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アレオパゴスの祈り

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アレオパゴスの祈り 2011年4月2日


木蓮



 

3月9日の「灰の水曜日」から始まった四旬節も、4月17日からは、四旬節最後の一週間となる聖週間を迎えます。この期間に読まれる聖書の箇所は、イエスのさまざまな受難や十字架の死が、すべての人の罪をあがなうための、神のご計画であることをいっそう明らかにしていきます。罪のあがないは人間から神に向けられた行為はなく、神のたまものとして示されました。イエスの受難と死において、わたしたちに対する神の無条件の愛が表れています。そして、今年は4月24日に主の復活に入るご復活を祝います。

今晩の、「アレオパゴスの祈り」は、カトリック教会が16世紀から行ってきた伝統的な 「十字架の道行き」と呼ばれる祈りをご一緒にささげていきましょう。

「十字架の道行き」は、最も深くイエス・キリストの受難と十字架の意味を教えてくれるものです。今晩も、祈りを必要としている人々のためにささげましょう。特に3月11日に襲った東北関東大震災は、多くのいのちを奪いました。亡くなられたすべての人々が、神さまの国で安らかに憩うことができますように。また、被災され苦悩する日々を送っておられるたくさんの方々と、原発事故によって避難生活を余儀なくされている方々が、一日も早く安心して暮らせる日が来ますように、神さまのあわれみを願い祈りましょう。救助をしている方、原子力発電所で処理をしている方のためにも、祈りましょう。ローソクを受け取った方から、祭壇にお進みください。

十字架の道行きとは、イエスが当時のローマ総督、ピラトの裁判を受けることから始まって、刑場のゴルゴタの丘までの苦しみに満ちた歩みのさまざまな場面を思い起こし、十字架につけられ息絶え、墓に葬られるまでを黙想する祈りです。

全部で14の場面を表し、その一つひとつが留(りゅう)と呼ばれるように。場所に留まりながら黙想していきます。この祈りを唱えながら、イエスが、なぜこれほど苦しまれたのかを思いめぐらしていると、自分の罪や人間の罪が、イエスの苦しみと一つにつながっていることを教えられます。

イエスの歩まれた十字架の道をたどる祈りは、教会の歴史の中で早い時期から何らかの形で存在していました。聖地を訪問するキリスト者の増加にともない、聖週間を聖地で過ごそうとする信仰者も数を増してきました。しかし、聖地まで行くことのできない大多数のキリスト者にとっては、自分の今居る場所で、それぞれ「道行き」をたどることができるように、絵画や十字架、聖像などを用いるようになりました。元来は自由にイエスの受難を黙想するものでしたが、18世紀、クレメンス12世教皇のころ、現在のような14留に定まったと言われています。今の教会も主の受難の聖金曜日には、信徒たちが集まって唱えています。

「十字架の道行き」の祈りを始めましょう。一つひとつの留の場面に目をとめ、解説、聖書の言葉を聞きながら歩みましょう。

第1留:イエス、死刑を宣告される
大祭司カイアファの館で不法な裁判をお受けになったイエスは、ローマ総督ピラトの前に引いていかれました。ピラトはイエスを釈放しようとしますが、ユダヤ人は長老たちにそそのかされて、イエスを十字架につけよと叫びます。赤いマントを着せられ、いばらの冠をかぶせられたイエスは、一言も弁解なさらず、人々の憎しみの的になったまま死刑を宣告されました。

エレミアの預言11.19
わたしは、飼いならされた小羊が 屠(ほふ)り場に引かれて行くように、何も知らなかった。彼らはわたしに対して悪だくみをしていた。「木をその実の盛りに滅ぼし、生ける者の地から絶とう。彼の名が再び口にされることはない。

祈りましょう。
全能の神である父よ、御子キリストは人々を愛して自らを死に渡されました。わたしたちもこの愛のうちに力強く歩むことができますように。

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十字架を担う

第2留:イエス、十字架を担う
死刑を宣告された人は刑場まで自分の十字架をかついで行かされました。イエスは、荒々しく負わされた十字架を黙って受けとめ、歩き始められます。こうして、はずかしめと処罰のしるしであった十字架は、救いと勝利をもたらすしるしとなりました。何も知らない群衆はただイエスをあざけるばかりです

