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 カナリア

2005年3月

カナリア

  • 監督・脚本:塩田明彦
  • 出演:谷村美月、石田法嗣、西島秀俊、りょう
  • 音楽:大友良英
  • 配給:シネカノン

2004年 日本映画 132分

  • 第2回日本映画エンジェル大賞受賞作品

岩瀬光一(石田法嗣)は12歳。数年前、母親の道子は、光一と妹の朝子を連れてあるカルト教団「ニルヴァーナ」に入信した。光一と朝子は、入信したその日に母と引き離され、子どもたちだけの施設に入れられ、母と会うこともなく過ごしてきた。しかし、このカルト集団が起こしたテロ事件によって、子どもたちは警察に保護され、妹と共に関西の童相談所に預けられた。東京から祖父(母の父親)が来たが、朝子だけを引き取って帰って行った。光一は朝子を取り戻すために、施設を脱走する。

裸足で飛び出した光一は、廃校となっている学校で、古い運動靴とドライバーを拾う。東を目指して畑道を走っているときに、車に乗せられ手錠をかけられている少女有希(谷村美月)を助ける。有希は、大人の男性の相手をして、お金をもらっていたのだった。有希も12歳。「母親は、お前を産みたくなかったのだ。しかし、もう手遅れだった」と父親から言われた有希も、寂しい境遇だった。

光一が「ニルヴァーナ」の子どもであり、児童相談所を逃げてきたことを知った有希は、

助けてくれたことへのお礼として、光一が東京へ行くために手助けをする。有希は、生きていくためのたくましさを身につけている少女だった。

お金が無くなり、食べるものもない状態になったとき、有希は万引きをしようと提案する。しかし、光一は、「ニルヴァーナ」の教えから「人の物を盗むと、盗まれた人の苦しみが必ず自分に返ってくる」と言い拒否する。そんな光一に有希は、「そんなら、なんであんたらは人を殺したん」と迫るが、光一は答えることができなかった。

光一は、「ニルヴァーナ」での生活を思い出していた。子どもたちの施設では、食事は「お供物(くもつ)」と呼ばれており、教育係のシェローパ(西島秀俊)によって、一人ひとりに配られていた。ある日、光一は、そのお供物を放り投げ、シェローパから厳罰を受けた。「お供物」は「尊氏のエネルギーが入っている」ものとして大事に扱われていたのだ。妹の朝子は、母親から引き離されたショックにより、食事をせず起きることができない状態だった。

東京に着いた光一と有希は、町の掲示板に貼られたテロ実行犯たちの指名手配のチラシを見る。そこには、母・道子の顔写真が載っていた。光一は、手放さずに持っているドライバーの先を研ぎながら、教団でのことを有希に話す。

光一の記憶をたどって着いた祖父の家は、もぬけのからだった。家のいたるところに落書きがされていた。娘が起こしたテロ事件により、祖父もここに住んでいられなくなったことを知る。

夜明けの町を、お腹をすかせてあてもなく歩いている2人に、声をかける人がいた。シェローパだった。「シェローパ!」と抱きつく光一に、「シェローパではない。今は、伊沢だ」と、2人を暖かく迎えてくれる。伊沢は、教団から脱会した仲間と一緒に、小さなリサイクル工場を営んでいた。仲間たちによって祖父の居場所が分かり、光一と有希は伊沢たちのもとを出発する。伊沢は、教祖の言葉を信じ切っていたころの自分を語りながら、「自分になれ。自分になることはつらいことだが、自分になれ!」と光一を力づけて送り出す。

祖父が住んでいるという町に来た2人は、食堂のテレビから流れるニュースで、教団の幹部たちが集団自殺を図ったことを知る。その中に、母・道子の名があった。

 

関西から東京への旅。その歩みの中で、有希に助けられていた光一は、次第に強くなっていきます。最後のシーンの光一の選択を、どう捉えていいかわからないくらいでした。大きなテーマを突きつけているように感じます。祖父と母・道子の親子関係、母と光一と朝子の親子、伊沢が暮らす脱会した元信者たちの共同体、そして、光一と有希と朝子、家族って何だろうと、大人は子どもの前でどう生きればいいのだろう……、見ている者が、いろいろなことを問われる映画です。

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