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 キリクと魔女

2003年8月

KIRIKOU

キリクと魔女

  • 監督・原作・脚本:ミッシェル・オスロ
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  • 日本語版の翻訳・演出:高畑勲
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  • 声の出演:浅野温子、神木隆之介
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  • 音楽:ユッスー・ンドゥール

1998年 フランス映画 71分

  • アヌシー国際アニメーション映画祭グランプリ
  • シカゴ国際児童映画祭
          長編劇場・ビデオアニメーション部門成人審査員賞・児童審査員賞
  • モントリオール国際児童映画祭長編部門審査員特別賞

「キリクと魔女」は、アフリカを舞台にしたアニメで、フランスでで大ヒットした作品です。スタジオ・ジブリの高畑勲監督が、日本語版の翻訳&演出にあたっています。小さな、小さな男の子が、とびぬけた勇気と知恵で、魔女に打ち勝ち、村に平和をもたらすというお話です。

かわいい動物や美しい植物、呪い鬼たちが出てくるので、子どもたちも笑い声をあげて楽しめるアニメですが、大人が見ると、笑いの奥にある、人間の真理を表現した深~いメッセージが見えてきます。それを理解して生きることができれば、神が創造された人間のすばらしさを生きることができる世界が実現する……と思います。

喜びをすぐ歌にし、子どもから老人までが一緒に踊りだすアフリカの人々の心の深さ、力強さ、一致する心を上手に描いています。

アフリカの人々の歌声、キリクのお母さんの声の調子は、知恵者であるアフリカを感じさせます。

物語

キリク(声:神木隆之介)は、お母さんのお腹の中から、自分の意志によって生まれ出てきた、とっても小さな男の子です。キリクには、お父さんがいません。キリクが生まれた村には、男たちがいません。男たちはみな、魔女のカラバ(声:浅野温子)に食べられてしまったのです。食べられた男を取り戻そうとカラバのもとに向かった者たちも、次から次に食べられてしまいました。キリクのお父さんも食べられてしまいました。

カラバは背が高く、勇敢で美しい女性です。宝石をたくさん身につけて、権力を振るっています。

キリクのお兄さんが、今、カラバのもとに向かおうとしています。心配なキリクは、お兄さんの帽子の中に隠れて、一緒にカラバのもとへ向かいました。足が早く、頭の回転がはやいキリクのお陰で、お兄さんはカラバに食べられずに、村に戻ることができました。しかし、カラバを倒すことはできませんでした。

怒ったカラバは、村の女たちが持っている金の飾り物を、すべて自分に差し出すように命じました。こっそり隠しておいた人は、カラバを護る呪い鬼に見つかり、家を焼かれてしまいました。

僕

男たちの次に狙われたのは、子どもたちです。水浴びをしたり、森で遊んでいるところを、カラバの呪い鬼たちにさらわれそうになりまが、キリクの知恵と勇気によって助け出されます。

村人たちは、キリクをたたえて歌い踊ります。

村の大切な泉がかれたのも、カラバのせいだと知ったキリクは、小さな体で地中にある水源に向かいます。そこには、水を飲み干した怪物が、巨大な体を横たえていました。この怪物の腹に穴を開ければ、村に水を戻すことができます。しかし、穴をあける者は、水に流されおぼれてしまいます。

泉に水が戻ってきました。またまた、村人をキリクが助けてくれました。しかし、水の中から出てきたキリクはグッタリしています。お母さんは、キリクを抱き上げ、やさしく背中を撫でました。キリクは息を吹き返しました。

 「母さん、どうして、魔女のカラバは意地悪なの?」
 キリクは、村人たちを苦しめるカラバの心がわかりません。ずーっと抱いている疑問です。
 「それは、魔女だからさ」


お母さんは、カラバを倒すためには、お山の賢者の知恵を借りることが必要だと教えてくれました。その人はキリクのおじいさんでした。しかし、お山の賢者の住んでいる山は、魔女のカラバの屋敷の向こう側にあります。カラバの家のてっぺんには屋根鬼が立っていて、近づく者を見張っていました。

 「ぼく、おじいさんのところへ行ってくる!」
 「キリク、これを持っておいき!」


お母さんは、お父さんの使っていたナイフを渡してくれました。

キリクは屋根鬼の目から身を隠すため、カラバの屋敷の下を掘って行くことにしました。お父さんのナイフを使って、地下を掘り進むキリク。しかし、地下の穴の中には、いろいろな危険が待ち受けていました。キリクは、無事おじいさんのもとにたどり着けるでしょうか。

 

キリクがお山の賢者に出会ってから後の部分は、大人には、自己認識や人間関係について、身につまされるものがあります。

>男を食べてしまうというカラバの姿は、実は、村人たちが勝手に描いた姿でした。カラバが村人たちをいじめるのは、背中に深くささっている大きなトゲのせいです。このトゲが、カラバに魔女の力を与えていたのです。しかし、自分の力でトゲを抜き取ることはできません。背中ですから、手が届かないのです。深く入ったトゲは、だれかに取ってもらわなくてはいけません。抜き取るとき、すごい痛みを伴います。トゲが刺さったときの痛みを知っているカラバには、それは耐えられないものでした。

自分を知るということは、つらいものがあります。また、他者と関わっていくということも、他者に背中を見せる、つまり弱い部分も見せるということで、プライドがゆるさない……ということもあるでしょう。自分を受け入れ、他者にも、虚勢を張らないありのままの自分を見せることによって、人間の関係は成長していくのです。それを拒否すれば、カラバのように、いつも他者にたいして挑戦的でなくてはいけません。それは本人にとっても寂しいことであり、そこに幸せはありません。

カラバは、小さなキリクの勇気によって、やさしい人間に戻ることができました。そして、村にも平和が戻ってきます。最後には、とってもハッピーな結末が用意されています。

アフリカを舞台にした色鮮やかなアニメを、どうぞご覧ください。

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