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列福、列聖

カトリック教会の中に独特の「教会暦」があります。これには、毎年の移動祝日であるイースター(ご復活祭)やイースターに伴う主の昇天の祭日、聖霊降臨の祭日、三位一体の祭日などが記されていますし、聖人の祝日も記されています。

 列聖、列福は、教会がその人物の取り次ぎを認めて、その人の福音的な生き方を保証するという意味で、慎重な判断が求められます。そのため、列福、列聖の調査手順が決められています。
 このためのプロセスを簡単にご紹介しましょう。

調査申請 ─「神のしもべ(しもめ)」

ある方が亡くなり、この人は聖人だった、教会で公に聖人として認めてほしいと思う人や団体は、その願いを教皇庁列聖省に届けます。

列聖省には、全世界から膨大な申請書が届いているそうですが、列聖省の人びとはそれらの書類を調べ、列聖の前段階である列福に、その人が値する人であるかどうかを調査します。正式に列福調査を始めると決まった人は、列聖省が「今からこの人の調査を開始します」と宣言した時から「神のしもべ」(女性の場合は、「神のしもめ」)と呼ばれるようになります。

調査  第1段階

第1段階の列聖調査の管轄権は、通常、聖人だと思われる人が亡くなった場所の教区司教です。司教は責任をもって、教皇庁列聖省に必要な書類を整えて提出しなければなりません。
 しかし、活動範囲が広かったり、客死などの場合もあるため、管轄権を譲渡することが認められています。

管轄権を持つ司教が提出するものは、神のしもべの細かい生涯の記録、証言などです。これには、その人自身が書いた文章などがあれば、それら全部が調査対象になります。ですから昔に比べて、現代はこの調査はもっともっと大変です。テープなどに録音された音声記録やビデオなどに撮られた映像記録も逐一調べなければなりません。

その他、神のしもべ(しもめ)が活躍した地方でその人が尊敬されているかどうか、多くの人がその人に取り次ぎを求めて祈ったりしているかどうか、神のしもべ(しもめ)を知っている人が現存しているかどうかなどを調査し、その証言を求めたりします。

調査  第2段階

列聖省には、全世界から膨大な申請書が届いているそうですが、列聖省の人びとはそれらの書類を調べ、列聖の前段階である福者に列するに、その人が値する人であるかどうかを調査します。

列聖省の調査委員たちは、教区から提出された神のしもべの細かい生涯の記録、証言、全著作、音声記録や映像記録も調査します。当然、書類上の審査だけでなく、神のしもべ(しもめ)が活躍した地方に赴いて調査をするという現地調査も含まれてきます。

書類上の調査が1段落したところで、神のしもべ(しもめ)の列福への歩みが確実になったと判断されたら、神のしもべ(しもめ)の墓と遺体の調査が行われます。

この調査が終わると、「神のしもべ(しもめ)」から、「尊者(そんじゃ)」の称号をつけて呼ぶことが許されるようになります。

奇跡について

その他、どうしても欠かせないのは、奇跡です。
 殉教者の場合、列福のために奇跡は必要ありません。しかし、列聖の場合には、その人の取り次ぎによって引き起こされた1つの「奇跡」が必要です。また、証聖者の場合は奇跡が列福においても、列聖においても必要とされています。

この奇跡は、現代科学でどうしても解明できないもので、これは神によるもの以外にはないと思われるものしか認められません。ですから、医学的調査やその他種々の調査がそれに伴ってきます。
 列聖省では、医事委員会、歴史委員会、神学委員会を経て、列聖省委員会にかけられます。

奇跡を受けた本人は言うに及ばず、そのことを証言する人たちからの資料が集められ、奇跡が起こった教区の司教の招集した人びとからなる調査が行われ、この奇跡が尊者の取り次ぎによって確かに行われたという結論が出されれば、その結果は、教皇庁列聖省に送られます。

調査  第3段階

列聖省の専門委員会に、ポストラトール(申請者代理人)をとおして申請の準備を行います。

列聖省枢機卿委員会の会議の審議を受けます。この審査をとおった尊者の最終審査は、教皇に委ねられます。
 ここで、教皇が、「列福の教令」にサインをなさった時、「教皇様は、このたび尊者○○を福者になさいました」という知らせが、関係者に伝えられるのです。

列福式

列福の通知とともに、いつ、どこで列福式が行われるかが発表になります。たいてい、発表から実際の式までは、2、3ヶ月から半年後に行われるのが普通です。準備の期間が必要だからです。

聖人

福者は聖人になる前の段階ですが、福者から聖人になるためには、さらにもう1つの奇跡が、求められます。その奇跡の申請については、福者の調査と同様の手順が踏まれます。最終的に教皇が、申請された福者を列聖式によって、聖人とされます。

しかし、聖人への申請がない場合には、福者のまま留まる人もいます。たとえば、画家として大変有名なフラ・アンジェリコは、別名ベアト・アンジェリコと呼ばれているように、「ベアト」つまり福者なのです。

福者に挙げられようと挙げられまいと、聖人に挙げられようと挙げられまいと、私たちの知らない聖人が大勢いることを、私たちはよく知っています。ですから、11月1日に私たちは「諸聖人の祭日」を祝うのです。


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