イザヤの預言 53.7~8a
苦役を課せられて、かがみ込み、彼は口を開かなかった。屠り場に引かれる小羊のように、毛を切る者の前にものを言わない小羊のように、彼は口を開かなかった。捕らえられ、裁きを受けて、彼はいのちを取られた。

祈りましょう。
全能、永遠の神よ、あなたは人類にへりくだりを教えるために、救い主が人となり、十字架を担うようお定めになりました。わたしたちが主とともに苦しみを耐えることによって、復活の喜びをともにすることができますように。

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第3留:イエス、初めて倒れる
前夜からのむごい仕打ちで痛みつけられたイエスに、今はもう重い十字架を引きずって石畳の道をたどる力は残っていません。足はよろめき、肩に食い込む十字架に押しつぶされて、思わずお倒れになりました。

詩編38.5、7、9、22
わたしの罪悪は頭を越えるほどになり、耐え難い重荷になっています。わたしは身を屈め、深くうなだれ、一日中、嘆きつつ歩きます。もう立てないほど打ち砕かれ、心は呻き、うなり声をあげるだけです。主よ、わたしを見捨てないでください。わたしの神よ、遠く離れないでください。わたしの救い、わたしの主よ、すぐにわたしを助けてください。

祈りましょう。
いつくしみ深い神よ、あなたの民の過ちをゆるしてください。弱さのために犯した罪の束縛からわたしたちが解放されますように。

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母マリアに会う

第4留:イエス、母マリアに出会う
イエスに向けられた人々のあざけりと憎しみを、マリアも受けます。神の子の母が今、大罪人の母としてはずかしめにさらされています。母マリアは我が子の苦難を受けとめ、「お言葉どおり、なりますように」と神のみ手にすべてをゆだねました。

エレミアの哀歌1.12
道行く人よ、心して目を留めよ、よく見よ。これほどの痛みがあったろうか。わたしを責めるこの痛み、主がついに怒ってわたしを懲らすこの痛みを。

祈りましょう。
主、イエス・キリスト、聖母マリアのみ心を刺し貫くほどの悲しみにわたしたちをあずからせてください。あなたのいつくしみによって、わたしたちに救いの恵みが与えられますように。

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第5留:イエス、キレネのシモンの助けを受ける
イエスの力はもう尽き果てたと見た兵士たちは、そこに居合わせたキレネのシモンに、イエスに代わって十字架をになわせました。シモンは、死刑にされる囚人を助けるのは屈辱と感じたことでしょう。心ならずもイエスと一緒に群衆のあざけりの的となったシモンは、後に主の教会の一員となりました。

詩編22.7~9
わたしは虫けら、とても人とはいやない。人間の屑、民の恥。わたしを見る人は皆、わたしを嘲笑い、唇を突き出し、頭を振る。「主に頼んで救ってもらうがよい。主が愛しておられるなら助けてくださるだろう。」

祈りましょう。
すべてのことの中に働いておられる神よ、御子キリストとともに十字架を担わせてください。わたしたちの愛と実行が足りなかったことをゆるし、新しい力をお与えください。

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第6留:イエス、ベロニカより布を受け取る
ののしりを浴びせられ、血と汗にまみれたイエスの顔は、苦痛にゆがんでいます。だれ一人同情を寄せようとしないそのとき、思いがけずベロニカという女性が進み出て布を渡すと、イエスは顔をぬぐい、お返しになりました。

イザヤの預言52.14
かつて多くの人をおののかせたあなたの姿のように、彼の姿は損なわれ、人とは見えず、もはや人の子の面影はない。それほどに、彼は多くの民を驚かせる。彼を見て、王たちも口を閉ざす。

祈りましょう。
永遠の父よ、罪深い民をあなたに立ち帰らせてください。わたしたちが、ただ一つの必要なものを絶えず求め、愛の業をとおして、ひたすらあなたに仕える者となりますように。

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十字架を担う

第7留:イエス、再び倒れる
イエスを追い立てる群衆の興奮はますます高まり、イエスを激しくののしります。人はどうしてこんなにも残酷になれるのでしょうか。むちを振りかざす兵士たちの暴力に耐えられず、イエスは力つきてお倒れになります。

