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 カンパニー・メン

2011年 9月

THE COMPANY MEN

カンパニー・メン

  • 監督・脚本:ジョン・ウェルズ
  • 音楽:アーロン・ジグマン
  • 出演:ベン・アフレック、トミー・リー・ジョーンズ、
    クリス・クーパー、ケヴィン・コスナー、
    ローズマリー・デヴィット、マリア・ベロ
  • 配給:日活

2010年 アメリカ映画 2時間8分


2008年の9月、アメリカで起きたリーマンショック。世界中が、その大波を受け、多くの会社が倒産し、失業者が増えました。未だに尾を引いている世界経済です。現地アメリカでも、大量の解雇者が出て、人々の生活は苦しい状況に追い込まれました。現地の大手企業のサラリーマンたちは、実際にはどうだったのでしょう。そして、家族はどのように生きていったのでしょうか。映画「カンパニー・メン」は、ある朝、突然解雇を告げられた3人の企業人とその家族の姿を描きます。


物語

総合商社であるGTXの、ボストンにある本社に勤めるボビー(ベン・アフレック)は37歳。販売部長で年収12万ドル。郊外の一軒家に住み、ガレージにはポルシェがあり、休日はゴルフへと、妻マギーと息子ケヴィンに囲まれ、エリートの道を歩んでいた。

仕事も家庭生活も絶好調、「さ、今日もがんばるぞ!」スーツをバチッと決めて出社したボビー。朝一から行われるミィーティングに出席するため、会議室のドアをあけた。「みんな、オハヨ!!」しかし……。部下の様子は何か冷ややかだった。何があったのか。「余剰人員をカットしなければならい」「6万人のうち、3,000人の解雇!」その中に、ボビーの名もあった。

「なぜ!」人事部責任者のサリー(マリア・ベロ)にくいつくが、12週間の解雇手当が出るうちに、再就職先を見つけるようにと言われた。反論する時間も与えられず、自席に戻ると、そこには荷物を整理する段ボール箱が置かれていた。「こんなに働いたのに……。」

カンパニー・メン
(C) 2010-JOHN WELLS PRODUCTIONS


一瞬にして、暗闇の中に突き落とされたボビー。文句を言っても始まらない。気持ちを切り替えたボビーは、「これだけの実績があれば、すぐに就職先が見つかるにちがいない」と、企業探しを始める。しかし、自分で探すことに限界が見えてきた。しかたなく就職支援センターに通うが、やはり見つからない。同じように就職支援センターに通う同僚たちも、なかなか苦しい状況だ。はやく見つけなければ、生活も苦しくなる。

再就職セミナーに参加するように言われ、しぶしぶ参加した。そこでは、強気になるため、大声で掛け声を出すように言われた。「I will win! I will win! I will win!」「情けない。大の大人がこんなことをできるか!」ボビーは、エリートのプライドを捨てられないでいた。偉ぶっているボビーは、マギーの家族からも敬遠されていた。

そんな夫の姿を見て、マギーはパート先を探し、売れるものは売っていこうとする。

ある日ゴルフに行ったボビーは、入場を断られる。メンバーではなくなっていたのだ。自分の知らないうちに、マギーが会員権を売ったのだった。事の重大さがわからず、落ち込むボビーにマギーは泣きながら訴える。「あなたには両親も子どもも、わたしもいる」と。

カンパニー・メン
(C) 2010-JOHN WELLS PRODUCTIONS


GTX社では、建設中の新社屋を保つために第2次の解雇が行われていた。今度は5,000人の削減である。重役のフィル(クリス・クーパー)は、溶接工からこの地位になった30年勤務のベテラン社員だ。彼は、なぜ自分が解雇されるのかと、上司で造船部門のトップであるジーン(トミー・リー・ジョーンズ)に詰め寄った。しかし、ジーンはどうすることもできなかった。彼自身も、解雇を通告されていたからだ。

ジーンは浪費家の妻に嫌気がさし、サリーと不倫関係にあった。そういう関係にあっても、サリーは解雇を通達しなければならなかった。最高責任者のジェームズと二人で、小さな会社からここまでにしたジーンだった。しかし、大きな組織となってからは、ジーンと運営の仕方が違うジェームズは、彼をうとましく思っていた。

カンパニー・メン
(C) 2010-JOHN WELLS PRODUCTIONS


ボビーはポルシェも家も手放すことにした。苦しい状況を察して、クリスマス・プレゼントのゲームを返品した息子の肩を抱きながら、ボビーは決心する。マギーの兄のジャック(ケヴィン・コスナー)のもとに行き、働かせてくれと頭を下げた。ジャックはボビーをよく思っていなかったが、妹一家の状況を知り、働きに来ないかと声をかけてくれていたのだ。

果たして、ボギーに大工仕事が勤まるのか。そして、年齢がいき過ぎているフィルは、大学へ通う子どものために、職に就くことができるのか。妻と別れてサリーと一緒に住み始めたジーンは、造船への思いを再び形にすることができるのか。

 

いったん解雇と決まれば、即刻、荷物をまとめてその日のうちに出て行く。一切の反論もできない、この冷酷さは、とても厳しいものです。人情もなし、仕事の引き継ぎもありません。ボビーが下に見ている、ジャックの仕事は、大工という肉体労働です。エリートを鼻にかけているボビーの危うさを感じているジャックは、助けの手を差し伸べます。ボビーはジャックの働き方に触れながら、一軒の家を建てるということを任された者の責任の取り方と、家族愛のありがたさに触れます。大きな試練をくぐり抜けたボビーは、一回り大きな人間になりました。

人事部責任者のサリーも、解雇を通達するときは、人情に負けないように壁を立てます。仕事だからとはいえ、つらい立場です。自分も企業の一員として感情を入れずにいなければ、やっていけないかもしれません。

愛情をそのまま表現できるマギーと、ぐっと抑えなければならないサリー。日本と米国の企業の違い、ジェームズとジーンの組織運営の仕方の違い、組織の中で働くボビーと自分で働く物作りのジャックなど、対比して見るのも、おもしろいかもしれません。

監督は、20年という長寿のテレビドラマでエミー賞を受賞した「ER 緊急治療室」を製作したジョン・ウェルズ。切り替えの上手なカメラワークで、ユーモアを交えながら緊迫感を出しています。


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