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ザビエル生誕500年記念行事 (1)

2006/12/19

フランシスコ・ザビエル誕生の500年を記念して、上智大学は2006年、「ザビエル500年記念行事」を開催しました。10月16日には、スペイン・マドリードのスコラ・アンティカ合唱団を招き、ザビエルの故郷とモザラベ聖歌のコンサートを行いました。11月17日には、アントニオ・ガウディが建てたサグラダ・ファミリア教会で、日本人の彫刻家として活躍している外尾悦郎氏の講演会が開かれ、12月2日3日には上智大学第2代学長のヘルマン・ホイヴェルス神父原作の「聖フランシスコ・ザビエルの来朝」が上演され、3日の聖フランシスコ・ザビエルの祝日の夜には記念ミサが、9日10日には、研究家の方々をお招きして「16~18世紀イエズス会現地報告文書にみる『普遍主義』と『地域特性』競合の国際比較」をテーマに学術集会が開かれ、10日の午後は「歴史に見る文化混淆プロセスの再考」のシンポジウム開催……と、豊かで深い内容のさまざまな記念行事が行われました。

これらのイベントの中から、彫刻家・外尾氏の講演会と、10日に行われた学術集会およびシンポジウムの様子を、数回に分けてご紹介いたします。

外尾悦郎氏 講演会
  アントニオ・ガウディに魅せられて—スペイン精神文化の心の形—

外尾氏

「違いがわかる男、外尾悦郎」、数年前のNescafeeのコマーシャルです。スペインの代表的な教会サグラダ・ファミリアは、アントニオ・ガウディが亡き後も、いまだ完成されていず、建築が進められています。外尾氏は、日本人の彫刻家としてその建築に参加していらっしゃいます。今は亡きガウディの思いをどのように理解して建築を完成させようとしていらっしゃるのか、上智大学10号館講堂いっぱいに集まった人々は、興味深くお話を伺いました。

バルセロナの中央に位置しているサグラダ・ファミリア(聖家族に献げられた教会)は、その奇抜なデザインで世界的に有名です。現代風なデザインですが、設計したアントニオ・ガウディは、その一つひとつに思いを込めて建築しました。しかし、ガウディが亡くなった後は、その手引き書となるものはなく、建築に携わる人々が考え「ガウディだったらこうするだろう」という思いで一つひとつの部分を完成させてきました。1978年に、サクラダ・ファミリア聖堂建設に彫刻家として就任してから今年まで、外尾氏はさまざまな部分の彫刻を完成させてきました。

外尾さんは、一旅行者としてバルセロナを訪れたとき、「石が呼んでいる」と感じ、この未完成の教会の建築に関わるようになりました。

尖塔彫刻

5本の塔 果実
5本の塔 果実

5本の塔が建っています。これは植物の芽です。イチジクの葉と実の尖塔は、近くで見ると大きく高さです。一つ1トンの重さがあります。また大窓には、たくさんの果物と葉があります。ガウディは日本に来たことはありませんが、精神的に日本に近いものがあると思います。

大窓の大きさは25m、ここが私たち人間の世界で、ここから上は聖人たちの世界です。さらにその上が神の世界です。東向きの窓には春に実のなるもの…青い果実と葉を、西向きの窓には秋に実のなるもの…熟した実と葉が置かれています。高さ45mのトップの果実はベネチアングラスでできています。

傾いている柱

サグラダ・ファミリアの建物の柱は、地面に垂直に建っていません。傾いたり、枝分かれしたりしています。「建築とは、引力に逆らって建てるものだ」という常識を覆し、逆さ吊りの実験を行って重力に引っ張られるとおりに柱を建てました。全ての柱の距離は7.5m、この3倍の数が22.5mが大窓の高さになっており、その12倍の90mが聖堂の長さになっています。すべて7.5mが基本となっています。数字を利用しながら“全ては自然”ということが大切にされていま。

ロザリオの間

1936年のスペイン内戦で、ロザリオの間が破壊されました。室内の彫刻はひどく破壊され、50年間封印されたままになっていました。外尾氏はこの部屋の修復を任せられました。ここには、聖書と関係ない彫刻があります。「爆弾を持った若者の像」と、これと対になる場所にある「祈る少女の像」です。

