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シスター三木の創作童話
青い目のテレーズ
「テレーズ、なにしているの、はやくしてちょうだい、おくれますよ」
ママは 鏡の前で ボンネットのリボンを結んでいます。
「さあ、テレーズ、でかけるとするか、みんな、したくはできたかね」
パパの声です。
「おや、おや、テレーズ、そんなにたくさんのお人形をどうするんだい。どれか、一つにきめなさい」
こまったようなパパの声。
「あら、まあ、テレーズ、いまは公園に行くんじゃないのよ、ミサに行くのよ。そんなにたくさんのお人形、もてないでしょう。どれか、一つにしましょうね」
さっきから、パパとママをこまらせているのは、四歳のテレーズちゃん。
金髪の巻き毛が ひたいに くるくるさがっています。
そして、そのかげから、青い 大きな目が 涙にぬれてひかっています。
ここは、フランスの、ある小さな町。
女の子ばかりいる家庭のできごとです。
きょうは、日曜日、イエスさまの日です。いま、ちょうど、ミサにでかけるところなのです。お姉さんたちは、もう、お庭でテレーズたちを待っています。それなのに テレーズちゃんは両手にいっぱいのお人形をかかえて離しません。ママは、テレーズのそばにかがんで言いました。
「テレーズちゃん、お人形は 一つにしましょう、ね」
パパも言いました。
「そうだよ、テレーズ、こんどお散歩に行くとき、みんな、つれていってやろう、ね」
テレーズは、だまっています。
大粒の涙が、ポト、ポト、ほほを流れていきます。
「だって、みんな好きなんですもの。みんな イエスさまのところへ、つれていってあげたいの。イエスさまは、みんなを愛していらっしゃるって、パパもママもいったでしょう。きっと、みんな、イエスさまにあいたいと思っているわ」
それからのテレーズちゃんたちは、どうなったと思いますか。
パパもママも、お姉さんたちも、みんなお人形をもって、教会に行きました。
こうして、大きくなったテレーズちゃんは、あとで、修道院に入って、世界の人を、みんな愛して、みんなのために祈った とてもりっぱな人になりましたよ。
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