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新世紀ルーツへの巡礼

目次

神への旅

12) シスター・テクラ・メルロの死去から10年を経て

創立者とともに シスターイグナチアと
創立者とともに シスターイグナチアと

シスターテクラ・メルロの死去10年の1974年と言えば、修道会にとって、他の多くの修道会同様大きな困難のただ中にありました。
創立者アルベリオーネ神父を失い、バチカン公会議後の刷新の波の中で混乱の時期を生きている時です。

教会が命令した第1、第2期の「特別総会」を終え、シスターイグナチア・バッラは総長の2期目を生きていました。変革のプロセスの中にあって、初代総長であり、修道会の共同創立者、母であったシスターテクラ・メルロの死去10周年を迎えたシスターイグナチア・バッラは会員に向け回状を出しました。

シスターテクラ・メルロのそばに長年過ごしたシスターイグナチア・バッラの回状は、彼女の体験の分かち合いといった方がよいもので、非常に長いものです。その中からいくつかをかいつまんでご紹介します。

シスターテクラ・メルロの死去からもう10年の年月が過ぎました。しかし、昨日のように思い出されます。今もその時のことを完全に記憶しています。

非常な熱心さをもって受けられた聖体拝領の喜び……。シスターテクラ・メルロにそばで祈りを唱えていた私と共に感謝の祈りをささげておられました。そして、ほほえみながら感謝し、私にも朝食をとりに行くようにと言われました。

それから、アルベリオーネ神父のお見舞いの時のこと。いつもより長かった2人の会話。祝福、また少し悪化したらすぐに知らせるように念をおしながら帰っていかれたアルベリオーネ神父のこと、また飛行場に着かれたシスターブリジタを迎えに出かける前に、あいさつに行った時のことも思い出されます。部屋を出ようとして戸口に立っていた私を、シスターテクラ・メルロはもういちど呼びもどされました。そして、ふるえる右腕で私を抱擁し、祝福してくれました。長い間、じっと見つめていたやさしいまなざしは私の魂の奥深くまで浸透するようでした。すべては私のうちに深く刻みつけられました。

アルベリオーネ神父と一緒に彼女のベットのまわりでささげられた祈りも、同様に深い印象を残しているできごとです。- 私だけでなくたくさんの姉妹のうちにも -。

アルベリオーネ神父は、「修道会のため、会員の聖化のために生命と苦しみをささげなさい」と彼女に勧めました。
修道会のため、会員の聖化のための生命の奉献は、この時には更新されただけです。というのは、シスターテクラ・メルロは、すでに1961年5月にこの奉献を果たしていたからです。

彼女の生命の奉献は、死の時にささげつくされ受け入れられました。そしてまた、長年月にわたって修道会の統治にあたった日々に、毎日ささげ続けられていたのです。

彼女の統治はやさしさと強さを同時にそなえたもので、彼女にとっては、それが絶え間ない謙遜と信仰の行為の機会となっていました。この2つの徳は彼女の特徴であり、英雄的な行為にまで彼女を導いていました。

信仰は、かかえていた問題に関して明確で安心できる答えを彼女に与え、平和と勇気を与えていました。

「信仰を持たなければ」、これが彼女の論理であり、どのような状況の中でも導きとなった原則でした。そしてこの信仰を私たちにもあつく勧めながら、私たちが神に信頼するようにと熱望していました。

彼女は主に信頼していました。その信仰は照らされていたばかりではなく、非常に活動的でした。自分が働き、また他の人をも働きに導くもので、それは聖書の中のあの「強い女性」を思い出させるほどでした。勤勉で注意深く、働き者で、たくさんの道具を上手に使いこなしていました。

彼女の偉大な信仰からあの大きな希望の徳が生まれ、変わることのない平和と、それに呼応した愛徳が生まれていました。

彼女の場合、この愛徳は、具体的に霊的、物質的慈善のわざとして現れていました。必要にせまられて助けを求める人、援助しなければと彼女が気づいた人などに、だれかれの区別なく手をさしのべいました。彼女の愛徳は普遍的だったと思います。すべての人を助け、特に彼らに福音の光をもたらすことを熱望していました。

彼女は会員たちを、創立者が指し示めした道に導いていく役割を持っていました。修道女たちへの彼女の愛徳は、まずその魂についての配慮でした。

彼女は、教会のため、教皇のため、そして最後のころは第2バチカン公会議のためにも祈っていましたし、私たちにも祈るようにと勧めていました。彼女は自分が「教会の敬虔な娘」であると心に深く感じ、教会の自由と進歩と聖性を切望していました。そのため、自分が教会と、教皇の教えを広めるという固有の使命をもつ修道会の会員であるということに大きな喜びを感じていました。

最期の日が近づいたある日、「広報機関に関する教令」の最初の1冊を手にした時の彼女の喜びははかりしれないものがありました。

1人のシスターが内容の説明をしている間手に持った教令の本を見つめつつ、深く感動していました。その時はもうすでに話すことはできなくなっていましたが、その態度や涙にうるんだ目が彼女の深い喜びを物語っていました。

シスターテクラ・メルロは自分が20歳の時から生命を賭けてきた社会的コミュニケーションの使徒職が、この教令の中に権威をもって承認されていることをよく分かっていたのです。

教会は彼女の聖性についての調査にとりかかり、第1段階をよい結果で終了しました。彼女の書いたものも、係りの2人の神学顧問にゆだねられ、権威ある彼らの意見もすでに提出されています。今は奇跡による神の介入を待つばかりです。「わたしに仕える人に、私の御父が栄光を賜る」との約束がこの地上でも果たされるよう祈りましょう。

私たちの愛するシスターテクラ・メルロが、師イエス、教会、福音、私たちが使徒職を通して出会い、奉仕していく人々などへの、自己を犠牲にするまでの愛を神に取り次いでくださいますように。

彼女の思い出、模範、教えが、完全さへと向かう私たちの上昇の道で、彼女につき従っていくことのはげましになりますように。彼女はこの道を寛大な絶え間ない努力をもって歩み続けました。

アルベリオーネ神父はこう言っています。
「シスターテクラ・メルロの足跡を歩むこと。それは上昇の道です。完全さへと登る道です。上昇の道、それは修道会の絶え間ない発展です」。

◆10-3 神への旅


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