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第10回 聖書 –(2)


前回に引き続いて、「聖書」についてご一緒に、学んでまいりましょう。特に、今日は聖書が正典であるということについて、お話いたしましょう。


4 聖書の正典

今、私たちが手にしている「聖書」は、どのようにして生まれたのでしょうか。くわしい説明は他のページにおまかせするとして(例えば、「今道先生の聖書講座」などご覧くださいね)、大雑把にお話しすると、このようになります。

正典とはどういうものでしょうか。イエスの言葉や行いは、まず、口伝として、大切に言い伝えられました。その口伝を編集して、最初に書かれたものが、「マルコによる福音書」です。60年代のことです。70年代には、「ルカによる福音書」と「マタイによる福音書」が書かれました。もう1つの「ヨハネによる福音書」の成立は、100年頃と言われています。

今、私たちがもっている福音書は、マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネ、4つの福音書ですが、「トマスによる福音書」というものも書かれました。しかし、教会が正典であると認めたものは、マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネ、の4つの福音書だけでした。教会は、使徒伝承によって、これは正典かそうでないかを識別するのです。

福音書以外の他の新約聖書も含めて、1書ずつ書かれ、読まれていたものが、150年頃までには集められ、2世紀末までには、これらの書が教会の信仰の規範となるものだとの共通理解が生まれてきました。4世紀末には、西方・東方の両教会において、公会議などをとおして、これらの27書は、旧約聖書と併せて聖書の正典であることが認められました。

正典とは、カノンとも言いいます。ものごとの基準、規範となるものという意味です。ですから、聖書正典といえば、キリスト教信仰の最高の規範になるものという意味です。教会が正典と認めているものを、まず挙げておきましょう。旧約聖書は46書、新約聖書は27書あります。

旧約聖書……創世記、出エジプト記、レビ記、民数記、申命記、
    ヨシュア記、士師記、ルツ記、サムエル記上・下、列王記上・下、歴代誌上・下、
    エズラ記、ネヘミヤ記、トビト記、ユディト記、エステル記、マカバイ記一・二、
    ヨブ記、詩編、箴言、コヘレトの言葉、雅歌、知恵の書、シラ書(集会の書)、
    イザヤ書、エレミヤ書、哀歌、バルク書、エゼキエル書、ダニエル書、ホセア書、
    ヨエル書、アモス書、オバデヤ書、ヨナ書、ミカ書、ナホム書、ハバクク書、
    ゼファニヤ書、ハガイ書、ゼカリア書、マラキ書

新約聖書……マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネによる福音書、
    使徒言行録、
    ローマの信徒への手紙、コリントの信徒への手紙一・二、ガラテヤの信徒への手紙、
    エフェソの信徒への手紙、フィリピの信徒への手紙、コロサイの信徒への手紙、
    テサロニケの信徒への手紙一・二、テモテへの手紙一・二、テトスへの手紙、
    フィレモンへの手紙、ヘブライ人への手紙、
    ヤコブの手紙、ペトロの手紙一・二、ヨハネの手紙一・二・三、ユダの手紙、
    ヨハネの黙示録

旧約聖書は、ユダヤ教の人々が大切にしている正典ですが、キリスト教も、これをイエス・キリストの前史として、神が、その民と結ばれた古い契約が記された書として、正典の1部として大切にしています。それは、真の神の言葉だからです。旧約聖書は、なによりも、万物のあがない主であるイエス・キリストの到来を準備しています。さらに、神の愛の教育法をよく示しており、神の知恵と祈りのすばらしい宝庫です。


旧約聖書の分類(旧約聖書46書)

モーセ5書……創世記、出エジプト記、レビ記、民数記、申命記

これは、「律法」と呼ばれる部分で、シナイ山で神と契約を交わして、「神の民」となったイスラエルの民の誕生を描くとともに、「十戒」が神から与えられたことを教えるもので、ユダヤ教では、非常に大切にされている書です。

歴史書……ヨシュア記、士師記、ルツ記、サムエル記上・下、列王記上・下

イスラエルの民が、神によって導かれて歩んできた歴史が述べられています。

預言書……これは、大預言書と小預言書に分けられます。
    大預言書……イザヤ書、エレミヤ書、エゼキエル書
    小預言書……ホセア書、ヨエル書、アモス書、オバデヤ書、ヨナ書、ミカ書、
               ナホム書、ハバクク書、ゼファニヤ書、ハガイ書、ゼカリア書、マラキ書

