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 シルヴィア

2004年12月

Sylvia

シルヴィア

  • 監督:クリスティン・ジェフズ
  •   
  • 出演:グウィネス・パルトロウ、ダニエル・クレイグ
  •   
  • 音楽:ガブリエル・ヤーレ

2003年 イギリス 110分


シルヴィア・プラスは、1932年、マサチューセッツ州で生まれた、アメリカで有名な詩人です。その作品の多くは、1963年に彼女が亡くなった後に出版されました。1981年に出版された詩集「Collected Poems」で、翌年ピュリッツァー賞を受賞しました。

映画「シルヴィア」は、大人になってからのシルヴィアの愛と死を描いた作品として見ることもできますが、才能を持った女性、やりがいのある仕事を持った女性が、妻として母としてどう生きるかという、女性の永遠のテーマについて考えさせられる作品でもあります。

物語

詩人として優れた才能にあふれていたアメリカ人のシルヴィア・プラス(グウィネス・パルトロウ)は、フルブライトの奨学生として、ケンブリッジ大学に留学した。彼女には、自殺未遂事件をおこし精神療法を受けたという過去がある。同人誌上でのシルヴィアの詩への評に不満を感じていたシルヴィアは、ただ一人、彼女の詩を認めてくれたイギリス人の大学院生テッド・ヒューズ(ダニエル・クレイグ)に会うため、パーティーに行く。2人の会話の中で、シルヴィアはテッドの詩の才能を認める。詩を介して、2人の関係は親密になっていく。

シルヴィアは、母親の反対を押し切ってテッドと結婚し、ロンドンに住む。シルヴィアは、自分たちの詩を発表するため、出版社やコンテストに送り続ける。やがて、テッドの詩が賞を受ける。喜んだ2人はシルヴィアの実家に戻り、小説を書いて一夏を過ごそうとするが、シルヴィアは、何も書けず追い込まれていく。

シルヴィアは生活を支えるために、母校で教壇に立つ。しかし、仕事に追われるシルヴィアは、次第に詩を書く時間がなくなってくる。さらに、「テッドは女性好き」だといううわさを聞いたシルヴィアは、テッドが他の女性と関係しているのではないかと疑いはじめる。

2人はロンドンに戻る。シルヴィアは女の子を出産し、テッドは作品が認められ、次第に有名になっていく。

再び引っ越しをするために、ロンドンの家を手放すことにした2人は、新しい借り手として、デヴィッドとアッシア夫婦の訪問を受ける。アッシアは、シルヴィアの詩の愛読者で、いつかシルヴィアたちの新居を訪ねると約束する。

シルヴィアは男の子を出産する。ある日、テッドとシルヴィアは、デヴィッドとアッシアの訪問を受ける。ともに過ごす中で、シルヴィアは、テッドとアッシアの関係に気づく。その後、テッドは仕事のため家をあける期間が長くなっていく。テッドが離れていく苦しみの中で、シルヴィアは詩を書いていく。

テッドとの和解を求めてシルヴィアは子どもたちをつれ、ロンドンへ戻る。テッドと会うことができたシルヴィアは、もう一度、テッドの愛の中でやっていきたいと告げるが、テッドは「アッシアは妊娠していて、彼女と別れることはできない」と冷たく拒絶する。

ある朝、シルヴィアは行動に移る。眠っている子どもたちのために朝食を準備し……。

 

シルヴィアは、なぜ、テッド・ヒューズと結婚したのでしょう。テッドとの結婚に、何を求めたのでしょう。シルヴィアは、自分の詩を認めてくれた彼の才能に引かれ、彼の才能を生かすことを自分の喜びとするのですが、それが本当の愛なのか、映画を見る限りでは疑問です。自分が安心するため、自分を認めてくれる人の腕の中にいたかったのかもしれません。テッドとの結婚生活の中で、自分の詩の才能を開花させるということを、どう考えていたのでしょう。夫との生活の中で、自分の才能のために生きることはありませんでした。事実、シルヴィアがあふれるように詩を書くことができたのは、夫と別れてからです。

世に才能を認められた夫への嫉妬と女性問題への疑惑、自分は夫から捨てられるのではないかという不安、、精神的な落ち込み、詩を書く時間がないことへの不満……と、さまざまな不安と不満が怒濤のように渦巻いていきます。そんな中で、シルヴィアは夫に頼ることなく、子どもたちを大切に育てました。欲求不満のはけ口が、幼い子どもに向かわなかったことは救いでした。しかし最終的には、死を選びます。大きな輝く宝が、だれにも知られることなく埋もれてしまったような感じです。

「何かできることはなかったのか……」映画を見終わって、まず思ったことでした。シルヴィアは一人ですべてを抱えてしまったように思います。考えさせられる作品です。

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