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シスター三木の創作童話

あかい梅と白い梅

梅と少女の絵
「おタエの里は 梅の里
 おタエは 気だてのいいむすめ
 親孝行の やさしいむすめ
 とのさま 待って 待ちくたびれて
 とうとう 梅の花に なったげな」

こどもがうたう わらべうた
じいさま ばあさま
語りつぎ
いまは むかし話となりました

タエは ととさんと ふたりきり
ある日 のんべえととさん 酒に酔い
道に大岩ころがしました
そこを通ったとのさまの
車が 岩にぶつかって
とのさま 大けが
さあ たいへん
タエは地にふし詫びました
わたしのととさん ゆるしてと
それから タエは とのさまに
仕えて手あつく介抱し
朝な夕なつきっきり
とのさま だんだんよくなって
ある朝 都へかえられた

親孝行のこのタエに
とのさまのおいかりとけました
そのとき とどいたあかい梅
いつかむかえにいくからと
とのさまの書いた短冊が
ひとひら さがっておりました

毎日待って また 待って
毎日待って また 待って
毎日待って また 待って
とうとう 三年三月過ぎました

タエの庭の白い梅
香りはたかく風に乗り 都の方へいきました
都にいきたや とのさまこいし
風がつたえた タエの声
とのさま聞いたか 聞かないか

そのうち ととさん死にました
そして タエも死にました
ちょうど そのとき都から
迎えの牛車が着きました
タエのいない庭の梅 その年も咲いておりました
家来は そっと近寄って やさしく一枝折りました
タエのかたみの梅の花
ゆられ ゆられて みすの中
はるばる都へいきました

都についた 白い梅
あかい梅のそばで 咲きました

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