home>シスターのお薦め>お薦めシネマ>私の小さなピアニスト

お薦めシネマ

バックナンバー

 私の小さなピアニスト

2007年9月

For Horowitz

私の小さなピアニスト

  • 監督:クォン・ヒョンジン
  • 脚本:キム・ミンスク
  • 音楽監督:イ・ビョンウ
  • 出演:オム・ジョンファ、シン・ウィジェ、パク・ヨンウ
  • 配給:シネカノン

2006年 韓国映画 108分


ソウル郊外のピザ屋の2階に、若くて美しいピアノ教師・ジス(オム・キョンファ)が引っ越してきた。ピアノの巨匠ウラディミール・ホロビッツをこよなく愛するジスは、音楽学校時代の仲間が、華々しく世に名を出していくのを祝いながら、挫折感を味わっていた。自分が世に出ないのは、海外留学するだけの財力が家庭になかったからだと思っている。

ジスは、ピアノ教室の生徒募集のチラシを貼りに近所に出かけたが、数日前にジスが貼っていったチラシが全部はがされていることに愕然とする。犯人は、貧しい人々の地域で祖母と二人暮らしをしているキョンミン(シン・ウィジェ)だった。キョンミンは、4歳のときに交通事故で母親を亡くし、そのトラウマのためか、口をきかず周囲となじめないでいた。祖母だけがキョンミンの味方だった。

キョンミンは、ジスが気になるようだ。ジスというより、ピアノかもしれない。キョンミンがピアノに興味を示していることを察したジスは、キョンミンを鍵盤に向かわせてみる。絶対音感の持ち主であったキョンミンは、ピアノを習い始めると、ジスが教えることをどんどん吸収していった。キョンミンの才能に驚いたジスは、自分が天才ピアニストを発掘して育てた有能な先生という名を得ることで学友を見返そうと思い、キョンミンをコンクールに出そうと特訓を始める。キョンミンには、作曲の才能もあった。

ジスの大きな期待を背負ってコンクールのステージに上ったキョンミンだったが、自分を照らし出したスッポットライトに驚き、パニックを起こしてしまう。自分をかばって死んだ母親の事故のときの、車のヘッドライトがよみがえったのだ。結局、ピアノの前に座ることはできず、コンクールを棄権してしまう。裏切られた思いのジスは失望し、二度と教室に来ないようにと追い出してしまう。

しかし、ジスにとって、キョンミンのいない生活は、耐え難いものになっていた。再び練習を始めたキョンミンのピアノ演奏は、専門家にも才能を認めさせるほどになっていった。ある日、キョンミンの演奏を聴いたコンサートの審査員だった学友から「彼には、もっと優秀な教師が必要よ」と言われ、ジスはプライドを傷つけられる。しかし、「彼を自分の道具にするな」という兄の言葉に、ジスはキョンミンの将来に目を向けるようになっていく。

 

大人たちの出来事で心を揺さぶられるキョンミンの気持ちが、見ていて辛くなります。そのキョンミンを演じるシン・ウィジェは、実際にコンクールで一位をとったことのある才能の持ち主です。大人顔負けの堂々とした演技で、心の屈折している少年を見事に演じ、監督をうならせました。成長したキョンミンを演じるのは、韓国を代表する若手ピアニストのジュリアス=ジョンウォン・キムです。二人の演奏する名曲とともに、心温まる映画をご覧ください。


▲ページのトップへ