爆弾を持った若者が、誘惑にあい爆弾に手をかけています。ガウディにこの像を作らせたせたモデルとなる若者がいました。爆弾は実際に投げられました。あのとき、ヨセフとマリアとイエスがいたら、爆弾は投げられなかったでしょう。ガウディは、そんな思いを、この像に託したのかもしれません。自分のやっていることを謙虚に考えることが必要です。

「祈る少女の像」も破壊されていました。この像を修復するためには、物語を理解しないと修復できません。そこで、物語を考えてみました。病人の薬を買うためのお金を求めている少女。悪魔が誘惑し、お金を盗ませようとします。マリアに祈る心と、誘惑に負ける心、葛藤の中にいる少女の姿を彫りました。

生誕の門

100mのピアノ、100mのオルガン、3000人が座る椅子、これがガウディの描くサグラダ・ファミリアです。中央の糸杉の上にイエス、聖霊を表すハト、神がいます。その下にペリカンがいます。これは神の象徴で、愛を表しています。親は子のために身体を裂いて血を飲ませました。親の元を離れないと分からない親の愛。親の愛は、近くにいては分からないものです。

ハープを弾く天使の像
ハープを弾く天使の像

生誕の門には、天使が15体います。しかし資金がありません。まず一体だけ作ろうということで、一番大きいものを選びました。それがハープを弾く天使です。彫刻が進んでいく内で、弦をどうするかということが出ました。ガウディの弟子たちは弦をつけろと言いました。しかし、私はつけたくありませんでした。彫刻は彫刻家が完成させるものではありません。これを見る人が完成させるものです。

ハープをひく天使を作ったら、資金を出してくれる人が出ました。次にファゴットを吹く天使を作りました。ハープとファゴットで宗教音楽ができます。この時点で、すべてを作るようにと、お金を出してくれる人がいました。竪琴、笛、ギターとシター、こうして6体の楽器を奏でる天使が完成しました。

次は、歌う天使です。天使は、生まれたばかりのイエスを見つめています。天使の手の延長線上にイエスがいます。楽器を弾くとき、自分の手を見ます。この視線の延長線上にイエスがいます。こうして視線の物語をいろいろと組み立てていきました。

生まれたばかりのイエスは、飼い葉桶に寝かされています。飼い葉桶は、土の上に置かれています。イエスの下にあるものは、土の中の虫たちです。

福音記者の塔

今、4人の福音記者の塔を手がけています。下から作っているので、まず、雨樋を作ります。ヨハネの黙示録の中に、7つの封印の話があります。7つの町から出て、送り返される手紙、巻物がまさに開かれようとしています。その7つの巻物から流れる水が、雨樋を伝わって流れるよう設計されています。

天才ガウディとサグラダ・ファミリア

外尾氏

天才のやったことは、真似ができません。ガウディのすばらしさは、後の時代の人がわかるように作っていることです。これが“本”なのです。何度も読むことによって、愛することによって、亡くなった人でも生きていると感じます。ガウディに学んでいきます。ガウディはこれからも生き続けていくと思います。

 

コンピュータのない時代に、ガウディはコンピュータのような計算をしていました。1926年、ガウディは電車に轢かれて死にました。デスマスクを見ると、ガウディはほほえんでいます。神を信じる人は、苦しいときもほほえむことができるのです。サグラダ・ファミリアを常に見守っている聖家族。ヨゼフが3人の中心に置かれています。左にはヨゼフの手にキスをするイエス、右にはそれを見つめるマリア。サグラダ・ファミリアは、父親を中心にした教会です。自分の子でない子を育て上げたヨゼフ。愛するもののために、犠牲をする、それが“しあわせ”です。

 

外尾氏の手がけた作品についての説明を一つひとつ伺っていくと、そこには深い聖書的な意味が含まれていることが分かってきました。信仰の世界で終わるのではなく、私たちの日常の生活を密接につながっていることばかりです。聖堂の部分、部分に、神への思いを込めて考えたガウディ、そのガウディの思いをさぐろうと深めながら彫っている外尾氏、サグラダ・ファミリアに込めた思い……。外尾氏は、サグラダ・ファミリアの画像を映しながらお話くださいました。教会という祈りの空間を抱えながら、サグラダ・ファミリア自体も祈りになっている、なんてすばらしい教会なのでしょう。実際にサグラダ・ファミリアを見てみたいと思いました。サグラダ・ファミリアに込めたガウディの願いが、全世界へと広がりますように。つつましい生活でありながら、互いを受け入れ合っている聖家族の姿が、世界中の家族の原型となることができますように。

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