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 ウィニング・パス

2004年2月

Winning Pass

ウィニング・パス

  • 監督:中田新一
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  • 脚本:矢城潤一、原田哲平
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  • 音楽:千住明
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  • 出演:松山ケンイチ、佐藤めぐみ、角替和枝、矢崎滋

2003年 日本映画 1時間48分

  • 第16回東京国際映画祭ニッポン・シネマ・フォーラム部門

何かに一生懸命に打ち込んでいる姿に対して涙腺が弱いのですが、この映画の後半は、涙、涙になってしまいました。「挑戦」することの大切さを知った高校生の男の子が、周囲の人の愛の中で、自暴自棄から立ち直っていく姿を描いています。

物語

北九州市にある高校の体育館で、バスケットボールの試合が行われている。チームで活躍する健太(松山ケンイチ)は17歳。仲間のパスの合図を無視し、監督の指示にも逆らい、反抗的な態度から、その場で部活を辞めてしまう。そんな健太を、ガールフレンドの香織(佐藤めぐみ)は、やさしく見守ってくれている。香織の夢は、健太と一緒に東京の大学へ行くことだった。

家に帰っても、健太は父親に反抗的な態度をとってしまう。小さな町工場を経営している父親(矢崎滋)は、母親(角替和枝)とともに一日中働いて、健太と妹の舞を育ててきた。

ある晩、将来は健太に工場を継いで欲しいと願っている父親と口論になり、父親を投げ飛ばしてしまった健太は、大好きなバイクに乗って雨の中に飛び出した。怒りに任せてハンドルを握っていた健太は、バックしてきたトラックを避けることができず転倒し、ガードレールに強く頭を打ってしまう。

命は取り留めたものの脊髄を傷つけた健太は、下半身不随になってしまう。現実を受け入れることができない健太は、見舞いにきた親友や香織にもつらくあたり追い返してしまう。

リハビリがはじまり、車椅子にのって自力で移動できるようにはなったが、心は晴れない。「自分はもう何の役にも立てない」と思った健太は、死を考え、車椅子で階段から落ちようとするが、危機一髪のところで父親に助けられる。

ある日、リハビリの帰り、ボールの音を聞きつけ、体育館をのぞいてみる。そこでは、車椅子のバスケットボールの試合が行われていた。車椅子を上手に操ってパスをしたりシュートをしたりする姿に、健太は見入ってしまう。同じように車椅子に乗って試合を見ていた年上の誠は、「退院したら、車椅子バスケのチームに入るんだ」と明るい。

健太は退院し、親友の助けを受けながら再び学校に通う。学校も家も、健太のためにバリヤフリーに改造してあった。「今までと同じようにつきあえるよね」という香織に、健太は「無理だ」と応える。

誠の誘いで、健太も車椅子バスケのチームに入った。ある日、北九州で行われた世界大会「ゴールドカップ」の試合を見に行った健太は、そこで活躍する京谷選手の活躍に驚く。誠から、選手には障害の程度によって点数がついており、京谷選手は健太と同じ1点選手だと聞く。1点選手としての役割があることを知った健太は、自分の活躍の場を見つけ、意欲が出る。

高校では、かつて所属していたバスケのチーム仲間に頼んで、体育館の場所をもらい練習できるようになった。健太は、めきめきと実力をつけていき、車椅子バスケチームの先輩からも頼りにされる存在になっていく。自分に自信を持てた健太は、香織にも自分の気持ちを素直に話せるようになっていた。

全日本選手権の九州予選に向けての猛練習がはじまった。しかし、試合に出るには、特製の車椅子が必要で、それはとても高価なものだった。買えないのなら、作ってみよう。両親は、試行錯誤をしながら、健太のサイズに合わせたバスケ用の車椅子を作ることにする。もちろん健太には内緒だ。健太は香織に、試合を見に来てほしいと告げるが、その日は、入試のための面接の日で無理だと断られてしまう。

いよいよ予選大会がはじまった。健太のチームは順調に勝ち進んでいき、決勝戦となった。会場には、家族や学校の先生、友達が応援に駆けつけていたが、健太の出番はまだなかった。

相手は、京谷選手の属するチームだ。相手チームにリードされている最終ピリオドで、健太のチームの一人がファールで退場となった。監督は、健太の名を呼んだ。みなの声援が高まる中、「健太~!」という香織の声が聞こえた。自転車を走らせて駆けつけた香織の姿に力を得た健太は、残り時間5秒という時点でボールを放つ。

 

前向きに生きるのも、自暴自棄になって暗くなり、自分を卑下して生きるのも、自分次第です。しかし、人間は弱い存在ですから、周囲の人の励ましたが必要です。変わらずに包んでくれる愛が必要です。その温かい空気の中で、人は育っていくことができるのです。

映画の中の人々が熱く生きて輝いている姿に引き込まれ、私も熱くなって応援していました。映画を見終わって街に出たとき、なんとなく物寂しさを感じました。映画の中で、主人公はもちろん、ガールフレンド、親友、家族などが一体となって応援しています。その姿に感動しながら、温度が低い自分を見たからです。「私が一生懸命になっているのは何だろう、どんな時だろう」

「挑戦」は若者の特権ですが、人生、いくつになっても挑戦し、熱くなる心を持っていていいんだと思いました。「よし、私も熱くなろう!」と思いました。

実際に活躍している車椅子バスケットボールチームの方々が出演していて、迫力ある試合が映っています。

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