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 グッドナイト&グッドラック

2006年5月

Good Night, and Good luck.

グッドナイト&グッドラック

  • 監督:ジョージ・クルーニー
  • 脚本:ジョージ・クルーニー、グラント・ヘスロヴ
  • 出演:デヴィッド・ストラザーン、ジョージ・クルーニー、
          ロバート・ダウニー・Jr.、パトリシア・クラークスン、
          ジェフ・ダニエルズ、フランク・ランジェラ、レイ・ワイズ
  • 撮影:ロバート・エルスウィット
  • 美術:ジム・ビゼル、ジャン・パスカル
  • 配給:東北新社

2005年 アメリカ映画 93分

  • 第62回ヴェネチア国際映画祭主演男優賞、脚本賞、国際批評家連盟賞受賞
  • インディペンデント・スピリット賞
  • ナショナル・ボード・オブ・レヴュー作品賞
  • アメリカ映画協会賞 作品賞トップ10
  • ロサンゼルス映画批評家協会賞 撮影賞
  • ボストン映画批評家協会賞 撮影賞
  • サンフランシスコ映画批評家協会賞 脚本賞
  • サテライト賞 脚本賞 美術賞 特別賞
  • ヨーロッパ映画賞 非ヨーロッパ映画賞
  • アメリカ脚本家組合賞 ポール・セルヴィン賞
  • カンザスシティ映画批評家協会賞 脚本賞
  • フェニックス映画批評家協会賞 監督賞
  • 女性映画批評家協会賞 主演男優賞
  • アメリカ製作者組合賞 スタンリー・クレイマー賞
  • ブロードキャスト映画批評家協会賞 フリーダム賞
  • オンライン映画批評家協会賞 脚本賞
  • オンライン映画&テレヴィジョン協会賞 脚本賞 第一回脚本賞
  • サンタ・バーバラ映画祭 「近代の巨匠」賞

今年の3月に授賞式があった第78回アカデミー賞では、ジョージ・クルーニーが監督賞と助演男優賞にノミネートされ、活躍していました。ジョージ・クルーニーは、テレビドラマ「ER」で小児科医を演じ、日本でもすっかりおなじみの俳優となりました。「ER」の後、俳優としてだけでなく、監督やプロデューサーとして、映画界でも輝いています。

そのジョージ・クルーニーが、監督賞でノミネートされた作品が「グッドナイト&グッドラック」です。この作品は、監督賞の他に、作品賞、監督賞、主演男優賞、脚本賞、撮影賞、美術賞など、6部門でノミネートされました。ジョージ・クルーニーが、ニュースキャスターだった父ニック・クルーニーにささげる作品として、長い間あたためていました。ジョージ・クルーニーは映画「シリアナ」の撮影中に負傷し、まだ完全に体がなおらないうちに、本作の製作をはじめました。出資者たちが、彼の健康を心配してなかなか出資しなかったので、彼は自分の家を抵当に入れて製作資金を用意したという熱の入れようです。ジョージ・クルーニーは、こう語っています。

「『グッドナイト&グッドラック』は、情熱から作った映画でお金のためではないんだ。ぼくはこの映画をどうしても撮りたかった。それができなかったら、自分が70歳になったとき、いったい何を残せると言えるのだろう」。

グッドナイト&グッドラック
プロデューサー役のジョージ・クルーニー

1953年10月、空軍兵士が、父親と姉が共産党員の嫌疑をかけられ、除隊処分にされようとしているというニュースが流れました。政治的な権力を乱用して赤狩りをする議員。証拠がないまま疑いをかけて、一方的に解雇していきます。

CBSの人気ニュース番組「シー・イット・ナウ」のニュースキャスター、エド・マロー(デヴィッド・ストラザーン)は、放送局の上司や空軍司令官の圧力がかかるなか、この事件を番組で取り上げることにしました。1950年代に活躍した伝説のキャスター、エド・マロー。彼が番組の終わりでいつも言ったあいさつのことばが「グッドナイト&グッドラック」でした。

グッドナイト&グッドラック グッドナイト&グッドラック

エド・マローは、きりっとした態度で問題や事件に立ち向かっていました。真に人間を愛している人の社会を見抜く視線には、鋭く厳しい中にも優しさがあります。彼は勇気あるジャーナリストとして、後輩たちやテレビマンたちから尊敬されました。

弾圧を加えるマッカシー上院議員については役者をたてず、当日の映像を使っています。全編モノクロで撮影され、時代感を出しています。マローはじめ、番組クルーたちが吸うたばこの煙が、彼らの追いつめられている状況を伝えています。そんな中で、クルーの紅一点である美しいシャリー・ワーシュバ(パトリシア・クラークスン)と、彼らのいきつけの酒場でうたうダイアン・リーヴスのジャズが、緊迫した場面の緩和剤となっています。実際、彼らにはゆったりとしたジャズに身をゆだね、たばこをくゆらせながら、出来事にのめりこんでしまうのではなく、客観的になれる場を持っていたのかもしれません。

放送局や新聞社、出版局などのマスメディアの大きな組織の中にあって、人権と正義にもとづいた自分の信念を貫くことは、いつの時代にあっても難しいことです。今も、わたしたちはそれを目の当たりにしています。ジャーナリストたちは、いつの時代も、政界、財界の大きな権力と戦っています。しかし、人間の尊厳、自由、正義を守っていくことは、ジャーナリストたちだけの問題ではありません。自分の自由意志を守り信念を貫くことは、一国民であるわたしたちにも突きつけられる選択です。少しずつ、しかし着実に軍備化されていく日本にあって、権力者の不当な圧力に屈せず正義を勝ち取るために挑戦した男たちの物語は、今の時代に生きるわたしたちへの警鐘となることでしょう。

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