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 南極料理人

2009年9月

 

南極料理人

  • 監督・脚本:沖田修一
  • 原作:西村淳『面白南極料理人』(新潮社文庫、春風社刊)、
       『面白南極料理人 笑う食卓』(新潮社文庫刊)
  • 音楽:阿部義晴
  • 出演:堺雅人、生瀬勝久、きたろう、高良健吾、豊原功補、
       黒田大輔、古館寛治、小浜正寛
  • 配給:東京テアトル

2009年 日本映画 125分

 

NHK大河ドラマ「篤姫」で、一気に知名度が高くなった堺雅人主演の映画です。昨年の映画「クライマーズ・ハイ」でも、今年の7月から放映されているTBSの日曜ドラマ「官僚たちの夏」でも、熱血漢をさわやかに演じています。もともとは舞台で活躍している人ですが、NHK連続テレビ小説「オードリー」で、テレビにも顔を出すようになりました。堺雅人主演のゆえなのか、公開後、土日は満席が続いているほどの人気です。

舞台は1997年の南極。昭和基地からさらに1,000キロ内陸にある南極ドームふじ基地。ここには、8人の南極観測隊員が約一年の任務についています。「南極料理人」は、基地での生活の様子を、料理人を主人公に描いたコメディーです。なにげない会話や行動をとおして、同じメンバーで暮らす生活が、時に切なく、時に楽しく描かれています。

物語

ここは南極ドームふじ基地。富士山より高い標高3,810mに位置し、平均気温はマイナス54℃と、一番低くてマイナス70℃にもなるという極寒の地だ。ペンギンもいないが、ウィルスもいないので、風邪をひく心配はない。

ここに住む隊員は8人。気象庁から派遣された気象学者のタイチョー(きたろう)、極地研究所から派遣された雪氷学者の本さん(生瀬勝久)、雪氷サポートの兄やん(高良健吾)は大学院から派遣された。大気学者の平さん(小浜正寛)は極地研究所から、通信担当の盆(黒田大輔)は通信社から、車両担当の主任(古館寛治)は自動車メーカーから、医療担当のドクター(豊原功補)は北海道の市立病院から派遣された。そして彼らの食をあずかるのが、海上保安庁から派遣された西村(堺雅人)だ。西村は、南極行きが決まっていた同僚のピンチヒッターとして、上司から半ば強制的に南極行きを命じられてやってきたのだった。

朝食を終え、分厚い防寒服を身につけて、それぞれの仕事に出かけた隊員を見送った西村は、屋外にある貯蔵庫で荷物の整理をしている。冷凍、乾燥、缶詰めが中心だ。町で遊ぶこともできず、狭い観測所の居住空間で生活している隊員にとっての楽しみの一つは、食事だ。楽しい食卓になるようにと、西村はいろいろな工夫を凝らして、隊員たちを食卓に迎える。

南極料理人
(C)2009『南極料理人』製作委員会

もう一つの楽しみは、家族への電話だ。しかし南極からの通話料は高価だ。砂時計を置いて家族に電話する。しかし、「お父さんがいなくなってから楽しくてしょうがありません」とか「帰ってこなくていいわよ」とか「恋人ができました」などと、つれない言葉が受話器の向こうから聞こえてくる。隊員は帰る日をひたすら数えて待っているのに、家族は不在の者に冷たい。

ある日、やけに水の量が少なくなっていることに気がついた隊員たちは、水を確保するために雪原に出て雪運びをする。南極では、水は作らなくてはいけない。雪集めの作業は、標高が高く空気の薄いドーム基地ではけっこうな重労働だ。

単調な生活に変化をもたらそうと、隊員たちは祝いを大切にしていた。誕生日会や節分の他に、冬至を祝うミッドウィンター祭がある。この日は、みな正装して、フレンチのフルコースを食べることになっていた。

ドクターは、こっそり宿舎を抜け出すと、裸のまま外に出て、自転車で雪原を走り始めた。彼は帰国したら、トライアスロンに挑戦する夢を持っている。空気の薄い地で訓練したら、きっと有利だろうと期待しているのだ。

南極料理人
(C)2009『南極料理人』製作委員会

月日は過ぎ、隊員たちのひげは伸びて髪もぼさぼさになっていくころ、隊員たちに精神的に変化が出てきた。予定より早くインスタントラーメンが底をついた。「ラーメンがなくなりました」という西村の報告に、タイチョウは困った顔をした。「西村君、ラーメンがないと眠れないんだ」。実は、夜中にこっそりインスタントラーメンを食べていたのはタイチョウ自身だった。盆もおかしい。台所からもれている明かりに気づき、西村がドアを開けてみると、冷蔵庫の前で、バターの固まりを食べていた。ズル休みをしてシャワーを浴びている主任を見つけた平さんは、裸で逃げる主任を、宿舎中追い回し、とうとう全員を巻き込む騒動になってしまった。

 

基地での狭い空間の中で生活している彼らを見ながら、隊員たちは大変な生活をしていたのだなと思うと同時に、なぜかホッとしました。希薄になっている現代社会での人間の関わりが、色濃く描かれているからです。なんとか仲良く、楽しく、一年間の使命を全うしようという互いの努力が心地よく感じられ、自分がくよくよと思っていたことが小さく感じられました。彼らの姿に笑いを誘われながら、人間ってなかなかいいじゃないか……と、思いました。


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