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 家の鍵

2006年3月

LE CHIAVI DI CASA

家の鍵

  • 監督・脚本:ジャニオ・アメリオ
  • 出演:キム・ロッシ・スチュアート、
         シャーロット・ランブリング、
         アンドレア・ロッシ
  • 配給:ザジフィルムズ

2004年 イタリア映画 1時間51分

  • 第61回ヴェネチア国際映画祭正式出品作品
  • 第77回アカデミー賞外国映画賞イタリア代表作品
  • イタリア映画祭2005オープニング作品

物語

ジョバニ(キム・ロッシ・スチュアート)は若いとき、恋人を出産で失い、そのショックから、生まれて来た子どもから逃げ去ってしまった。生まれた息子は、母親のお腹から出すときに使った鉗子のために、障がいを持っていた。

それから15年たったある日、息子パオロ(アンドレア・ロッシ)を育ててくれていた伯父から、突然息子を突きつけられる。「父親に会えば、奇跡がおきるかもしれない」ということばで、ジョバニはパオロをミュンヘンからベルリンのリハビリ施設に送ることになる。

ベルリンに向かう列車の中で、ジョバニははじめて我が子パオロと出会う。障がいのある息子と、どうつきあっていいかとまどうジョバニ。パオロは明るくけなげに振る舞っているが、他人の家で暮らしているという気遣いと、甘える人がいないという寂しさを持っていた。

パオロがリハビリ施設で検査を受けている間、待っていたジョバニは、重い障がいのある娘の世話をしている母ニコール(シャーロット・ランブリング)と出会う。「子どもたちにとって問題なのは、病気じゃなくて親よ」というニコールのことばを聞いたジョバニは、パオロの文通相手が住んでいるノルウェイへの旅を思いつく。ぎこちない二人の関係が、旅を続けていくうちに変わっていく。

家の鍵


 

「家の鍵」は、アメリオ監督自身の体験から生まれた作品です。アメリオ監督は、父親が19歳、母親が16歳のときに生まれましたが、父親はすぐアルゼンチンへ移住。父とはじめて会ったのは、アメリオ監督が16歳になってからのことでした。アメリオ監督は次のように語っています。

「彼の抱える問題や貧困、両親の若さといったものが理解できるようになったのは、ずっとあとになってからです。私は父親に対してたいへん悪いことをしたと思うようになりました。この体験により、私はよりよい息子になることはできなかったけれど、よりよい父親にはなれたと思っています。映画の最後のシーンを息子と一緒に見て、私は泣きました。この映画のなかで、私がいちばん好きな場面です。」

パオロは、父親への思いをきちんと表現できるしっかりとした子に育っていました。障がいを持って他人の家で生きるということは、大変な苦労があったことでしょう。しかし、そこで生きるしかないという人生の厳しさをパオロは知っていて受け入れて生きていました。

自分を捨て、15年たって突然現れた父親を、そう簡単には信頼できないでしょう。自分のもとから去っていった父であることを知っていたパオロは、心を開いて身をゆだねていいのかどうか、この旅で試していたのかもしれません。甘えたい気持と、また捨てられるかもしれないとう気持の間で揺れていたことでしょう。それらを客観的に見ながら、ジョバニと関わっていきます。

息子との旅を引き受けたジョバニは、今度は逃げ出しません。15年間の空白を取り戻すように、徹底的にパオロ中心に過ごします。今のジョバニには、ハンディキャップを持った息子を受け入れる責任感と、包み込む包容力がありました。それは、自分の人生に正面から向き合い、自分を受け入れる作業でもありました。

家の鍵

パオロを見つめるジョバニは、息子をいとおしく思う母親のようなやさしさがあふれていました。そんなジョバニのまなざしがすてきでした。また、パオロの、自分を捨てた父親を受け入れていくやさしさにも、心が打たれました。ジョバニが「一緒に暮らそう」と言ったとき、パオロは「鍵をもらえる?」と尋ねます。家の鍵を持っているということは、パオロの誇りでした。親子の絆のすばらしさを感じる作品でした。

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