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沖縄 うりずんの雨

2015年 6月

The Afterburn

 沖縄 うりずんの雨

  • 監督・語り:ジャン・ユンカーマン
  • 企画・製作:山上徹二郎
  • 音楽:小室等
  • 出演:安里英子、池田恵理子、石川真生、稲福マサ、大田昌秀、近藤一、高嶺朝一、玉城洋子、知花カマド、知花昌一、Douglas Lummis、Leonard Lazarick、Donald Dencker、David Crew、Bruce Lieber、Cynthia Enloe、Rodrico Harp、Morton Halperin、他
  • 主題歌: 秦基博
  • 配給:シグロ

2015年 日本映画 2時間28分

  • シグロ30周年記念 長編ドキュメンタリー


2015年は、戦後70年を迎えます。戦争体験者が少なくなり、高齢化を迎えている中で、戦争の悲惨さについて生の声を伝える方法が少なくなってきました。その中で、証言を残すことは大切な行為です。さらに、映像がその生きた証言を後押しできたら、さらに強力になるでしょう。

「沖縄 うりずんの雨」は、沖縄戦から今までの沖縄を、「沖縄戦」「占領」「陵辱」「明日へ」の4部構成で映し出しています。

一番長い時間を要している「沖縄戦」では、沖縄の人、日本兵、米兵の証言と、米軍が詳細に映していた映像により、沖縄戦の激戦を明らかにしていきます。本土防衛のために、沖縄の地が犠牲となりました。住民の4人に1人がなくなったという沖縄戦とは、いったいどんな戦いだったのでしょうか。

「命を投げ出すことは、何の躊躇もなかった」また、「人を殺しているという意識がなかった」と当時の精神状態を語る元沖縄県知事の大田昌秀氏は少年兵としてかり出されました。毎年沖縄を訪れては、犠牲となった仲間の兵士や沖縄の人々のために祈っている元日本兵・近藤氏の悔悛の言葉は、見ている者の心に刺さります。

 沖縄 うりずんの雨
(C) 2015 SIGLO

米軍は、沖縄戦に最新兵器を用いました。米軍にとっても一番厳しい戦いとなり、多くの犠牲者を出しました。今も米兵の脳裏から離れることはないと苦しんでいます。米軍は上陸とともに、基地建設を進めていました。その土地に住んでいた人々は移住させられ、10箇所に空軍基地が作られました。米軍基地の中でも最大の基地、沖縄。海兵隊基地には、沖縄戦で戦死した個人の名前がつけられています。

 沖縄 うりずんの雨
(C) 2015 SIGLO

「占領」では、米軍の占領地として大きく発展した沖縄を見ていきます。米軍の中で沖縄がどのような位置づけになっていたのか、よくわかります。また沖縄の人からの証言では、占領地となった沖縄の人々が、日本をどう見ていたかが見えてきます。1972年5月沖縄は日本に返還されましたが、当初の「核抜き本土並み」の復帰ではありませんでした。祖国復帰の夢が反戦復帰へと変わりました。

高校生のころから復帰運動、反対運動をしてきた写真家の石川真生さんは、沖縄を撮っています。沖縄=基地だから米軍を撮ろう。米軍はどこにいるのかということで、米軍対象のバーで働いてきました。

「陵辱」では、米軍に追いつめられたガマに逃れた住民が、そこで集団自決を測って多くの命が失われたことから始まります。「米軍にやられるよりは、母親にやられた方がいい」と願い、米軍が読谷村の海岸から上陸し、地上戦が始まった4月1日の翌日、近くのチビリガマで83人が集団自決をしました。また、日本軍がいるところ、かならず慰安所があったこと、戦後は、米兵による性暴力の被害が後を絶たないことが語られます。

米兵が娼婦だけでなく、一般住民、それも12歳の少女に向けられていたことに対し、沖縄の人々は怒りの声をあげます。また、米軍基地内でも起きていた性暴力の実態が明らかになり、女性兵士たちの言葉が語られます。

「明日へ」沖縄に希望はあるのでしょうか? 「沖縄は、薩摩藩が来たときからを見ないとわからない」「何があっても沖縄がぶっ飛ぶだけで、大和人は安全。何でも沖縄に押しつける。これを差別という」と、厳しい表情で語る石川さんの言葉が、大和人への挑戦状として心に残ります。このことばに、どのように応えればいいののでしょうか?

 沖縄 うりずんの雨
(C) 2015 SIGLO

貴重な資料として、また、決して忘れてはいけない事実として、多くの方に見ていただき、沖縄を知っていただきたい映画です。



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