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 カフーを待ちわびて

2009年3月

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彼女の名はサビーヌ

  • 監督:中井庸友
  • 脚本:大島里美
  • 原作:原田マハ『カフーを待ちわびて』宝島社刊
      (第1回「日本ラブストーリー大賞」大賞受賞作品)
  • 音楽:池 瀬広
  • 出演:玉山鉄二、マイコ、尚玄、瀬名波孝子
  • 配給:エイベックス・エンタテインメント

2009年 日本映画 121分

 

すべてを包み込んでくれるようなゆったりとした沖縄の小さな島を舞台に、そこでひっそりと世捨て人のように暮らしている青年と、彼の前に突然現れた幻のような女性とのラブストーリーです。多くを語らずとも、互いの思いが重なっていく、それはまどろっこしいようなかかわりですが、変化の速い現代にあって、そんなコミュニケーションがあってもいいかなと、救われる思いがする映画です。

物語

沖縄の小さな島で、崩れそうな雑貨屋を営む明青(あきお・玉山鉄二)は、幼いとき左手にやけどを負い、それを隠すようにして暮らしてきた。「がまんするときは、心の中で1、2、3、と数えなさい」と母親から教わり、何かあると「1、2、3、」と数えてきた。しかし、がまんして「1、2、3、」と数えている明青を残して、母親は姿を消してしまった。それ以来、明青はがまんすることで欲望や気持ちに封印をしてしまい、生きるだけの最低の暮らしをしてきた。日が高くなるともっこり起きて店を開け、学校帰りの子どもたちの賑やかな声が去った後、客がいなくなると、犬のカフーを連れて散歩に出て海を見て時間を過ごす、そんな毎日だった。

カフーを待ちわびて

 

島を出た同級生(尚玄)が、島のリゾート開発目的で島民から土地を提供してもらうために本島からやってきては明青の店に立ち寄り、ボーッと暮らしている明青に声をかけた。「人生、ちょっと変化があってもいいんじゃないか?」

同じような毎日が過ぎていったある日、一通の手紙が届いた。便せんには「絵馬のことばが本当なら、わたしをお嫁さんにしてください」と書いてあった。以前、内地の神社を訪れたとき、絵馬に「嫁に来ないか、しあわせにします」と遊び半分で書いたことを思い出した。「まさか……」。きっと悪戯だろう。明青は、食事の世話をしてくれている近所のおばあ(瀬名波孝子)に打ち明けた。かつて、おばあは、「カフーは来たか?」と言っていたことがあった。

ところが、それは現実のことなった。女性は「幸」(マイコ)という名だった。美しく透明で都会的なセンスに満ちていたが、飾ったところがなくすぐ島の風景に溶け込んでいた。さらに、「今日からお世話になります」と、明青の家に住みはじめた。

カフーを待ちわびて

 

どこから来たのか、なぜ来たのか、何をしに来たのか、いつまでいるのか……。明青には聞きたいことがいっぱいあったが、尋ねることはできなかった。明青の店は、一目幸を見たいと島の男たちでいっぱいなった。

おばあに、料理を教わっている幸を見ながら、彼女が大切な人になっていることを感じはじめていた。しかし明青は、幸と自分の心をどう扱ったらいいか戸惑っていた。「しあわせ」は自分にふさわしくないと思っていたからだ。

カフーを待ちわびて

 

このまま時が止まったら……、そう思うようになった明青だったが、幸には明かしていないことがあった。

 

「カフー」とは、沖縄の古語で「果報、良い知らせ、しあわせ」を意味することばです。明青が飼っている犬の名前でもあり、ひそかに待っている将来の姿です。しあわせは、こんなゆったりとした時間の中で気づいていくことなのかもしれません。

妖精のような不思議な雰囲気を持つマイコさんが、魅力的です。


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