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 未来の食卓

2009年8月

 

未来の食卓

  • 監督:ジャン=ポール・ジョー
  • 音楽:ガブリエル・ヤレド
  • 出演:エドゥアール・ショーレ(村長)、
       ペリコ・ルッガス(食のジャーナリスト)、他
  • 配給:アップリンク

2008年 フランス映画 112分

 

映画のテーマは、オーガニックです。オーガニックとは、自然の力をもとにした農薬や化学物質を使わない農法のことです。

映画は2006年、ユネスコ・パリ本部で開催された「ガンと環境汚染」のシンポジウムから始まります。シンポジウムの中で発表者は、「我々の子どもたちは、親の世代に比べ健康的に劣る」「フランスの殺虫剤使用量は欧州最多で、フランスの農業では農薬の90%が殺虫剤で占められている」「大地、水、食料を汚染するのを止めよう。健康と環境を守るためには、農業モデルの改革が必要だ」と訴えました。

映画の舞台は、古くからぶどうの栽培が盛んなフランスのバルジャック村。伝統的な栽培方法をしていた村は、大量生産、大量消費の時代に入ると、より効率的により低いコストを目指した生産方法へと急激に移行し、そのために化学肥料や農薬などの化学物質を使用するようになりました。その結果、化学物質の汚染によって身体異常の子どもたちが生まれるようになりました。大人たちの間でもガンになる人が増えました。村の看護士は言います。「看護士になって23年たつけれど、これほど多くの若者がガンにかかり、子どもが苦しむのを見たことがないわ」。

バルジャック村の給食センターは、2006年の新学期からオーガニックを導入しました。有機栽培で育った地元の食材を使って、4校の学校給食と一人暮らしの高齢者に200食を用意しました。学校では子どもたちが、校庭の隅に畑を作って野菜作りに挑戦しました。

オーガニックを取り入れたきっかけを作ったのは、一人の栄養士でした。彼は役場にかけあい、村長がそれを議会にかけ導入が決定されました。説明会を定期的に行い、村民の理解を求めました。「値段は少し高いけれど、オーガニックを採用する農家が増えれば、価格も安くなるだろう」。村人たちは、自分たちの健康を自分たちで守り始めたのです。パン屋もオーガニックを取り入れました。市場では、オーガニックを取り扱う店にお客が増えました。

「これは良心の問題だ」とある村人は言っています。農薬を使っていた農家の人は、畑からとれたものを自分では食べなかったそうです。一見美しい田園風景が広がるバルジャック村。しかし見ただけではわからない土地が農薬によって汚染されていました。今、その大地も水も生きています。

“食”は命に直結しています。オーガニック給食を食べ、畑でオーガニック野菜を栽培するようになって、子どもたちが変わってきたそうです。好き嫌いが減り、食や自然に興味を持つようになりました。授業も積極的になってきました。

2004年に直腸ガンに冒されたされたジャン=ポール監督は、手術により完治しました。しかし、「完全に治るということがあるのだろうか……」と、自分がガンになった原因を追及しました。その過程で多くの事実を知るにつれ、これを作品にして多くの人にこれを知らせるのが自分の職業的使命だと思うようになりました。さらにドキュメンタリー作家として環境保護のために生涯をささげようと思っているそうです。

小さな村のお話ですが、この映画をとおして、世界中の多くの村や町に自然を大切にした“食”が広がっていきますように。


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