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 雪の下の炎

2009年3月

Fire Under the Snow

雪の下の炎

  • 監督:楽真琴
  • 出演:パルデン・ギャツォl、ダライ・ラマ14世
  • 配給:アップリンク

2008年 アメリカ・日本映画 75分

 

チベットの自由を求めて、また世界の平和を求めて戦い続けている一人のチベット僧がいます。パルデン・ギャツォ、75歳。1949年にチベットに侵攻した中国共産党軍に対してチベット民族が蜂起した1959年、彼は多くの仲間と一緒に中国政府に逮捕されました。その後33年間という長い期間にわたり、繰り返しの逮捕と拷問という過酷な獄中生活を送り、61歳のとき釈放され、今は、インドのダラムサラを拠点にして活動しています。

チベット民族の生活、文化、信仰のよりどころとなっていたダライ・ラマ14世は、暗殺を逃れてインドに亡命し、人々はダライ・ラマの写真を飾ることを禁止され、すばらしいチベットの伝統・習慣をすべて否定された生活を強制されてきました。言論と信仰の自由という基本的な人権を無視され続けてきたのです。

小さいころ、テレビでチベットとチベット僧を見て以来、チベットに魅了されていた楽真琴さんは、大学時代にパ ルデン・ギャツォ僧のことをはじめて聞きました。12年前にニューヨークに住みはじめ、辛い気持ちになったときには彼を思い出していましたが、ある日、彼の自叙伝“An Autography of a Tibetan Monk”(日本語訳「雪の下の炎」)に出会いました。読み終わってから、ひどい拷問を受けながらも優しい微笑みをたたえるパルデン・ギャツォの表紙を見て、どうしてこんなに優しく微笑むことができるのか、彼のことをもっと知りたいという思いから、楽さんはインドのダラムサラに行き、パルデン・ギャツォと出会って撮影を開始しました。

雪の下の炎
監督の楽真琴さん

2005年夏にアメリカで行われた「フリー・チベット・ウォーク」で、世界の若者と一緒に歩くパルディン、冬期トリノオリンピックのときに、北京オリンピック開催決定に抗議して行われたハンガーストライキ……。いのちを賭けた活動とそれを支える不屈の精神は、高齢となった今もパルデンにみなぎっています。

楽監督の撮影したフィルムに加えて、パルデンの幼少期、チベット民族の生活、中国共産党軍の侵攻とチベット僧はじめ多くの人々の逮捕や獄中での生活、ダライ・ラマ法王、昨年の北京オリンピックをひかえてのチベット僧たちの抗議デモなどの映像をとおして、チベットの人々の叫びが強く響いてきます。

チベット独立を願って死んでいった120万人のチベットの人々。「わたしにも憎しみや怒りの感情はある。しかし、傷はいつか癒やされる。わたしが生き抜いたのは、信仰があったおかげ。世界は、チベット問題をなぜ無視するのか。わたしたちにも自由が欲しい。戦い続けるのは、非業の死を遂げた仲間たちのため」と涙をぬぐいながら語るパルデン僧と、彼のことを少しでも多くの人に知ってほしいと願う楽監督の思いが重なり、深い精神的なメッセージが発せられています。


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