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 オリバー・ツイスト

2006年1月

Oliver Twist

オリバー・ツイスト

  • 監督:ロマン・ポランスキー
  • 原作:チャールズ・ディケンズ
  • 脚本:ロナルド・ハーウッド
  • 音楽:レイチェル・ポートマン
  • 出演:バーニー・クラーク、ベン・キングズレー、ハリー・イーデン、
       エドワード・ハードウィック
  • 2005年 フランス・イギリス・チェコ映画 2時間9分

2006年 スイス映画 121分


チャールズ・ディケンズの名作「オリバー・ツイスト」の映画化です。厳しい社会環境の中でも、人を思いやる心を失わなかったオリバーの優しさが、胸を打ちます。

フェイギンを演ずるのは、「ガンジー」「シンドラーのリスト」「十二夜」の名優ベン・キングスレー。「シャーロック・ホームズの冒険」でワトソン君を演じたエドワード・ハードウィックも出演しています。監督は、5年前、話題になった映画「戦場のピアニスト」のロマン・ポランスキー監督、音楽は、「Emmaエマ」で女性としてはじめてアカデミー賞作曲賞を受け、「サイダーハウス・ルール」「ショコラ」でも同賞にノミネートされたレイチェル・ポートマンです。名優、活躍している監督やスタッフたちに、オーディションで選ばれたオリバー役のバーニー・クラークら子どもたちが加わり、どんな作品になっているんだろうとワクワクしてきます。

物語

19世紀のロンドン。養育院で育てられたオリバー・ツィスト(バーニー・クラーク)は、9歳になり、自分が生まれた救貧院に戻ってきた。教会が運営しているこの救貧院には、大勢の子どもたちがいて、麻屑作りをさせられていた。環境は劣悪で、食事も水の多いお粥が一杯だけだった。しかし、救貧院の委員たちは、ぜいたくな食卓を囲んでいた。

お腹がすいた子どもたちは、とうとうがまんができなくなり、お代りさせてほしいという要望を救貧院の委員たちに出す者を決めるために、くじ引きをすることにした。くじは、オリバーに当たった。夕食のとき、オリバーは、しかたなくお代りの要求をするが、怒った救貧院の委員たちから追放処分を受けてしまう。

オリバー・ツイスト

追放されたオリバーを引き取ったのは、葬儀屋だった。葬儀屋は、悲しげな顔をしたオリバーを、葬儀のお供に適任だと思ったのだ。しかし、このことが原因で先輩徒弟のノアの敵意を買い、また亡くなった母親のことをノアから悪く言われたことに腹を立て、オリバーはノアに殴りかかってしまう。むち打ちのお仕置きを受けたオリバーは、翌朝、葬儀屋の家を出る。大都会に行けば、何かよいことがあるかもしれないと思ったオリバーは、ロンドンを目指して歩きはじめる。

しかし、旅は甘いものではなかった。犬にほえられ、食事を求めても追い払われる始末だった。7日間歩きとおして、やっとロンドンに着いたとき、もう起き上がることができないほど弱っていた。

オリバーがある家の玄関前の階段に倒れていると、シルクハットをかぶりコートを着た少年ドジャー(ハリー・イーデン)が声をかけてきた。彼は、市場を歩きながら、食パンをかすめ取り、オリバーに食べさせてくれた。さらに、ただで泊まれるところがあると、オリバーを裏通りの家へと連れていった。

オリバー・ツイスト

そこは、少年たちを手先につかって盗みをさせているフェイギン(ベン・キングズレー)の家だった。食事を与えらてお腹が満ちたオリバーは、旅の疲れからぐっすりと寝込んでしまう。目を覚ますと、じゅうたんをはがした床下から取り出した箱を開けたフェイギンが、中に入っている宝石を手にして見つめているところだった。

オリバー・ツイスト

しばらくしてフェインギンは、オリバーにも、他の少年たちと同じ仕事をするように促す。少年たちが何をしているのか見せるために、少年たちはオリバーの前で、フェイギンのポケットに入っているハンカチや時計を、気づかれないように抜き取った。

オリバーの腕前が上達していったある日、フェイギンはオリバーを、ドジャーたちと一緒に外出させる。ある本屋の前で本を見ている紳士のポケットからハンカチを盗み取るドジャーたちを見て、オリバーは仕事の意味を理解した。と、そのとき、店の中にいた本屋の主人が、「泥棒!」と叫んだ。逃げ遅れたオリバーは捕まり、法廷に突き出される。そして、気を失って倒れてしまう。駆けつけてきた本屋の主人によって、人違いだとわかり、オリバーは解放される。

本を読んでいた紳士ブラウンロー(エドワード・ハードウィック)は、倒れたオリバーを家に連れ帰り、家政婦のベドウィンに手厚く介抱させる。二人はオリバーに、ある親しみを感じていた。オリバーはブラウンローの家で過ごし、すっかり元気を取り戻した。

ある日、オリバーはブラウンロー氏から使いを頼まれ、5ポンドを持って出かける。ブラウンロー氏は、オリバーを信用するなという友人に対し、必ず帰ってくると信頼してオリバーにお金を持たせたのだった。しかし、オリバーの行く手には、オリバーが警察へ密告するのではないかと恐れたフェイギンの仲間たちが待ち受けていた。

 

たくさんの涙を流したオリバー。親のいない子は、どうしてこんなに苦しまなければならないのでしょう。日本でも戦後、このような子どもたちが大勢いました。今も、世界のあちらこちらで、戦争で両親や兄弟を失い、独りぼっちになっている子、しいたげられている子どもたちがたくさんいます。大人でも生きていくのが難しい中にあって、大変なことです。「オリバー」は、時代や国を越えて、そのような子どもたちの代表です。本来ならば、弱い子どもたちを暖かく見守ってあげなければいけない大人たちによって、子どもたちは傷ついていきます。

どのようなときも、キラキラ光る優しい心を失わなかったオリバー。彼の透き通った瞳は、見る者の心を清めてくれます。牢獄にいるフェイギンを訪問したオリバーが、気がふれてしまったようなフェイギンに代わって神に祈りをささげるラストシーンは、感動的です。幸せになってね、オリバー。

9世紀のロンドンを再現したセットと衣装も、じっくりとご覧ください。

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