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アレオパゴスの祈り

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アレオパゴスの祈り 2014年10月 4日


サルビア



カトリック教会では10月をロザリオの月としてささげ、聖母マリアの取り次ぎを求めて祈ります。ロザリオの祈りは、キリストの生涯における喜び、苦しみ、光、栄えの4つの神秘を黙想しながら、主の祈り、アヴェ・マリアの祈り、栄唱を唱えます。それぞれの神秘を黙想しながら祈ることは、わたしたち、個人の人生の歩み、わたしたちが日常の中で体験する喜び、苦しみをとおして、神様から恵みとしていただく光を重ね合わせて祈ることでもあります。今日は、マリアが天使ガブリエルからお告げを受け、「神の母」となったことを思い起こしながら、ごいっしょに祈ってまいりましょう。

わたしたち一人ひとりが心に抱いている意向、祈りを必要としている人々、出来事を神の御手にゆだねて、しばらく思い起こしましょう。

(沈黙)

お祈りしたい意向を心の中にたずさえて、ローソクをささげましょう。

聖書の言葉を聞く前に、わたしたち、一人ひとりに与えられている神様からのメッセージに耳を傾けることができますように願って、歌いましょう。

『神をたたえ』No.4 「聞かせてください」②

マリアが天使からお告げを受ける場面を語っている、ルカによる福音を聞きましょう。

ルカによる福音(1.26-38)

六か月目に、天使ガブリエルは、ナザレというガリラヤの町に神から遣わされた。 ダビデ家のヨセフという人のいいなずけであるおとめのところに遣わされたのである。そのおとめの名はマリアといった。天使は、彼女のところに来て言った。「おめでとう、恵まれた方。主があなたと共におられる。」 マリアはこの言葉に戸惑い、いったいこの挨拶は何のことかと考え込んだ。 すると、天使は言った。「マリア、恐れることはない。あなたは神から恵みをいただいた。 あなたは身ごもって男の子を産むが、その子をイエスと名付けなさい。 その子は偉大な人になり、いと高き方の子と言われる。神である主は、彼に父ダビデの王座をくださる。 彼は永遠にヤコブの家を治め、その支配は終わることがない。」 マリアは天使に言った。「どうして、そのようなことがありえましょうか。わたしは男の人を知りませんのに。」 天使は答えた。「聖霊があなたに降り、いと高き方の力があなたを包む。だから、生まれる子は聖なる者、神の子と呼ばれる。 あなたの親類のエリサベトも、年をとっているが、男の子を身ごもっている。不妊の女と言われていたのに、もう六か月になっている。 神にできないことは何一つない。」 マリアは言った。「わたしは主のはしためです。お言葉どおり、この身に成りますように。」そこで、天使は去って行った。

(沈黙)

「聖母マリア」……。彼女に対するわたしのイメージはどのようなものでしょうか。マリア様は罪から免れ、「神の母」という特別の使命を神様から与えられました。しかしわたしたちと同じように、一人の人間として生きられました。わたしたちが生活の中で、喜び、苦しみ、悲しみを体験するのと同じように、マリア様の生涯も喜びと試練の連続でした。

今聞いた、福音の箇所を解説した森司教様のお話を聞きましょう。

この福音の物語は、人類のすべての人々に先立って、神がマリアに恵みの訪れを知らされたお告げの場面です。
天使ガブリエルは、マリアを祝して告げます。
「あなたは女の中で祝された方です」と。

いったいどうしてマリアは祝されているのでしょうか。その一つの理由を、天使はマリアに明かします。
「あなたは、主のみ前に恵みを得たのです」と。

恵みに満ちたマリア。
聖書の世界が恵みと言うときには、贈り物、賜物というものにアクセントを置くより人間同士のかかわり方に重きを置いていることに注目すべきです。聖書の民が恵みとして感じ取るものは、上位の人からのまなざしです。例えば、王とか、指導者が自分の目下の者に、特別に目を留め、言葉をかけていくことなのです。

「特別に目をかけられること」「特別な好意を受けること」の中に、恵みを見ているのです。確かにそうです。聖書の中で、人々の恵みを求める祈りに注意してみますと、まなざしを求めて祈っていく場合がどんなに多いかに気が付きます。

「御目を正しい者に留めてください」
「主は貧しい者の憂き目を軽んじることなく、嫌がることなく、彼らから御顔をそむけず、むしろその叫びを聞き入れられた」

「神が瞳を向ける」「神が顔を向ける」という表現の中に、旧約の人々は恵みを見ていたのです。神が目をかけてくださるということ、それは、いろいろな意味で恵みです。まず、自分の方にまなざしを向けるように強要することは、誰もできません。この人にするか、あの人にするかは、全く本人の自由です。

まして、受ける方に、自分には目をかけてもらえる価値や資格がないという意識があればあるほど、目をかけられることに対し、恵みだという自覚が強まります。自分がつまらない者であるという自覚を持つ人であればあるほど、人からのあたたかい言葉を恵みとして受け取ります。そして、目をかけてくれる人が力強ければ力強いほど、それはすばらしいものになります。目をかけてくれる人の力と愛に包まれ、守られることになるからです。

こう考えていくと、神のまなざしに包まれることほど、人間にとってすばらしいことはないと言えます。それは、万物の創造者である神が、一粒の砂のような無にすぎないわたしたちを認め、包んでくださることにつながるからであり、それはまた神の愛の力強さが、人間の力強さになっていくからです。それは、絶望と暗闇で閉ざされた孤独の中にいる人間にとって、希望の泉となるのです。

