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シスター三木の創作童話

星のお役目

「星のお役目」の絵

   前編「星のコンクール」

生まれたばかりの小さな星が選ばれてから、もう数えきれないほどの年月がたちました。星の一生は、何百億年といわれています。
ですから、生まれたばかりの小さな星が、いちばん明るく輝くときを待つためにも何百億年かかったのでした。選ばれた星は、たくさんの星座や星雲、銀河の星たちにおくられてしずかに出発しました。星は、ゆっくり、ゆっくりと太陽と月が教えてくれた目的地へ向かっていました。いろんな国の人がこの星を見ました。日本の空の下では、なかなかねむらない子どもをおぶったお母さんが、この星を見ました。地面いっぱいに降りた霜の上に星の光がとび散って、地面が鏡になったようでした。
「まあ坊や見てごらんなさい、大きな星ね、ふしぎなことが起こりそう!」
と、背中の子どもをゆすりながらいいました。

それから星は中国の上に出ました。長いあごひげと口ひげをはやした学者が、窓から月を見ていました。
「なな、なんとこれは! 月よりも光る星、ふしぎなことが起こるしるしじゃ」
学者は、あわてて本のお倉にかけこみました。
星は、もうすこし東にすすみました。そこでも天文学博士の王さまが、この星を見ました。

「おお、まさしくこの星。東の空に大きな星がまたたくとき、その下に救い主がお生まれになるとのいいつたえがある。・・・・おお、みなのもの、旅、旅の仕度をせい! らくだの用意! それから、宝物のお倉の中から、あの金の箱をもってくるのじゃ! さあ、いそげ、さあ、すぐすぐにじゃ!」

たいへんなさわぎとなりました。王さまのお城中にあかりがともされ、そのあわただしさは、お城の外にまで聞こえました。まもなく、王さまを中心にらくだの行列が出発しました。

ところがこんな行列は、この東の国のこのお城だけではありませんでした。もう二組の行列が、同じころこの星を追って出発していました。星は、あたりの空を、夕方のように明るく照らしながらすすんでいきます。

ちょうどそのころ、ユダヤの国のナザレというガリラヤの街の小さな家からも、若い男の人と女の人が旅に出ようとしていました。若い女の人は、水色の長いマントを頭からすっぽりかぶっていました。連れの男の人は、水色マントの女の人を、ロバの背中にのせてあげました。そして、にっこりとその女の人にほほえみかけていいました。
「それでは、マリア、でかけましょう」
「はい、ヨゼフ」

女の人は、そうこたえてやさしくほほえんでうなずいたようです。水色のマントのかげでよく見えませんでしたけど……。

ふしぎなことに輝く星は、いつもこの二人の上にいました。女の人をのせたロバの足が石につまずかないようにと、くらい道を照らしていました。二人は、星を追っていませんでした。星が、二人について行ったのです。そして二人が、ベトレヘムという町につくと、星もベトレヘムの町の上にとまりました。旅の二人が、ようやく見つけた宿は、小さな馬小屋でした。大ぜいの人出で、とまるところがなかったのです。東の国からの三組の行列は、まだずーっと、ずーっと遠くにいました。輝く星を見失わないようにと、上ばかり見てすすんでいました。星が、また一段とその輝きを増しました。それと同時に、その下の小さな馬小屋にも、光があふれて馬小屋の中はまひるのような明るさになりました。

赤ちゃんのかわいい泣き声が聞こえてきます。ベトレヘムでは、ふしぎなことが起こったのです。この赤ちゃんのごたんじょうを知らせるのが、選ばれた星の大切なお役目だったのでした。


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