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 白い馬の季節

2007年10月

季風中的馬

白い馬の季節

  • 監督・脚本:ニンツァイ(寧才)
  • 出演:ニンツァイ(寧才)、ナーレンホア(娜仁花)、
          チャン・ランティエン(常蘭天)
  • 楽:オラーントグ(烏蘭托)
  • 配給:ワコー、フォーカスピクチャーズ

2005年 中国映画(内モンゴル自治区) 105分

  • 2005年第25回ハワイ国際映画祭NETPAC Award(最優秀アジア賞)受賞
  • 2005年第26回ダーバン国際映画祭最優秀撮影賞(ジョン・リン)受賞
  • 2006年東京国際女性映画祭参加作品

環境の変化と人々の生活の変化の中で、伝統的な生活を営むことができなくなったとき、人はどうするのでしょう。人間は長い歴史の中で、文明の進歩とともに、生活形態を変えてきました。モンゴルの草原で遊牧の生活をしていた一家が、砂漠化が進む中で羊を飼っていくことができなくなり、生活が困窮していきます。子どもの将来のこと、自分たち家族のこれからの生活を考えると、都市に出て行かざるを得ないという結論に達します。しかし、その選択でいいのだろうか……。一家族だけの問題だろうか……。自分だったらどの道を選択するか……。いろいろと考えされられる映画です。

物語

遊牧民のウルゲン(ニンツァイ)は、しっかり者の妻インジドマ(ナーレンホア)と息子フフーと、ゲル(中国語ではパオ)に住み、羊を飼って生活している。しかし、ここ数年干ばつが続き、羊のためのよい牧草を得ることができない。ウルゲンと同じ遊牧の生活をしている人々は次々と羊を手放し、草原を離れて町へ移って行った。広い草原の中には、ウルゲンのゲルだけがポツンと残り強風にさらされている。

ウルゲンの羊が毎日のように死んでいく。お金がないのでフフーの学費を払うことができないと嘆く妻のインジドマは、年老いた白馬を売って町で暮らそうとウルゲンに迫るが、なかなか決心ができないでいた。ウルゲンがあてにしていた牧草地も、自然保護区に指定され鉄条網が張られて入ることができなくなっていた。「牧草地がなくなったら、自分たちはどうやって生きるのか」と村長にくいつくが、「法に逆らうことはできない」と、草原保護と放牧禁止を告げられる。

決断できない夫に頼っていられないインジドマは、羊の革を買ってくれる革商人トゴーが言っていた「羊を売るより自家製のヨーグルトを売ったほうがお金になる」という言葉を信じて、幹線道路の道端でヨーグルトを売り始める。日銭が稼げると思っていたが、町へ向かうトラックはなかなか止まってくれない。ある日、漢族の男性ツァオ(チャン・ランティエン)がトラックを止め、ヨーグルトを買ってくれた。値段のつけ方がわからないインジドマは、「値段は決めてください」と言うありさまだった。それからツァオはトラックを止めては、インジドマのヨーグルトを買ってくれた。ツァオは、町の騒々しさをインジドマに語った。

ウルゲンは、町で絵描きをして成功した幼なじみの画家を訪ねて借金を頼むが、相手にしてもらえない。

町で料理人の口を見つけたインジドマは、息子と二人で町に出ることを夫に告げる。ウルゲンは「草原で生まれた者は、草原でしか生きられない」と応えるしかできなかった。

 

家族の生活をこれからどうしていくのか、窮地に立たされているにもかかわらず決断ができない夫を叱咤し、なんとかして生活費を作りだそう、子どものために新しい生活に踏み切ろうとするイジドマの姿が印象的です。民族の誇りを保つきりりとした女性の美しさ、子どもを守る母の強さが潔く、魅力的です。

中央アジアの砂漠化は、美しいモンゴルの壮大な草原も影響を受けています。これも地球温暖化の影響でしょうか。雨が少なくなり、干ばつが続き、強風で、黄砂の飛来は日本でも年々多くなっています。環境破壊が進む中、中国政府はやっと生態環境保護に取り組み始めました。日中協力で共同植樹プロジェクトも行われています。大切な地球の生活生態系を取りもどし、守っていくことができるよう、世界規模で、一人ひとりが協力していく時代になってきました。ニンツァイ監督は、ウルゲンとインジドマ夫婦の葛藤をとおして、ともに地球に住む者にしっかりと見つめ考えるよう呼びかけています。

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