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カテキズムを読もう

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第1回 序:カテキズムって何?


今日から、皆さんとご一緒に、『カトリック教会のカテキズム』を読んでまいりましょう。


言葉について

その前に、まず、「カテキズム」なんて言葉は初めて聞いたという方のために、「カテキズム」という言葉からご説明いたしましょう。「カテキズム」とは、一言でいうと、人びとがイエスを神の子として信じ、その生き方を学ぶために、教えを受けるその内容をさしています。ですから、『カトリック教会のカテキズム』というとき、カトリック教会の教えの内容と考えたらいいのではないでしょうか。

今回、同時にたびたび出る言葉として、「カテケージス」もあります。「カテケージス」は、「要理教育」と訳されていますが、これは児童、青年、大人への信仰教育一般を指しています。信者をキリスト教的生活に導くために、教会はむかしから、組織的、体系的に教えてきました。


『カトリック教会のカテキズム』誕生のドラマ

2002年7月に日本語で出版された『カトリック教会のカテキズム』が誕生するまでの、ドラマを追ってみましょう。

イエス・キリストが亡くなられてからすぐに、使徒たちは、イエス様は私たちにこんなことを伝えられたのだ、と話して宣教しました。その宣教によって、キリストを信じるグループもしだいに増えてきました。その最初から、洗礼を受けて信仰に入るためには、これだけの信仰内容を伝え、教えるという「教え」がありました。もちろん、今、私たちが手にしているような立派な1冊の本としての『カトリック教会のカテキズム』ではありませんでしたが……。初めは口伝だったものが、次第に「要理書」として、書かれるようになりました。その中でも有名なものは、聖アウグスチヌスが書いた『要理講話』です。洗礼志願者は、これらの要理を暗記していたようです。

キリスト教信仰が認められるようになり、時代を経るにしたがって、「カトリック教会の教え」は、幼児洗礼を受けた子どもたちが一定の年齢に達したときに、キリスト教信仰の基礎を教えるものになっていきました。

16世紀の宗教改革後、開催されたトリエント公会議は、カトリックの信仰を正しく教える「カテキズム」に重きをおいたものでした。この時代、聖ペトロ・カニジオや聖カロロ・ボロメオ、聖ロベルト・ベラルミノたちが、「カテキズム」を著し、これが全世界のカトリック教会に広まっていきました。第2バチカン公会議まで、日本のカトリック教会で使われていた『公教要理』も、これらの教理問答書をもとにしたものでした。

「近代の一大カテキズム」と呼ばれた第二バチカン公会議で、要理教育についての考え方も新たになりました。これまで要理教育は子どもと洗礼志願者だけを対象としていたのですが、大人も要理の勉強をしなければならないと考えられるようになりました。

第2バチカン公会議後、カテキズムの新しい動きが出てきました。
1971年 『カテケージス一般指針』の刊行。
1977年 カテケージスをテーマとしたシノドスの開催。
1979年 『要理教育に関する使徒的勧告』発表。

1985年は、第二バチカン公会議が閉会されて20年目に当たる年でした。「第2バチカン公会議の恵みと霊的実りを祝い、その教えと知識と実践を促進する」ために開催された臨時シノドスにおいて、出席した司教様方は、教皇ヨハネ・パウロ2世に、「信仰と道徳に関するカトリック教理を網羅するカテケージス、または概説書」の作成を希望しました。

この希望にこたえ、教皇ヨハネ・パウロ2世は、1986年に教皇庁教理省長官であるヨゼフ・ラッツィンガー枢機卿を責任者とする12名の枢機卿と司教を任命し、カテキズムの草案作成を委託しました。この委員会のもとに神学とカテケージスの専門家からなる7名の教区司教が、編纂委員会を形成しました。こうして作られた草案は、全世界の司教協議会などから意見を求め、さらに修正が加えられ、7年の歳月ののち、1992年にフランス語版の『カトリック教会のカテキズム』が発行されました。この年は、奇しくも第2バチカン公会議開催30周年に当たっていました。