このように恵みを理解していくと、マリアに向けられた言葉の真の意味をつかむことができるようになります。神のみ前に恵みを得たマリア――それは、マリアが神の大きなまなざしに包まれたということなのです。マリアも、神のまなざしが自分を包んでいるという事実を自覚しています。
「主は、卑しいはしためを顧みてくださった」
神は、マリアにまなざしを向け、マリアをとおして、罪ある世界を包んでいくのです。全世界を救おうとするあわれみのまなざしは、まず、マリアに注がれ、マリアから、傷つき悲しむ人々の上に広がっていくはずのものなのです。

旧約の人々が祈りながら待ち望んで、誰ひとり体験できなかった神のあわれみのまなざしの中に、マリアは、素直にすべてをゆだねていきます。こうしたマリアの奉献から、神の愛は全世界のものになっていくのです。
                 (『人の思いをこえて~日曜日の説教集B年~』森一弘 著、女子パウロ会刊)

「神様がわたしを心にかけてくださっている」……。マリアのこの体験は、その生涯において、喜びのとき、苦しいときの支えとなりました。父である神様はわたしたち一人ひとりも、あたたかく見守っていてくださいます。神様のそのまなざしを感じながら、しばらく沈黙のうちに祈りましょう。


マリア


『パウロ家族の祈り』p.274 「お告げの聖母に向かう祈り」

    聖母マリア、いつの代の人も、
    あなたを幸いな方とたたえますように。
    大天使ガブリエルの言葉を信じたあなたのうちに告げられた
    偉大なことが、すべて成就しました。
    マリアよ、わたしはすべてをあげてあなたをたたえます。
    あなたは、ご自分のうちに神の御子が受肉されるのを信じて、
    神の母となられました。
    そのとき、人類史上最も幸いな日が訪れ、
    人類は、唯一の師、永遠の祭司、
    あがないのいけにえ、全宇宙の王を持つようになりました。
    信仰は神の賜物、すべての善の源です。
    マリアよ、人を救い、聖化するゆるぎない信仰を
    わたしたちにも得させてください。
    あなたが御子の言葉を心にとめ、思いめぐらしておられたように、
    わたしたちもみ言葉を黙想することができますように。
    福音がすべての人に宣べ伝えられ、素直に受け入れられますように。
    こうして、すべての人が、イエス・キリストにおいて神の子となりますように。

ロザリオの喜びの神秘、第一の黙想では、今、祈ってきた「お告げ」の場面を思い浮かべながら、祈ります。これからごいっしょにこの一連をささげて祈りましょう。「主の祈り」を1回、「アヴェ・マリアの祈り」を10回、栄唱を1回唱えます。

お祈りは、先唱者と皆さまで、交互に祈ります。皆さまは各お祈りの後半を唱えてください。お手元に主の祈りなどが印刷されたお祈りのプリントを持っていらっしゃる方は、それを参考になさってください。

この一連をささげて、聖母マリアを救い主の母、わたしたちの母として与えてくださった御父に感謝しましょう。わたしたちもマリアのように神様の望みを生活の中で生きることができるように、その恵みを願いましょう。

「主の祈り」―1回、「アヴェ・マリアの祈り」―10回、栄唱―1回

「聖母マリアへの連願」を祈りましょう。連願は、一人が先唱し、会衆が短い繰り返しの言葉で答えていく形式の祈りです。先唱者に続いて、皆さまは、祈祷書の下の部分にある、「主よ、あわれんでください」、「わたしたちのために祈ってください」というところを唱えてください。わたしたちが必要としている恵み、また日本をはじめ、世界で苦しんでいる人々のために、恵みを求めて祈りましょう。

『パウロ家族の祈り』p.139 「聖母マリアへの連願」

主よ、あわれんでください主よ、あわれんでください。
キリストあわれんでくださいキリストあわれんでください。
主よ、あわれんでください主よ、あわれんでください。
神の母聖マリアわたしたちのために祈ってください。
      
救い主の母聖マリア
無原罪の聖マリア
世の救いの協力者聖マリア
天の栄光にあげられた聖マリア  
恵みあふれる聖マリア
人類の母聖マリア
教会の母聖マリア
使徒たちの母聖マリア
殉教者の母聖マリア
      
諸聖人の母聖マリア
宣教者の母聖マリア
平和の守護者聖マリア
尊いロザリオの聖マリア
キリシタン発見の聖マリア
尊敬すべきおとめ
忠実なおとめ
柔和、謙遜なおとめ
幼子をいつくしむおとめ
明けの明星
喜びの泉
純潔のかがみ
仕える者の模範
家庭生活の喜び
召命の保護者
キリスト信者の助け
     
み苦しむ者の慰め
病人の希望
やみの中の道しるべ
罪びとのよりどころ
弱く貧しい者の友
心の支え
臨終のときともにいてくださる方
    
世の罪を除かれる神の小羊わたしたちをゆるしてください。
世の罪を除かれる神の小羊わたしたちの祈りを聞き入れてください。
世の罪を除かれる神の小羊わたしたちをあわれんでください。

ごいっしょに祈りましょう。
いつくしみ深い神よ、
わたしたちにいつも信仰に生きる力をお与えください。聖母マリアの取り次ぎによって、今の悲しみから解放され、永遠の喜びを味わうことができますように。
わたしたちの主イエス・キリストによって。アーメン。

この祈りの時間にいただいた恵みを沈黙のうちに思いめぐらしましょう。

(沈黙)

 『神をたたえ』No.3 「マリアの心」① ②

これで今晩の「アレオパゴスの祈り」を終わります。



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