イザヤの預言53.5~6
彼が刺し貫かれたのはわたしたちの背きのためであり、彼が打ち砕かれたのはわたしたちの咎のためであった。彼の受けた懲らしめによって、わたしたちに平和が与えられ、彼の受けた傷によって、わたしたちはいやされた。わたしたちは羊の群れ、道を誤り、それぞれの方角に向かって行った。そのわたしたちの罪のすべてを、主は彼に負わせられた。

祈りましょう。
全能の神よ、弱さのうちに倒れてしまうわたしたちを顧み、ひとり子の受難の力によって強め、立ち上がらせてください。

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第8留:イエス、エルサレムの婦人を慰める
ののしり続ける群衆の中にも、嘆き悲しみながらイエスについていく婦人たちがいました。イエスは婦人たちに向かい、「わたしのために泣くな。むしろ、自分と自分の子どもたちのために泣け」と仰せになり、罪深い自分自身に涙するよう諭されました。

エレミアの預言9.19
女たちよ、主の言葉を聞け。耳を傾けて、主の口の言葉を受け入れよ。あなたたちの仲間に、嘆きの歌を教え互いに哀歌を学べ。

祈りましょう。
いつくしみ深い父よ、あなたを深く愛する心をお与えください。すべてにおいてあなたを愛し、人の思いをはるかに超えた幸せにあずかることができますように。

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三度倒れる

第9留:イエス、三度倒れる
ゴルゴタの丘はもう目の前ですが、イエスの体には最後の一歩を上り切る力もなく、お倒れになります。しかし、イエスは今一度立ち上がり、人々の救いを望まれる御父の計画を実現するよう、最後の歩みをお続けになります。

エレミアの哀歌1.21、22
聞いてください、わたしの呻きを。慰めてくれる者はありません。敵は皆、わたしの受けた災いを耳にして、あなたの仕打ちを喜んでいます。わたしはこうして呻き続け心は病に侵されています。

祈りましょう。
全能の神よ、あなたの教会をいつもいつくしみをもってお守りください。あなたから離れて立つことのできないわたしたちを恵みによって支え、滅びの道から遠ざけ、救いに導いてくださいますように。

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第10留:イエス、衣をはがれる
刑場に着くと、兵士たちは、血に染まったイエスの衣を乱暴にはぎ取りました。上着は四つに分けて、一つずつ取り、下着は一枚織りで縫い目がなかったので、裂かずに、だれのものになるか、くじで決めました。

詩編22.17~18
犬どもがわたしを取り囲み、さいなむ者が群がってわたしを囲み獅子のようにわたしの手足を砕く。骨が数えられる程になったわたしの体を彼らはさらしものにして眺め、わたしの着物を分け、衣を取ろうとしてくじを引く。

●祈りましょう。
全能、永遠の神よ、御ひとり子キリストの受難によって、あなたはすべての人におよぶ死の遺産を打ち砕いてくださいました。罪の重荷を負うわたしたちが恵みによって聖とされ、キリストに結ばれて新しい人となりますように。

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釘付けられる

第11留:イエス、十字架につけられる
兵士たちはイエスを十字架に釘づけにし、また二人の犯罪人もイエスの右と左に十字架につけました。そのときイエスは、「父よ、彼らをおゆるしください。自分が何をしているのか知らないのです」と祈られました。犯罪人のひとりが、「イエスよ、あなたのみ国においでになるときには、わたしを思い出してください」と願うと、イエスは、「あなたは今日わたしと一緒に楽園にいる」と仰せになりました。

詩編22.15~16
わたしは水となって注ぎ出され骨はことごとくはずれ、心は胸の中でろうのように溶ける。口は渇いて素焼きのかけらとなり舌は上顎にはり付く。あなたはわたしを塵と死の中に打ち捨てられる。

祈りましょう。
主よ、あなたはしもべの姿をとり、死に至るまで、しかも十字架の死に至るまで父に従われました。わたしたちも従うことを学び、あなたの復活の栄光にあずかることができますように。