以上の預言書は、神の民の歴史の中で、神のご意志を王や民に告げる言葉や活動が中心に描かれています。

  祈りや詩歌……詩編、箴言、コヘレトの言葉、雅歌、哀歌
  教訓物語………ヨブ記、ルツ記、エステル記
  諸書……………ダニエル記、エズラ記、ネヘミヤ記、歴代誌上・下

「新共同訳聖書」には、「旧約聖書続編」として、掲載されている聖書があります。

トビト記、ユディット記、マカバイ記一・二、知恵の書、シラ書(集会の書)、バルク書、ダニエル書の1部ですが、これらは、カトリック教会では正典と認めているものです。

新約聖書は、神の啓示の決定的な真理を伝えています。その内容の中心は、「人となられた神の子イエス・キリスト、そのわざ、教え、受難、栄光化、そして聖霊の働きに基づくキリストの教会の発足です」(124項)。

全聖書の中で、その中心、核となるのは、新約聖書の中にある「福音書」です。


福音書成立の3段階

  1. イエスの生涯と宣教
    神の子イエス・キリストは、実際に、人となられ、全ての人の救いのために、行動し、
      話され、教えられました。当然、この事実が先にあります。

  2. 口伝
      使徒たちは、主の昇天後、聖霊の光に照らされ、確信をもって、各地で自分たちが目撃
      したこと、聞いたことなどを伝えました。

  3. 福音書

福音記者は口伝と書かれたものの中から、イエス・キリストについての事柄を、伝えたい人々を念頭におきながら、多くの中から取捨選択し、統合し、書き記しました。

この福音書の伝えることが、イエス・キリストの時代から今に至るまで、多くの人々に影響を与え続けています。一例を挙げるならば、イエズス会を創立した聖イグナチオ・ロヨラは、「たとえ全世界を手に入れても、自分のいのちを失ったならば、なんの益になろうか」(マタイ16.26)という言葉に出会い、キリストのために自分の生涯をささげ、彼に続く人々は、現在までも後をたちません。


新約聖書の分類(新約聖書27書)

福音書……
    マタイ、マルコ、ルカによる福音の3つは、共通の伝承を多く使用しているところから、
      「共観福音書」と呼ばれています。
ヨハネによる福音
使徒言行録……初期のキリスト教会の歴史を、ペトロとパウロの宣教を軸に書いています。
14のパウロの手紙……
    ローマの信徒への手紙、コリントの信徒への手紙一・二、
    ガラテヤの信徒への手紙、エフェソの信徒への手紙、フィリピの信徒への手紙、
    コロサイの信徒への手紙、テサロニケの信徒への手紙一・二、
    テモテへの手紙一・二、テトスへの手紙、フィレモンへの手紙、ヘブライ人への手紙
その他の7つの使徒的書簡……
    ヤコブの手紙、ペトロの手紙一・二、ヨハネの手紙一・二・三、ユダの手紙
ヨハネの黙示録……黙示的に終末を描いています。


旧約聖書と新約聖書の一貫性

教会はその初めから、予型論を用いて、両聖書の一貫性を説明してきました。予型論とは、神の計画の完成への力強い歩みを示しているものです。ですから、キリスト信者は、「旧約聖書を、死んで復活したキリストに照らして読むのです」(129項)。

「古くからいわれているように、『新約が旧約のうちに秘められ、旧約が新約のうちにあきらかとなる』ために、新約聖書は旧約聖書の中に隠され、旧約聖書は新約聖書に中に明らかにされるのです」(129項)。


5 教会生活の中での聖書

聖ヒエロニモは「聖書を知らないことは、キリストを知らないこと」だといいました。今までご説明してきたように、イエス・キリストのご生涯、その教え、行いが書かれている聖書を読まずに、どうして、キリスト信者といえるでしょうか。聖書は、イエス・キリストを信じる神の民には、信仰の力、支え、霊的生活のくめども尽きない泉です。ですから、教会は信者一人ひとりが、聖書をよく読むように篤く勧めているのです。

神の民にとって、聖書は聖体と同様に、大切な魂の糧であり、規範となるものです。詩編119にあるように、「あなたのことばは、わたしの足のともしび、わたしの道の光」なのです。

「要約」134-141があります。大切な箇所ですから、繰り返しその内容を読んでみてください。

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