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 ニワトリはハダシだ

2004年11月

ニワトリはハダシだ

  • 監督:森崎 東
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  • 脚本:近藤昭二、森崎 東
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  • 音楽:宇崎竜童、太田恵資、吉見征樹
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  • 出演:浜上竜也、守山玲愛、原田芳雄、倍賞美津子、
          肘井美佳、塩見三省、加瀬亮、李麗仙

2003年 日本映画 114分

  • 第4回東京フォルメックス特別招待作品
  • 第54回ベルリン映画祭 フォーラム部門招待作品

重度の知的障害者の少年・サムとその家族、サムが通う養護学校の熱心な先生と彼女の両親、検察庁の収賄事件を追う刑事と暴力団、サムの住む舞鶴に暮らす在日朝鮮人や滞日外国人たち……など、いろいろな人々がからみあった出来事が、森崎監督の力によって見事に一つにまとまりました。

「ニワトリはハダシだ」とは、「わかりきったことのたとえ」に使う言葉だそうですが、庶民的な感情を表現する言葉として地域によっていろいろなニュアンスで用いられているとか。映画の中でも、「ニワトリはハダシだ!」は、サムの父親である「チチ」から発せられ、在日韓国人のハハへ「ニワトリはハダシだ!」と言って結婚しました。「人間、みな同じだ!」とか、「たいしたことはない。くよくよしないで、元気で行こう!」と、活力を与えてくれる言葉のようにも感じました。笑いあり、涙あり、考えさせられる部分ありの映画です。

物語

サム(勇・浜上竜也)は15歳。重度の知的障害を持っており、養護学校に通っている。妹のチャル(千春・守山玲愛)とは大の仲良しだ。チチの守(原田芳雄)は潜水夫で、サムの将来を心配し、少しずつ潜水の仕事をサムに覚えさせようとしている。ハハ・チンジャ(倍賞美津子)は、サムに対する教育についてチチと意見があわず、チャルを連れて家を出て、近くに別居している。

チンジャの母ハルメ(李麗仙)は、戦後、朝鮮に帰還するために乗った浮島丸が佐渡賀沖で爆破され沈没したとき、舞鶴の人々に助けられた一人だ。サムの担任の若い桜井直子先生(肘井美佳)は、子どもたちとかかわろうと熱心だ。スクールバスの停車場で、ドジな踊りを子どもたちに見せ、子どもたちの笑顔を引き出そうとしている。

チチとサムが銭湯から帰ってくると、ハハがバースデーケーキを持ってチャルとやってきた。サムの誕生日なのだ。久しぶりに家族4人がそろってはしゃいでいたサムとチャルだが、チチとハハはまた口論となり、せっかくのバースデーケーキも台無しになってしまう。

ニワトリはハダシだ
サムとハハ

ある日、舞鶴の町に、2人の刑事(塩見三省、加瀬亮)がやってきた。検察庁の収賄事件の捜査のためだった。暴力団の組長が検察庁の検事に賄賂としてベンツを贈ったが、ベンツは盗まれた。ベンツの中には、汚職事件の証拠となる裏帳簿がかくされていたから大変。なんとかその帳簿を見つけだす必要がある。

サムは、中古車売場に遊びに行って、車の形やナンバープレートを覚えるのが大好きだった。サムは、ベンツの車の中にある裏帳簿を偶然に見つけ、そこに書かれている数字を目にした。サムは、一度見た数字は記憶してしまうという能力を持っていた。収賄事件をもみ消そうとする警察と暴力団は、サムが数字を記憶していることを知り追いかける。そして、サムは暴力団に誘拐されてしまう。

チチとハハ、また直子先生は若い刑事と共に、サムを助けようと動く。ベンツを探している暴力団は、ベンツが置いてあったという造船所跡地を起重機で荒らしはじめる。そこは、チンジャが刃物研ぎをしながらお金をため、養護学校を卒業した子どもたちのために授産施設を作ろうとしていた場所だった。

ニワトリはハダシだ
直子先生とチチ

 

知的障害のある子どもたちとかかわる家族や地域の人々、検察庁の収賄事件を組織ぐるみでもみけそうとする警察、その中で真摯に事件を追いつめていく若い刑事、事件のために家を顧みなかった父親に反発する娘、妻の思いを知りながら優しい言葉をかけてあげることなく死なせてしまった夫……、などなど、人々のさまざまな思いがあちらこちらに込められている映画です。浮島丸が沈没したとき、海に浮かんで助けを求めていた人々を舞鶴の人たちは船を出して助けたといいます。このような歴史のある町で、またサムが誘拐されるという事件をとおして、サムを育てるために自分一人で頑張っていたチチは、次第に心を開いていきます。お互いを思いながらもうまく表現できない人間の心を、やさしく描いた作品をどうぞご覧ください。

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