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私の薦めるこの一冊
カルメル会修道女の対話
- 著者:ジョルジュ・ベルナノス
- 訳者:柳 朋子
- 定価:本体1,400円+税
- B6判 上製 212ページ
- ISBN978-4-907991-21-0 C3016
- 発行:教友社
18世紀のフランス革命を背景に、カトリック教会は、支配者階級と共に歩んでいたと見なされ、種々の迫害が起こりました。多くの教会が破壊され、教会のミサ用祭具類も没収されたりしましたが、そんな中で起こったフランスのコンピェーニュの女子カルメル会修道女16人が断頭台に消えた事件を題材にしています。
この小説は、最初1931年にゲルトルート・フォン・ル・フォールによって書かれました。
それを、1948年、ベルナノスが戯曲化したものです。ベルナノスは、「田舎司祭の日記」で有名な作家ですから、読まれた方も多いと思います。
ベルナノスは、生来病弱だったそうですが、最晩年の作品が、本書です。
これは、後にフランシス・プーランクによって作曲され、1931年に初演されたそうです。
主人公は、侯爵の家柄に誕生したブランシュ。
ド・ラ・フォルス侯爵と身重の夫人は、皇太子とマリー・アントワネットとのご成婚の祝典に参加しようとしたとき、花火の爆発に驚いた群衆が暴徒と化し、大騒ぎになりました。幸い、侯爵と夫人は、その場から逃げ帰ることに成功しましたが、その数時間後、ブランシュを産み落とした母親である侯爵夫人は亡くなりました。
その影響からか、ブランシュは、非常に臆病で、いつも何かに恐怖を覚える子どもでしたが、カルメル会に入会を希望し、志願者として受け入れられました。
この戯曲のほとんどの場面は、修道院の中での会話で構成されています。
カルメル会修道女たちが逮捕され、全員に死刑の判決がくだされ、死刑場となった広場に修道女が、「サルヴェ・レジーナ」と「ヴェニ・クレアトール」を歌いながら断頭台に消えていくにつれ、歌声が細くなり、最後の声が消えていったとき、群衆の中にいた1人の女性が続きを歌い、自らも断頭台で死んでいきました。この女性こそ、死を恐れて修道院から逃げ出していたブランシュだったのです。
本書を読み、信仰と死について、また、人間の弱さと神の恵みの不思議さに心を打たれない人はいないでしょう。