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 きつねと私の12か月

2008年12月

Le Renard et L'Enfant

きつねと私の12か月

  • 監督・原作・脚本・脚色:リュック・ジャケ
  • 共同脚本・脚色:エリック・ロニャール
  • 音楽:アリス・ルイス、エフゲニー・ガルペリン、
        デヴィッド・レイエス
  • 出演:ベルティーユ・ノエル=ブリュノー、イザベル・カレ
  • ナレーション:イザベル・カレ
  • 配給:松竹

2007年 フランス映画 96分

 

アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受けた「皇帝ペンギン」のリュック・ジャケ監督が、今度は大自然の中での、きつねに魅せられた少女の物語を製作しました。モンブランの山々の中で育った監督の体験がベースになっている作品で、きつねと少女のかかわりや、壮大な野原や森や山の四季の移り変わり、アナグマ、はりねずみ、熊、狼などの森の生きものが、フィクションなのかノンフィクションなのか分からないほど自然に、見る者を大自然の中へと招いていきます。騒々しい社会の中での生活に緊張している身体に、深呼吸を与えてくれる作品です。

物語

学校からの帰り道、秋のやわらかい木漏れ日に包まれながら森を歩いていた10歳のリラ(ベルティーユ・ノエル=ブリュノー)は、枯れ葉を踏みしめる音を耳にした。そのかすかな音にひかれ視線を向けてみると、そこにいるのはきつねだった。大きな瞳、輝きを放つ茶色の毛、リラは、一瞬にしてそのきつねが大好きになってしまった。「きつねちゃん、だいじょうぶだからね。しずかにして……」そうっとそうっとリラはきつねに近づいた。しかしきつねがリラを見た瞬間、体をひるがえし森の奥へと走り去ってしまった。

きつねと私の12か月
(C)Bonne Pioche Productions-France 3 Cinema-2007

 

その日から、リラのきつねを探す冒険がはじまった。しかし、きつねに再び出会うことなく雪の季節を迎えた。真っ白な世界、リラは降り積もった新雪の上にきつねの足跡を見つけた。その足跡をたどろうとしたとき、狼に目を奪われたリラは崖から落ちてしまった。

足を骨折したリラは、部屋から出られず、両親からもらったきつねの本を何度も読んで森を想像して過ごした。「はやくきつねに会いたい。」リラは春を待ちわびた。

きつねと私の12か月 きつねと私の12か月
 

春になり、きつねと再会したリラは、とうとうきつねの巣穴を見つけた。その穴には、子どものきつねがいた。リラは持っていたパンをちぎって道しるべをつくり、きつねを穴から連れ出すことに成功した。「怖くないよ、おいで」話しかけるリラを見て食べるのをやめたきつねは、また走り去ってしまった。

夏休み、時間はたっぷりある。リラは持久戦を覚悟した。ある日、きつねを待ちながら草の上でうたた寝をしてしまったリラが目を覚ますと、そこにはリラを見つめるきつねがいた。リラはそのきつねに「テトゥ(おちびちゃん)」という名前をつけた。歩き出したテトゥの後をついて行ったリラは、今まで訪れたことのない場所へとやってきた。周囲はすでに暗くなっていた。

翌日目覚めると、すぐそばにテトゥが寝ていた。リラはそっと、その茶色の頭をなでた。リラは友だちになれたと感じた。

きつねと私の12か月

 

再び秋になった。リラはテトゥとままごと遊びをすることにした。リラは友だちの証しとして、テトゥの首にスカーフを巻き付けようとするが……。

 

光の温かさとまぶしさ、木々の間を通る風の強さと香り、苔や雪の感触、少女は五感を通して得る感触をますます敏感にしていき、自然や動物たちからいろいろなことを体験的に学んでいきます。登場人物は、ほぼリラだけ。会話はいっさいなく、大人になったリラ(イザベル・カレ)が少女のころを思い出してテトゥとの出会いを語っていきます。

リサの好奇心は、コンクリートやアスファルトに囲まれた中で生活している人々を、かつて自然の中で暮らしていたときに持っていた五感を研ぎ澄ます喜びへと誘います。

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