父の弟フランツが、近所で小さな工場を経営している。そこは、アンナたちの遊び場だ。

ソフィーに仕事はなく、酒におぼれる毎日で、3人の生活は貧しくみじめなものだ。ソフィーは、生活のために仕事を探そうとするが、なかなかうまくいかない。自堕落な母親を、ときには介護し、弟の世話をしながら、アンナはしっかりとした女の子に育っていた。

ある日、アンナは、ソフィーが大切に隠している箱を見つける。そこには、父親の写真が入っていた。アンナは、父親が生きていて、フランスのどこかにいると、ソフィーから知らされる。父親が生きていると知ったアンナは、父親に会いたいと願い、手紙を書いて、街角の郵便ポストに投函する。

水たまりのカエルはオタマジャクシになり、小さな足で泳いでいた。アンナにも、新しい成長がはじまっている。

やがてソフィーの手が震えるようになり、彼女はアルコール中毒患者として、病院につれていかれる。

ソフィーが退院し、3人は、また一緒に暮らせるようになる。ソフィーは新しい気持ちでやりなおそうと、アンナとローリーを抱き締める。

ある夜、帰宅したソフィーは、郵便物の中に一通の手紙を見つける。その手紙を読んだソフィーは、自殺をはかり死んでしまう。それは、ソフィーの元へ帰る気持ちはないと書かれたフリッツからの手紙だった。

母親を失ったアンナはフランツに引き取られることになる。一人暮らしのフランツは、ソフィーに一緒に暮らそうと言っていたが、フリッツを忘れられないソフィーは、その申し出を断っていたのだった。

フランツの家に迎えられ、自分のために用意された部屋に入ったアンナは、一大決心をする。長い髪を自分で切り、友達の男の子から借りた服を来て、国境を越え父親を探しに行くのだ。

大きなザックを背負い、帽子を深くかぶったアンナは、親指を立てて路上に立った。ヒッチハイクをしてフランスを目指すアンナの旅がはじまった。

 

アンナは、フランツと話しながら、またヒッチハイクの旅をしながら、次第に女性としてのソフィーを知っていきます。たった11歳の子どもですが、母親が大好きだったアンナには、ソフィーの辛い心が理解できるのでしょう。映画が進むうちに、アンナとソフィーの心が重なっていくように感じました。

親を思う子どものまなざしを、子役のアリス・ディーケリングは、大人の演技のように深く演じていました。彼女は、ドイツ国内でおこなったオーディションによって選ばれ、この作品がデビュー作だそうです。大人たちをじっと見上げる大きな目がステキで、「生きていく!」という力強さを感じました

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