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 海辺の家

2002年8月

Life as A House

海辺の家

  • 監督:アーウィン・ウィンクラー
  • 脚本:マーク・アンドラス
  • 出演:ケビン・クライン、クリスティン・スコット=トーマス、
       ヘイデン・クリステンセン

2001年 アメリカ映画 126分


   自分のものと誇れる“何か”を
       お前に残してやりたかった…。

  

新聞や雑誌で評判になっている「海辺の家」を見ました。あと3カ月の命と分かった父親が、離婚した妻と暮らしている息子と一緒に家を建てるという物語です。父と息子のドラマで、男の子にとっての父親という存在の大切さを、改めて考えさせられました。

物語

きれいな家が並ぶ住宅街の行き止まりに、建築会社に勤めているジョージ(ケビン・クライン)のあばらやがありました。ジョージの家は高い絶壁の上に建っていて、庭に出るとすばらしい海が広がっています。ジョージは独り暮らし。離婚した妻は、息子を連れて再婚し、新しい夫との間に幼い男の子が二人います。

自由気ままな生活をしているジョージは、近くに住む息子のサム(ヘイデン・クリステンセン)が荒れているので心配です。サムは16歳。新しい父親に心を開かず反抗的で、ドラッグに手を出し始めているようです。目のまわりに化粧をし、耳や唇にピアスをして、家中に鳴り響くほどガンガンと音楽をかけて自室に閉じこもっています。母親のロビン(クリスティン・スコット=トーマス)は、家族とコミュニケーションがとれないサムに、ほとほと手を焼いています。

ある日、ジョージは20年勤務した会社から、突然解雇されます。荷物をまとめ、怒ってオフィスを出たジョンは激しい痛みに襲われ、気を失ってしまいます。救急車で運ばれた病院で、末期ガンで手のほどこしようがなく、あと3カ月の命と知らされます。

残りの日々をどう過ごすか……。ジョンは、息子と一緒に家を建て直すことにしました。夏休みを友達と一緒に過ごすために出かけようとしていたサムを、ジョージは無理に連れ出し、家造りをはじめます。ガレージに住みながら、まず、家の解体作業から取りかかります。ガレージでの汚く不便な暮らしに、サムは我慢できません。音楽ばかりを聴いて、何もせず、ダラダラと一日を過ごしています。サムは、自分で自分をどうしていいいのかわからず、苦しんでいたのでした。

しかし、ジョージが一方的に語るジョージの父親との確執、サムと同じ年齢のころに考えていたことなどを聞くうちに、また隣に住む幼なじみだったアリッサと言葉を交わすうちに、サムのピアスは外れ、解体作業を手伝うようになります。

母親のロビンも、息子が心配で毎日ランチを運んでいるうちに、幼い子どもたちと一緒に、建築作業に参加し始めます。かつて二人で暮らしていたとき、夫婦として不足していたことなどが理解できるようになり、ジョージに再びひかれていきます。家を建てるということをとおして、3人は、素直に親子、夫婦として思いが通じ合い、失っていた「家族」を作り上げていきます。

サムは、父親の飲むモルヒネの量が多くなっているのに気づいていました。父親を気遣うサムに「私は、自分を“家”と思ってきた」と、一緒に家を建てることにした真意を語ります。

建築のために、近所の人々や元の同僚たちも手伝うようになりました。しかし、ジョージの痛みは限界に達し、病院に運ばれ、とうとう帰らぬ人となりました。

ジョージの亡き後、サムはたくさんの人の協力を得て、家を完成させることができました。ジョージが思いを込めてサムのために残してくれた家。しかし、サムは、ジョージがかつて交通事故で負傷させてしまった女の子に、この家を贈るのでした。

 

この映画は、残り少なくなった命をどう過ごすか……というジョージの視点からも見ることができますが、息子のサムから、また、元妻のロビンからも見ることができるでしょう。私は、サムの変化に心を向けて見ていました。

もう最期が近づいてきたと悟った父親は、息子にこういう人間になってほしいと語る言葉が原タイトルになっています。とても深い意味があり、それを次の世代に残せた父親、その言葉を父親からもらうことができた息子は 幸せだと思います。しかし、この「Life as A House」をタイトルにするには、どういう日本語がふさわしいのか、難しいところでしょう。日本では、やはり「海辺の家」がピッタリのタイトルだと思いました。

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