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 ヒロシマナガサキ

2007年7月

Vitus

ヒロシマナガサキ

  • 監督:スティーブン・オカザキ
  • 配給:シグロ・ザジフィルムズ

2006年 アメリカ映画 1時間26分


「8月6日が何の日か、知っていますか?」渋谷に集まった若い人々へのインタビューから映画は始まる。「え? 何?」「知らないわ」世界で唯一の原爆体験国も、このような状態になってしまった。「この現実を、この苦しみを、伝えなくてはいけない」。出演している人々は、できるのならば隠しておきたい身の上を、勇気を持って表明し、その傷を見せることを決意した。

広島と長崎で被爆した証言者は14人。当時9歳から16歳の少年少女たちや、20歳の大学生、そして、広島の陸軍病院軍医で、今も被爆について研究している肥田先生、飢餓を逃れるために8歳のとき家族と朝鮮半島から日本にやって来て、広島で被爆した子どももいる。

彼らの間に、原爆を投下したアメリカ人たちの言葉が入っていく。出演者は4人。エノラ・ゲイの爆弾倉でリトルボーイをテストモードから作動モードに切り替えた兵器検査技師。長崎に落とされたファットマンを起動させるための規模装置を開発した科学者。「原爆が世界の未来にどのような意味を持つかといったことを当時は考えもしなかった」という科学者。「原爆投下は、戦争を終わらせるための使命だと信じていた」と語るエノラ・ゲイの航空士。

米国が撮影した当時の写真、映像と組み合わせながら、日本と米国側の証人たちの言葉が時間を追って語られていく。

人間に対して行ってはいけなかった原爆使用、その後の後遺症の痛み、死への不安と差別への苦しみ、幾重にも迫る苦痛を彼らは耐え続けなくてはならない。

 

スティーブン・オカザキ監督は、500人以上の被爆者と会い、その中から100人に取材し、さらに、映画のために14人の証言を選び出した。日系3世の監督が、はじめて広島を訪れたのは1981年、それから25年の歳月をかけて完成させた渾身のドキュメンタリー映画である。

イラクでは、米国が落とした劣化ウラン弾によって、多くの子どもたちが後遺症に苦しんでいる。チェルノブイリでも、放射能の苦しみは、弱い立場の子どもたちに負わされた。世界は、「ヒロシマナガサキ」の現実を知らなくてはいけない。


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