このフランス語版『カトリック教会のカテキズム』は大歓迎で、受け入れられました。しかし、多くの修正案も寄せられ、80数カ所の訂正が加えられ、1997年にラテン語規範版として発行されました。これが、日本語に翻訳され、2002年7月31日にカトリック中央協議会から出版されました。


『カトリック教会のカテキズム』の対象

司教様方が第一の対象です。それは、司教様方は教会のカテケージスの責任者であり、信仰を導く務めがあるからです。カテキズムを教えている司祭、カテキスタも対象です。全ての信者にとっても、自分たちの信じている内容をしっかりと知ることは非常に有益なことです。ですから、全ての信者も対象としていると考えていいのではないでしょうか。


『カトリック教会のカテキズム』の特徴と使い方

日本語版に従って見ることにいたしましょう。
 -カトリックの信仰の全体を表現しているものなので、全体の中のこの部分を今は読ん
   でいるのだ、ということをおさえておくことが大切です。
 -読みやすく、一区切りずつで番号がふられています。
 -そのほとんどの番号の欄外に、数字が書かれています。これは、その番号の内容と関
   連がある番号です。ですから、1項目だけでなく、欄外の番号も開いてみることによ
   り、より広がりのある、より深い勉強ができるでしょう。
 -いくつかの項目のあとに、枠で囲んだ「要約」があります。これは、その中でも、暗
   記してほしほどの重要な基本的な信仰内容だということを示しています。
 -文章の中に、小さな活字で書かれている部分がありますが、それは、ふつうの大きさ
   の活字の文章と比べて重要ではない、ということではありません。教父の著作や典礼、
   聖人伝からとった引用などは、教理の説明を豊かなものにするものです。


内容の流れ

大きく4編に分かれています。
第1編-信仰宣言
  第1部-神の啓示と人間の答え
  第2部-使徒信条の内容
      ・全能の父、創造主である唯一の神
      ・御子である私たちの主、救い主イエス・キリスト
      ・聖霊
第2編-信仰の秘跡
  第1部-典礼
  第2部-7つの秘跡
第3編-信仰に基づく生活
  第1部-人間の究極目的である至福とそれに至る道と神のおきてと人間の自由な行動
  第2部-神の十戒と愛のおきての実践
第4編-信仰生活における祈り
  第1部-祈りの意義と重要性
  第2部-主の祈り

教皇ヨハネ・パウロ2世の次の言葉を読めば、以上の4編がどのように、自然に流れているかがおわかりいただけると思います。「この1編から4編は、密接に関連しあっています。信仰の神秘が信仰の対象であり(第1編)、それは典礼行為の中で祝われ、与えられ(第2編)、神の子のうちにあってその行動を導き支え(第3編)、『わたしたちの父よ』と呼ぶことができる恩典に根ざす祈りとなり、わたしたちの嘆願、賛美、取り次ぎの対象となる(第4編)のです」。


付録

聖ペトロ・カニジオ
 1521.5.8~1597.12.21
 ドイツの第2の使徒と呼ばれている。イエズス会司祭。
 トリエント公会議、ボローニャの公会議において、神学者として活躍。
 ドイツの教会刷新に努め、人びとを導いた。彼の著作『カトリック小教理問答』は有名である。


聖カロロ・ボロメオ
1538.10.2~1584.11.3
 イタリアの枢機卿。カトリック改革の指導者。
 トリエント公会議で活躍し、信仰問答の執筆により教義の統一をはかった。
 1610年列聖。祝日は11月4日。


聖ロベルト・ベラルミノ
 1542.10.4~1621.9.17
 イタリアの枢機卿。イエズス会司祭。
 カトリックの正統信仰についての多くの著作をし、教皇庁の重要な任に就いた。
 1925年列聖。祝日は5月13日。

 

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