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 ほたるの里

2004年5月

ほたるの里

  • 脚本・監督:菅原浩志
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  • 原作:宗田 理『ほたるの里』(角川文庫)
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  • 音楽:中西長谷雄
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  • 出演:小澤征悦、菅谷梨沙子、山本未來、役所広司

2003年 日本映画 101分

  • 第16回東京国際映画祭コンペティション公式参加作品
  • 文部科学省選定
  • 東京都知事推奨

働きながら苦労して資格を取り、夢だった小学校に赴任してきた新米先生と、母親を亡くした教え子が、ほたるを育てることをとおして、それぞれに成長していく姿を描いた、ほのぼのとした心あたたまるお話です。実話をもとに製作されたこの映画は、舞台となった山口県では、すでに先行ロードショーが行われています。

NHK朝の連続ドラマ「さくら」で人気者になった小澤征悦が、今回も教師役の主人公を演じています。理想とかけ離れた教育現場で、子どもたちのことを第一に考え、誠実に関わっていく新米教師を、さわやかに演じています。

物語

新任の教師が、山口県の小学校に赴任してきた。働きながら勉強し、やっと教員試験に合格した三輪元(はじめ・小澤征悦)だ。希望を抱いて教室に入ったが、子どもたちは先生の言うことをきかないし、学校の運営方針は教育とは少しかけ離れている。親たちは学校にしつけを求め、学校給食をとおして何でも食べられるようになればと期待している。ころんだらケガをするということで、体育でも思い切り運動させることもできない。理想と現実の違いにとまどうことばかりだ。保健医の七海(ななみ・山本未來)だけが、元にいろいろと教えてくれる。

元のクラスに、だれとも話そうとしない女の子・比加里(ひかり・菅谷梨沙子)がいる。いつもすみっこに一人でいて、体育の授業にも参加しようとしない。元はなんとか皆の中に引き込もうとするが、泣かれてしまった。比加里は東京で暮らしていたが、母親が亡くなり、暴力をふるう父親から、親戚の家に引き取られて暮らしていた。「心の問題が、一番やっかいだ」と、七海は元にあせらないようにと忠告する。

比加里の姿から、元は自分が小さかったころのことを思い出す。父親が事業に失敗して借金をかかえるようになり、そんな生活に耐えられなくなった母親は、元を捨てて家を出ていってしまった。自暴自棄になって学校へも行かなくなった元の面倒をみてくれたのは、担任の瀧口先生(役所広司)だった。勉強だけでなく食事の世話もしてくれた瀧口先生のおかげで、元は生きることができたのだ。そのときから、小学校の先生になろうと強く思っていた。

ある日、元は、課外授業で近くの川へ子どもたちと出かけた。周辺の川は自転車などが捨てられ、ゴミがたまって異臭をはなっていた。

 「こんなところに、ほたるが飛んだら、きれいだろうな」

川をながめながら、何気なくつぶやいた元のことばに、今までダラダラとしていた子どもたちが、目を輝かせて振り向いた。ほたるを見たことがない子どもたちは、この川にほたるを飛ばそうと言いだした。クラス全員で、ホタルを育てることになった。

ほたるがいるのは、きれいな水だ。さっそく子どもたちは、川の清掃作業に取りかかった。さらに、学校の水飲み場にほたるの飼育場を作り、当番でほたるの世話をはじめた。

「ほたるが舞うとき、一番会いたい人にあえる」という話を聞いた比加里も、クラスの子たちと一緒にほたるの飼育に加わった。比加里は、お母さんに会いたい一心から、まるで何かにとりつかれたようにほたるの世話をした。しかし、教師の中には、「ほたるが飛ばなかったら、子どもたちが傷つく」と、教頭をはじめ反対する教師も多かった。元は、「子どもたちを、決して見捨てない大人になりたい」と、子どもたちの夢を守る。

困難に遭いながらも、ほたるの幼虫は育ち、川に放流するときが近づいてきた。そんなとき、思いがけないことが起きた。役所が護岸工事を開始するという看板が立てられたのだ。川底がコンクリートになってしまえば、ほたるの幼虫は生きていけない。子どもたちは、工事に反対する署名運動をはじめた。

 

元や比加里の姿から、他の人にはわからないけれど、夢やある願いを持って生きている人の強さを感じました。それはほたるの光のようにごく小さなことかもしれませんが、いつかかなう……と信じて生きていくことは大切なことで、やがて周囲を変えていきます。元の姿を見ながら、体制に偏っていた教師たちも、本来の教育に目覚めていきます。

また、子どもたちが団結したときのパワーのすごさも見ました。「そんなことしたって、無理だよ」と、大人があきらめるようなことでも、純粋な子どもたちが「一緒にやろうよ!」と一致したら、社会の仕組みをも動かしてしまうことがあります。いちずな思い、そんなひたむきさを忘れていたなと思いました。

ほたるを見ることができた元のクラスの子どもたちは、比加里の一途さをとおして一致していき、全員の足を結んで走るムカデ競争でも、完走することができたのでした。大人も、子ども、親も、先生も、ご覧ください。

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