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 この道は母へとつづく

2007年11月

ITALIANETZ

この道は母へとつづく

  • 監督:アンドレイ・クラフチューク
  • 脚本:アンドレイ・ロマーノフ
  • 音楽:アレクサンドル・クナイフェル
  • 出演:コーリャ・スピリドノフ、マリヤ・クズネツォーク、
          ユーリィ・イツコーフ、ダーリヤ・レスニコーワ、
          ニコライ・レウトフ
  • 配給:スミックエース

2006年 ロシア映画 105分

  • 2005年ベルリン国際映画祭少年映画部門グランプリ
  • 2006年アカデミー賞外国語映画賞部門ロシア代表作品
  • 2006年トロント国際映画祭正式出品
  • 他、世界各地でたくさんの賞を受賞

「本当のママに会いたい!」裕福な夫婦の養子となって幸せに暮らせる道が決まったとき、少年は「本物がいい」と、たった一人で母親を探すために列車に乗ります。母親を求める気持ちを行動に移す少年の姿は、人間の強さを見せてくれます。一途に求める心は、周囲の人々にも伝わるもの。小さな子どもから、人間本来が持っているたくましさを教わりました。

物語

冷たい雪の原野が広がるロシアとフィンランドの国境近くにある孤児院を目指して走る、一台の乗用車があった。乗っているのは、養子縁組みの仲立ちをしているマダム(マリヤ・クズネツォーク)と運転手(ニコライ・レウトフ)、そしてイタリアから来た夫婦。貧しい暮らしをしている孤児院の子どもたちは、自分をよく見せようとおめかしを始める。しかし院長(ユーリィ・イツコーフ)から呼ばれたのは、6歳になるワーニャ(コーリャ・スピリドノフ)だった。服装を整えてマダムとイタリア人夫婦の前に出るが、突然のことにワーニャはとまどいを隠せないでいた。

イタリア人夫婦はワーニャを気に入ったようだ。養子が決まると、マダムにも孤児院にも、多額のお金が支払われた。マダムは次の養子斡旋のために、幼い子どもたちの写真撮影に余念がない。院長は、縁組みが決まって入ったお金でさっそく酒盛りを始めた。

幸せな将来を手に入れたワーニャに、他の孤児たちは嫉妬し、ワーニャを「イタリア人」と呼んでからかいはじめた。

そんなある日、一人の女性が孤児院を訪ねてきた。彼女は院長から激しく怒鳴られ、孤児院から追い出されてしまった。女性は、ワーニャより前に養子に出されたムーヒンの実のママ(ダーリヤ・レスニコーワ)だった。帰りのバス停で泣き続けていたムーヒンのママは、たまたま近くを通りかかったワーニャを呼び止め、孤児院でのムーヒンの生活をいろいろと尋ねた。「自分には、あの子しかいないと気づき、迎えに来たのだ」という言葉を聞きながら、ワーニャは自分の母親を思うようになる。

ムーヒンと同じように、自分が養子に行った後、ママが探しにくるかもしれない。もし尋ねてきたら、院長は、自分の新しい居場所を母親に教えてくれるだろうか。ムーヒンも、養子に行かなかったら、本当のママに会えたかもしれない……。「本物がいい!」悩みはじめたワーニャに、年上の少年たちは「いろいろと考えずにイタリアへ行ったほうが幸せだ」と諭す。

ムーヒンのママが自殺したという知らせが孤児院に流れる。なんとかママを見つけなくてはと、ワーニャは焦る。自分の出生記録を見るために、字が読めないワーニャは、先輩の少女イルカから字を教えてもらうことにする。字が読めるようになったワーニャは資料室に忍び込み自分の出生記録を見るが、そこには「両親なし」と書いてあるだけだった。落胆するワーニャだったが、前にいた孤児院に行ったら自分を預けた人にことがわかるかもしれないと考えるようになる。

ある朝早く、ワーニャはイルカから起こされる。これからママを探しに行こうというのだ。孤児院を抜け出した二人は、駅へと向かう。しかし、ワーニャたちの脱走を知ったマダムは、二人を追って車を走らせる。

 

ロシアには、路上で新聞を売ったり、車を洗ったり、食べるために働いている子どもが少なくないそうです。そんな子どもたちの問題を映画にしたいと思っていた監督は、本当の母親を探すために、独学で文字を学び、孤児院を逃げ出した子どもがいるという新聞記事の話を聞き、映画製作の基礎としたそうです。ワーニャを演じたコーリャ・スピリドノフの自然体の演技が光ります。

この映画の主人公はもちろんワーニャですが、ワーニャの周囲で映る子どもたちや、ワーニャとかかわる年上の少年少女たちの存在も、私たちにさまざまなことを訴えてきます。自分を守ってくれる大人の愛を受けることができない子どもたち、彼らが小さな胸を痛めていることを忘れないようにしたいものです。

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