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 ベアテの贈り物

2005年5月

The Gift from Beate

ベアテの贈り物

  • 監督・脚本:藤原智子
  • 音楽 ピアノ演奏:レオ・シロタ
  • 解説:宮崎旬子
  • 出演:ベアテ・シロタ・ゴードン、野村晴一、原田冴子、池野ヒサ、
         中村玲子、前田薫、池田説子、富田玲子、山口みつ子、
         山口美代子、田中園子、赤松良子、宇野淑子、石原一子、
         植本眞砂子、白藤栄子、西村かつみ、正路怜子、井上輝子、
         緒方貞子(出演順)
  • 製作:「ベアテの贈り物」製作委員会、(株)日本映画新社

2004年 日本映画 92分


    日本国憲法 第24条
      (1)婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、
        相互の協力により、維持されなければならい。

        

この草案を書いたのは、オーストリア生まれで、米国在住のベアテ・シロタ・ゴードンさんです。彼女の父親は、世界的に有名なピアニスト、レオ・シロタです。指導をするために日本にきた両親とともに来日したベアテさんは、子どものころを日本で過ごしました。留学先のアメリカで終戦を迎えたベアテさんは、1945年、GHQ(連合国軍総司令部)民政局のスタッフとして日本に戻り、憲法草案にかかわることになりました。

24条には、ベアテさんの、日本の女性たちへの特別な思いが込められています。戦前の日本の女性たちの地位が低く、親が決めた結婚や、男性支配の社会の中で、自由のない生き方を余儀なくされていたことを知っていたベアテさんは、 新しい時代には、日本の女性たちの自由と人権を守ろうという思いから、一生懸命に草案を書き「男女平等」を訴えました。

藤原監督は、「2002年の暮れに企画が持ち上がり、2003年は準備期間で資金集めに苦労し、2004年10月に仕上がった。当初は、憲法問題について楽観的だったが、製作している間に、憲法に関する状況が緊迫してきた」と、今、この映画が公開されることの重要性を語っていらっしゃいました。憲法9条の議論とともに、24条についても、改憲への意見が出されているからです。

映画の前半は、ベアテ・シロタの日本との関わりを描いていきます。

世界的に有名なピアニストで、9歳から、ヨーロッパで活躍していたレオ・シロタ(1885年、ロシアのキエフ生まれ)は、演奏旅行先のハルピンで、山田耕作に出会います。父は、山田耕作の招きで日本での演奏に来て、日本の音楽学校(現在の東京芸大)の教授として日本に住むことになります。最初は9か月という約束だったのですが、第2次世界大戦後まで17年も日本で暮らすことになります。

1923年、ウィーンで生まれたベアテは、5歳のとき、両親とともに来日し、日本で育ちます。母は美しい人で、母のいるところはサロンとなり、家にはいつも人々が集まっていました。しかし、第2次世界大戦がはじまり、ユダヤ人だったシロタ一家にも、暗い影がせまってきます。

1939年、ベアテは、アメリカのミルズカレッジに留学しますが、両親は、日本への義務感と弟子たちへの愛から日本にとどまります。戦後、音信が途絶えた両親を探すために日本に来たかったベアテですが、当時はGHQの人しか入国できませんでした。それでベアテはGHQのスタッフとなり、1945年の暮れ、日本に入り、両親との再会を果たします。

焦土となった日本に来たベアテに、思いもしなかった仕事がやってきす。日本国憲法の草案作りの委員に起用され、唯一人の女性として憲法の草稿にかかわることになりました。戦前の女性の地位の低さを知っていたベアテは、女性の人権の確立を草案に盛り込みます。多くの条文がGHQの委員会で削除されましたが、14条と24条が残りました。

    日本国憲法 第14条
      (1)すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、
        政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

        

映画の後半では、ベアテが理想とした憲法24条が、戦後どのように実現していったかを、先駆的役割を果たした女性たちを追いながら見ていきます。

  • 1946年の、女性がはじめて得た選挙権の行使によって、39名の女性の国会議員が誕生しました。
  • 労働省には、婦人少年局が置かれ、中央官庁初の女性局長として、山川菊栄が局長になりました。
  • 戦前から婦人参政権のために戦った市川房枝が、参議院議員に当選。
  • 1975年から、「国連女性の10年」がはじまり、「女性差別撤廃条約」ができました。
  • 日本も批准して、「男女共同参画社会基準法」なども成立し、男女平等が実現しつつある社会になっています。
  • 国連難民高等弁務官として、10年間も世界のために尽力した緒方貞子など、日本の女性たちが世界で活躍するようになりました。多くの女性たちが、 後輩のためにと、女性の道を拓いていきました。

 

憲法制定の陰にあって、日本の女性のための基本的人権を守ってくれたベアテの存在と、また、戦後の女性たちの歩みは、昭和の歴史を知る資料として貴重なものです。ベアテさんは、すべてを包み込むようなやさしい母の姿です。ベアテの姿は、毎日の身近な生活の中から、憲法を見る視線を教えてくれています。現在では、当然のようになっている女性の権利ですが、多くの先輩の女性たちの熱意があってこその結果であることを、私たちは改めて知る必要があると思います。

映画の全編に流れる音楽は、レオ・シロタ氏のピアノ演奏です。世界的に活躍していたシロタ氏が、日本のピアニストを育てるために、力を注いでくれました。日本を愛してくれたベアテ一家の暖かさを感じます。

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