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すばらしき世界

2021年 2月

 すばらしき世界

  • 原案:佐木隆三『身分帳』(講談社文庫刊)
  • 脚本・監督:西川美和
  • 音楽:林正樹
  • 出演:役所広司、仲野太賀、六角精児、北村有起哉、長澤まさみ、梶芽衣子、橋爪功
  • 配給:ワーナー・ブラザース映画

2020年 日本映画 126分

  • 第56回シカゴ国際映画祭観客賞、最優秀演技賞受賞
  • 第45回トロント国際映画祭正式出品作品

人間の微妙な心の動きをテーマに描いてきた西川美和監督が4年ぶりに発表した作品は、長い間の刑務所暮らしから解放されて社会に出てきた元殺人犯の中年男性を主人公にしたものでした。一度罪を犯すと、社会はなかなか受け入れてくれません。本人が新しく生きようと努力しても、「前科者」というレッテルを貼られて、すべてを見られてしまいます。

しかし、それは罪を犯した人に対しただけではありません。「世間の目」と言われる秤で、何か失敗した、汚点のある人々を厳しく計ります。そんな中に、ごく少数ですが、立ち直ろうとする人を信じ、支える人がいるのも確かです。そのような人と人のかかわりを描いた西川美和監督の繊細な作品です。西川監督は「すばらしき世界」で、どんな心の動きを描いたのでしょう。


物語


一人の中年男性が、雪の旭川刑務所を出所した。「もう、帰ってくるなよ」と見送りの刑務官から声をかけられた三上(役所広司)は、これまでに数回、刑務所に出たり入ったりして、人生のほとんどを刑務所で暮らしていた。今回は、殺人で8年間の刑期を終えての出所だ。「こんどこそ、カタギになる」と強く心に誓い、東京で身元引受人の弁護士の庄司(橋爪功)が用意してくれたアパートに入った。

 すばらしき世界
(C) 佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会


庄司に付き添われて、三上は生活保護の申請のために福祉事務所にやってきた。生活保護を受けることにふがいなさを感じ、なんとか就職しようとする三上だが、ケースワーカーの井口(北村有起哉)から「反社な者」には難しいと言われる。三上は反社=反社会的勢力、つまりヤクザで組に属していたこともあった。井口の態度に怒り、席を立ち上がった三上は、めまいを起こし倒れてしまう。

病院に運ばれた三上は、高血圧の持病を持っていて、安静にするようにと医師から促される。そんな三上の病室に、フリーライターの津乃田(中野大賀)がやってきた。津乃田はテレビ制作会社を退職してフリーになったばかりで、テレビ番組のプロデューサー・吉澤(長澤まさみ)から、前科者の三上が社会復帰していく様子と、幼い頃に分かれてた母親と涙の対面を撮ったドキュメンタリー番組を作ろうと声をかけられたのだ。

 すばらしき世界
(C) 佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会


津乃田と吉澤が、焼き肉店で三上に番組の意図を説明した、その帰り道、三人は、一人のサラリーマンが二人のチンピラに絡まれている姿を見た。チンピラの態度に憤った三上は、津乃田と吉澤が止めるのも聞かず、チンピラをたたきのめしてしまう。最初その様子をカメラに撮っていた津乃田だが・・・。

 

人が困っているのを見ると身体が動いてしまう三上は、優しい心を持っているのだが、まがったことが嫌いで、我慢することができない。持ち前の腕力と大声と大きな態度で相手を怖がらせてしまう。しかし、それは出所した者には、してはいけないことだった。三上という人間を取材していく津乃田をとおして、人としての生き方を問われているように感じました。奥の深い作品です。



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