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 白バラの祈り -ゾフィー・ショル、最期の日々-

2006年2月

Sophie Scholl-Die letzten Tage

白バラの祈り

  • 監督:マルク・ローテムント
  • 脚本:フレート・ブライナースドーファー
  • 出演:ユリア・イェンチ、アレクサンダー・ヘルト、
          ファビアン・ヒンリヒス
  • 配給:キネティック

2005年 ドイツ映画 121分

  • 第55回ベルリン国際映画祭銀熊賞、最優秀監督賞、
           最優秀女優賞受賞
  • 全キリスト教会コンペ部門最優秀賞受賞
  • 第55回ドイツ映画賞 優秀作品賞、最優秀主演女優賞、観客賞受賞
  • 第78回アカデミー賞外国語映画賞ドイツ代表

物語

スターリングラードでの戦いに負け、ナチス・ドイツの誇示していた力が影を見せはじめた1943年。ミュンヘンに、ナチスのやり方に抗議し自由を呼びかけた大学生のグループがありました。そのグループ名は「白バラ」。彼らの中に、ミュンヘン大学に通う女子学生が一人いました。21歳のゾフィー・マグダレナ・ショル(ユリア・イェンチ)です。ゾフィーと兄ハンス(ファビアン・ヒンリヒス)は、学生たちにチラシを配るため、大学構内のあちらこちらにチラシを置きます。しかし、それが見つかり、ゲシュタポにより逮捕されます。

白バラの祈り

ゾフィーは、ベテラン尋問官モーア(アレクサンダー・ヘルト)の厳しい取り調べを受けます。ゾフィーはいったんは自分を無実だと思わせますが、動かぬ証拠が見つかってしまいました。逃れられないことを悟ったゾフィーは、「自分は信念を貫き、それを誇りに思っている」と言いきります。

人民法廷に出たゾフィーは、狂気的な裁判官の前でもひるみません。傍聴席にいるナチス・ドイツ軍の将校たちも、ゾフィーの言葉に頭をたれました。ゾフィーと兄ハンス、ビラの草稿を書いて捕まったもう一人の仲間クリストフの3人にくだされた判決は、死刑でした。通常なら49日かかる裁判は、一日で終了。ナチスは、いったい何を恐れたのでしょう。即日、刑が執行されることになりました。ゾフィーは、執行直前に面会が許された両親とは天国での再会を誓いあいました。その後、看守の好意で一つ場所で出会うことができた3人は肩を抱き合って思いを確認し、刑場へと向かうのでした。1943年2月22日のことでした。

白バラの祈り


 

長い間、5日間の彼らの様子は分かっていませんでしたが、1990年代、ゲシュタポの尋問記録が東ドイツで発見され、 彼らの最期が明らかになりました。

捕らわれた自分は、いったいどうなるのだろう。どういう処分が待ち受けているのだろう。ゾフィーは、不安な思いを心に秘めながら、監獄の高い窓から空を仰ぎ見ます。「太陽は輝いているわ。」いつも太陽に目をあげるゾフィー。雲が太陽をさえぎっても、太陽はいつも雲の上にあります。同じように、権力による支配という、その時代におおいかぶさるような重い圧力があっても、正義はいつもその上で輝いています。ゾフィーは、そう信じるのでした。

ユリア・イェンチのおさえた演技と、処刑の前に許された両親との面会の場面が、印象的です。ゾフィーの強さは、どこから来たのでしょう。このような時代が来たとき、自分の信仰や信念をくつがえす者に対して、真理をぶつけていくことができるだろうか? 正しさを叫ぶことができるだろうか。ゾフィーのように、覚悟することができるだろうか……。彼女の祈る姿を思いながら自問しました。

戦後60年、ゾフィーはスクリーンをとおしてよみがえり、戦争という時代に行われていた市民に対する事実を示します。彼女は、今のわたしたちに何を訴えているのでしょう。

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