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 胡同(フートン)のひまわり

2007年11月

Sunflower

胡同のひまわり

  • 監督:チャン・ヤン
  • 脚本:チャン・ヤン、ツァイ・シャンチュン、フォ・シン
  • 原題:向日葵(Sunflower)
  • 音楽:リン・ハイ
  • 出演:チャン・ファン、スン・ハイイン、ジョアン・チェン、
          ガオ・グー、ワン・ハイディ
  • 配給:東芝エンタテインメント

2005年 中国映画 129分

  • サンセバスチャン映画祭最優秀監督賞、最優秀撮影賞受賞

北京の下町には「胡同(フートン)」と呼ばれる独特の路地や横町があります。日本でいえば、長屋が並んでいるようなところかなと思います。そこには、四合院(しごういん)と呼ばれる伝統的な家の造りがあります。壁に囲まれた中に数件の家があり、門を入ると小さな中庭があります。その中庭を囲んで家が並んでいます。二間ほどの小さな家です。時にはうるさいご近所ですが、災害などがあると家族のように助け合って暮らします。「胡同のひまわり」の中で、地震が起きて家が倒れてしまう場面があります。胡同の人々は同じテントの中でくらし、食事も共同で一緒に助け合って暮らしました。

そんな人情あつい胡同の中の、ある一家の物語です。監督は「こころの湯」で、ほのぼのとした銭湯を経営する親子を描いたチャン・ヤン監督です。今回も、親子、夫婦の葛藤を描きながら、時代の変化にともなう家族のあり方を問いかけてきます。

物語

1967年、胡同の中の一軒に、元気のよい男の子が生まれた。父親のガンニャン(スン・ハイイン)は、ひまわりのように育ってほしいと、その子を「向陽(シャンヤン)」と名づけた。画を描いている父は、小さな家の前にひまわりの種をまいた。

数年後。シャンヤン(チャン・ファン)は9歳になっていた。シャンヤンは友達と胡同の屋根に上り、路地を行く人をめがけては、手作りのパチンコを飛ばしていたずらをしていた。ところが、パチンコ玉が、荷物を抱えてやってきた見知らぬ男性の額に命中した。男は、シャンヤンたちに気づくと、手を振り上げて追いかけてきた。男は、農村での6年の強制労働を終えて帰ってきたシャンヤンの父・ガンニャンだった。

「おとうさんと言ってみなさい」と母(ジョアン・チェン)に言われても、簡単に言えるものではない。シャンヤンは、父になじめないでいた。父は画家を目指していたが、強制労働で指を痛めつけられ、筆が握れなくなっていた。シャンヤンに絵の才能があると見抜くと、ガンニャンは自分の夢をシャンヤンに託そうとしはじめる。シャンヤンは父親の圧力から逃れようとするが、そうすればるすほど父の態度は厳しくなる。しかし、父を好きになれないシャンヤンは、絵などは描きたくなく、友達と遊びに行きたいのだ。毎日毎日絵を描かされるシャンヤンは、とうとう自分の手を傷つけようとする。手がだめになれば、絵は描けないからだ。

胡同のひまわり

大学生になったシャンヤン(ガオ・グー)。絵を専攻していたが、まだ本気になれないでいた。スケート場で写生をしていたシャンヤンは、スケートの上手な女の子を好きになる。そして、その子と他の町に家出しようと企て列車に乗るが、またもや父に捕まってしまう。どうしても父親から逃れることができない。

母は母で、頑固な夫にあいそをつかしていた。近所づきあいが大変で、狭い家が並ぶ胡同から、近代的なアパートに移りたいと思っていた。何回もアパートの抽選会に行くよう夫に迫るが、ガンニャンはがんとして聞かない。二人の言い争いが激しくなっていた。

やがてシャンヤンは大人(ワン・ハイディ)になり、画家として個展を開くまでになっていた。シャンヤンは結婚し、妻が妊娠した。しかしシャンヤンは、二人に今は子どもはいらないと拒否した。父に反抗し続けてきたシャンヤンは、まだ、父の思いに心を開こうとはしなかった。

 

「活きる」(コン・リー主演)という映画を思い出しながら見ていました。シャンヤンが大きくなっていく間に、文化大革命があり、中国の社会も大きく変わってきました。今、さらに、北京の町は北京オリンピックに向けて行われている近代化のうねりを受けて、変わろうとしています。胡同も解体されています。古きよき時代の風景や生活が消えていこうとしています。中国の歴史を見る上でも興味深い作品です。なぜ、父はそこまで息子に厳しくあたったのか。時代の変化の影響の中で生きていく家族をとおして、家族とは何なのかを問いかけてきます。

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