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シスター三木の創作童話

夢の星

夢の星をまく天使

 街のネオンサインが、ひとつ、消えました。そして、またひとつ、消えました。
 あたりは、だんだん、静かになっていきます。暗くなった空に、星が、よく見えるようになりました。
 ここは、天国の“夢の星事務所”です。
 さあ、夢の星をまく天使たちの、おでかけです。
 空が、急にあかるくなりました。
 「いってまいります」
 「いってきまーす」
 天使たちは、いっせいに飛びたちました。手に持っているカゴの中には、チカチカひかる星が、いっぱい、入っています。
 「さあ、今夜の星は、だれにあげましょうか」

 五階建てのマンション。
 二階の窓に、ぼんやりと明かりが、灯っています。ここは、ヤス子ちゃんのお家です。 「そう、今日、ヤス子ちゃんは、電車の中で、おばあさんに、席をゆずってあげましたね。さあ、この星をあげましょう」
 天使は、そう言って、ヤス子ちゃんの家の窓に、星を、そっとひとつ、なげました。
 星は、チカチカッと輝いて、ガラス窓を、すーっととおりぬけました。そして、ねむっているヤス子ちゃんの胸の上に、落ちて消えました。ヤス子ちゃんが見た夢の話を聞いた人、手をあげて。

 つぎは、木造建ての小さなお家の、タカシちゃん。
「そう、タカシちゃんはね、今日、お友だちとけんかをしました。でもね、すぐ、なかなおりをしましたよ。『ごめんね』って言いましたね。
 タカシちゃんの星は、青い星、さあ、すてきな夢を見てちょうだい」

 三番目の家は、マサルくん。
 「ああ、マサルくんは、今日、お母さんのいうことを、ちっとも聞きませんでしたよ。
 どうしてかしら、
 『おふろにお入りなさい』
 『いや!』
 『もうおやすみなさいね』
 『いや!』
 マサルくんの今日は、なんでも、いや、いやずくめでした。
 だから、今日のマサルくんには、この星あげられないの。でも、きっと、明日はあげられるわ。明日、また、もってくるわね」

 こうして、夢の星の天使たちは、小さな星をくばっていきました。星が、たくさん残ってしまった天使もいました。みんな、なくなった天使もいました。空っぽのカゴを持って帰る天使は、とてもうれしそうでした。けれど、星を残した天使は、少し悲しそうでした。でも、口々に、言いあっていました。
 「また、明日ね」
 「そうね、また、明日ね」
 そう言って、天使たちは、明るくなった空に、帰っていきました。


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