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第12留:イエス、十字架上で息をひきとる
昼の12時から暗闇が全地を覆い、3時ごろにイエスは大声で、「わが神、わが神、なぜわたしをお見捨てになったのですか」と叫ばれました。また、かたわらに母マリアと愛する弟子が立っているのを見て、「婦人よ、ご覧なさい。あなたの子です」「見なさい。あなたの母です」と仰せになり、最後に「成し遂げられた」と言って頭を垂れ、息をひきとられました。

詩編22.2
わたしの神よ、わたしの神よ、なぜわたしをお見捨てになるのか。なぜわたしを遠く離れ、救おうとせず呻きも言葉も聞いてくださらないのか。わたしの神よ、昼は、呼び求めても答えてくださらない。夜も、黙ることをお許しにならない。

祈りましょう。
聖なる父よ、あなたは罪のために刺し貫かれた御子のうちに限りない、いつくしみの泉を開いてくださいます。わたしたちがそのいつくしみに答え、心からの奉献によってあなたに仕えることができますように。

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十字架から降ろされる

第13留:イエス、十字架から降ろされる
大きな出来事の後、あたりは静けさに包まれています。三人の脚を折るために兵士が来ます。イエスはすでに死んでおられたので脚を折らず、槍でイエスの脇腹を突き刺すと、すぐに血と水が流れ出ました。安息日の準備のときが近づいていたので、アリマタヤ出身のヨセフがイエスの遺体を降ろしたいとピラトに願い出て、ピラトが許したので急いでイエスの遺体を十字架から降ろしました。

エレミアの哀歌2.13
おとめエルサレムよ、あなたを何にたとえ何の証しとしよう。おとめシオンよ、あなたを何になぞらえて慰めよう。海のように深い痛手を負ったあなたをだれがいやよう。

祈りましょう。 主イエス・キリスト、聖母マリアのみ心を悲しませたのはわたしたちの罪の業でした。わたしたちは、その罪を憎み悔やみます。わたしたちの母となられたマリアよ、どうかわたしたちをあなたの子として受け入れ、生涯の守りとなってください。

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墓に葬られる

第14留:イエス、墓に葬られる
イエスの身体は、ユダヤ人の習慣どおり、香料とともに亜麻布に包まれ、近くにあった新しい墓に葬られました。数人の婦人たちが埋葬に立ち会い、墓の入り口に大きな石を転がしその日は、去っていきました。

イザヤの預言53.11~12
彼は自らの苦しみの実りを見、それを知って満足する。わたしの僕は、多くの人を彼の取り分とし 彼は戦利品としておびただしい人を受ける。彼が自らなげうち、死んで罪人のひとりに数えられたからだ。多くの人の過ちを担い、背いた者のために執り成しをしたのはこの人であった。

イエスは、死んで墓に葬られ、沈黙しておられるかのようです。墓はすべての希望を閉じこめてしまいました。しかしこの沈黙は、やがて春の訪れが緑を呼ぶように、イエスは、死から新しいいのちに復活されます。

祈りましょう。
恵みの源である神よ、豊かな祝福でわたしたちを満たしてください。わたしたちが、日々罪に死んで新しいいのちに生き、栄光の現れを待ち望むことができますように。

  

『カトリック典礼聖歌』 No.313 「静かに流れる水のように」 ① ③

  
  師イエスに向かう祈り    (『パウロ家族の祈り』より)

  師イエス、神のひとり子である あなたを礼拝します。
  あなたは、人々にいのちを、しかも豊かないのちを与えるために
  この世に来られました。
  十字架の死をとおしてわたしたちにいのちをかち得、
  これを洗礼によって与え、
  聖体とその他の秘跡によって成長させてくださることを感謝します。
  師イエス、わたしたちが精神を尽くし、力を尽くし、
  心を尽くしてあなたを愛し、あなたへの愛のために
  隣人を自分のように愛することができるよう
  わたしたちに聖霊を注ぎ、あなたの住まいとしてください。
  いつの日か、わたしたちが栄光のいのちに呼び起こされ、
  あなたとともに永遠の喜びに入ることができるように
  わたしたちのうちに愛を増してください。

道・真理・生命である師イエス、わたしたちをあわれんでください。
 

これで今晩の「アレオパゴスの祈り」を終わります。

※ 十字架の道行の画像:那覇教区カトリック安里教会
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