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 Little Birds リトルバーズ

2005年3月

-イラク 戦火の家族たち-

Little Birds

  • 撮影・監督:綿井健陽
  • 製作・編集:安岡卓治
  • 製作:安岡フィルムズ
  • 配給:Project “Little birds”

2005年 日本映画 102分

  • 2005香港国際映画祭正式招待作品
  • 2005テサロニキ国際ドキュメンタリー映画祭正式招待作品

アジアプレスのビデオジャーナリストの綿井健陽(わたいたけはる)氏は、2003年3月のアメリカによるイラク侵攻以来、「News23」などの報道番組にイラクからのリポートを送り続けました。綿井氏の1年半の取材期間中に記録した123時間の映像からできたのが、“Little Birds”です。テレビでは伝えることができなかった、悲惨な状況にある家族、子どもたち、街の様子が、緊迫感をもって迫ってきます。

映像は、イラク侵攻の2日前の街の様子からはじまっています。店のシャッターを閉め、厳重に鍵をかけて人々は荷物をまとめて街を後にしました。店の主人は、カメラを回す綿井氏に言います。「日本人は好きだ。しかし、なぜ、ブッシュの仲間になったのだ」と。そして、攻撃がはじまりました。激しい攻撃を受けた街に戻ってみると、シャッターは壊され、店も街もメチャメチャに破壊されていました。

綿井氏のカメラは、家に落ちた爆弾によって3人の子どもを亡くした父親、クライスター爆弾の破片を眼の水晶体に受けた少女、空き地にたくさん落ちていたクライスター爆弾の小爆弾のひもを持ち上げたとき、爆発して右手を失った男の子、アブグレイブ刑務所の前で、米軍に拘束された家族の釈放を待つ人々、医薬品の支援活動をしている日本のNGOなどを追っていきます。

次々と負傷者が運ばれてくる病院では、病院の職員が「この悲惨な状況を撮ってくれ」というように、カメラを持っている綿井氏をひっぱるようにして、ベッドに連れていきます。しかし、攻撃がひどくなってくると、日本人である綿井氏を責めるようになります。

陥落したバグダッドの街に、米軍の戦車が入ってきました。その戦車から顔を出している兵士に向かって、一人の若い女性が走って行きました。「子どもたちが大勢死んだ! あなたたちは何のために来たのか!」この女性は、「人間の盾」のメンバーでした。勇気のある女性です。

綿井氏も、カメラを回しながら米兵を問いつめます。「大量破壊兵器はあったのか、なんのための攻撃なのか」と。彼は答えることができず、悲しい顔をして綿井氏の方を振り返り振り返りして、仲間のところへ去っていきました。

血が流され、親たちが子を失った悲しみに泣き、子どもたちが傷を受けて苦しい思いをしている、その同じ地にいる自衛隊の、なんと平和なこと。あまりのちぐはぐさに、ことばもありません。「何か、違うんじゃないの!」という自衛隊への思いは、そのまま、日本に住む私たちに向けられるのかもしれません。

眼の手術をした少女はいいます。「大人たちは戦争は終わったと言うけれど、私にとって戦争は終わっていない!」

だれが、この子どもたちの未来を補償できるのでしょうか? だれが、愛しい我が子を失った両親の悲しみを埋めることができるのでしょうか?

戦争はもういやだとみんなが思っているのに、どうして、くり返されるのでしょう。日本の戦争体験を忘れてはいけないように、今この時間も、泣いている子どもたちがいることを、我が子の墓の前で力を無くしている父親や母親がいることを忘れてはいけないと、この映画は訴えています。


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