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 夏休みのレモネード

2003年9月

夏休みのレモネード

  • 監督・脚本:ピート・ジョーンズ
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  • 製作:ベン・アフレック、マット・デイモン、クリス・ムーア
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  • 出演:アディ・スタイン、マイク・ワインバーグ、
         アイダン・クイン、ケビン・ポラック、ポニー・ハント
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  • 音楽:ダニー・ラックス

2001年 アメリカ映画 94分

  • プロジェクト・グリーンライト第1回グランプリ受賞作品

「グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち」で共に脚本を書き上げたベン・アフレックとマット・デイモンの発案によって、2000年秋、インターネット上での脚本コンテスト“プロジェクト・グリーンライト”がはじまりました。「夏休みのレモネード」は、第1回のグランプリを受賞した脚本を映画化したものです。コンテストの応募数は、なんと1万2千本。その中から選ばれた脚本を書いた人は、1970年生まれのピート・ジョーンズです。

重い病気を患っている友達が天国へ行けるようにと奮闘する友情物語ですが、真正面からカトリックの神観や教えを提示しているので、信徒の方々はもちろん、キリスト教について勉強していたり興味があるという方々に、大いにお薦めします。とかく狭い理解になりがちな私と神、人々と神との関係を、「そうだよね、本質はこんな単純で、身近なことなんだよね」と、温かく教えてくれました。

物語

1976年の夏。シカゴの郊外に住む8歳のピート(アディ・スタイン)は8人兄弟。一番上のお兄ちゃんは、奨学金を得て大学に行きたい。だが、消防士のお父さん(アイダン・クイン)は、大学なんかに行かず公務員になれと言い、二人の仲は険悪な状態が続いている。一番下の妹は、まだ生まれたばかりの赤ちゃん。

ピートの一家はアイルランド系カトリックで、お母さん(ポニー・ハント)は毎日曜日、熱心に教会に子どもたちを連れて行くが、子どもたちがゾロゾロつらなって大変な騒ぎ。お酒が大好きなお父さんは、教会が嫌いなのか、ミサには行っていない。

ピートはミッションスクールの2年生。いつも担任教師のシスターに叱られてばかりいる。でも、ピートが悪い子だからではない、友達がちょっかいを出して、みつかるときはいつもピートなのだ。

学年の終わりに、シスターが言った。「天国に行くのは、夏休みの行いで決まります。」

「どうしたら、天国に行けるのだろう。」ピートの探求がはじまった。すぐ上の兄から、天国に行くために異教徒を改宗させた聖人の話を聞いた、ユダヤ教の人をカトリックに改宗させたらいいのだと思ったピートは、さっそく会堂を尋ねる。

会堂のラビ、ジェイコブセン(ケビン・ポラック)は、改宗させる人を見つけるために、会堂の前でレモネードを無料で配りたいというピートの願いを、快く聞き入れてくれた。しかし、何日たっても、だれもレモネードをもらいには来ない。

ある日、会堂の近くで消防車のサイレンが鳴った。ピートが自転車で駆けつけると、その家はラビの家だった。会堂から駆けつけたラビが叫んだ「2階には、息子のダニーと、世話をしているエスターがいる。助けてくれ!」

一人の消防士が炎の中に飛び込んみ、ダニーを救い出したが、火の勢いが強くなり、エスターを助けることはできなかった。その消防士は、お父さんだった。

ラビとお父さんの話から、ダニーは7歳で白血病であると知ったピートは、「ダニーを、天国へ行けるようにしてあげよう」と、さっそく教会に行き、神父さんにいろいろ質問して考えた。そして、10の課題を決めた。それを全部パスしたら聖体拝領ができ、聖体を拝領したら天国へ行けるのだ。ダニーも、その課題に挑戦することを、決意する。

2人は砂浜に行って、さっそく課題をはじめた。まずは、かけっこ、次に波に向かっての石投げ。ダニーは、次々と課題をこなしていったが、最後の遠泳は難しく、体の小さいダニーは、なかなか目的のブイまで泳ぎ切ることができない。しかし、ダニーの様態が、また悪くなって行った。

 

ピートのお父さんは、ラビの好意をなかなか受け入れることができなかったり、長男の大学行きに猛反対したりと、頑固なワンマンパパなのですが、ピートの行動を通して、次第に心のかたくなさが取れていきます。反対に、会堂のラビは、ピートを子ども扱いせず、一人の人間として対等に接してくれます。ラビも、ピートのおおらかな神観に触れ、教えられていきます。

キリスト教と、イエスがキリストだと認めていないユダヤ教は、敵対する関係ですが、子どもたちは、宗教の違い、文化・習慣の違いを、簡単に乗り越えてしまいます。

この映画がさらに、すばらしいのは、死と天国に対する考えです。一人息子を失って悲嘆にくれているラビに、ピートは言います。
 「天国は、だれでも迎えいれてくれる。だから、だれの名前を呼んで祈ってもいいんだ。」
ラビは、尋ねます。
 「私は、だれの名を呼べばいいのかね」
ニッコリほほえんだピートは、当然さ……という顔で答えます。
 「 ダニー」
ああ、なんという慰めのことばでしょう。

脚本で選ばれただけあって、大切なことを、選び抜かれた言葉によって伝えています。家族をテーマに描いているピート・ジョーンズって、どんな人なのか、興味がわいてきました。

「神はどういうお方か」という視点から、もう一度じっくり見たい映画です。主役のピートを演じるアディ・スタインのお父さんは、実際にラビだそうです。

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