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 風の馬

2009年3月

WINDHORSE

風の馬

  • 監督・脚本・編集:ポール・ワーグナー
  • 共同監督・共同脚本:テュプテン・ツェリン
  • 共同脚本:ジュリア・エリオット
  • 出演:ダドゥン、ジャンパ・ケルサン、テイジェ・シルバーマン
  • 配給:アップリンク

1998年 アメリカ映画 97分

  • 1998年サンタ・バーバラ映画祭 最優秀長編映画部門・最優秀監督部門審査員賞
  • フロリダ映画祭観客賞
  • ワシントンDC国際映画祭観客賞
 

中国政府の圧政に対してチベットの人々が蜂起し、ダライ・ラマがインドへ亡命してから50年を迎えた2009年、チベット僧パルデン・ギャツォを追ったドキュメンタリー「雪の下の炎」とともに公開される作品です。

「風の馬」は、チベットで起きた実話をもとに、中国政権に立ち向かうチベットの3人の若者を描いたもので、厳しい監視の目をくぐり抜け、チベットのラサで撮影されました。町にはいたるところに監視カメラがあり、私服・制服警官が配備されており、見つかれば、フィルム没収と投獄が待っていました。そのような危険な状況の中での撮影は、よりリアルにチベットの実態を世界に知らせる作品となり、数々の映画賞を受賞しました。

 

物語

幼い子どもたちが、仲良く縄跳びをして遊んでいる。兄のドルジェと妹のドルカ、そして従姉妹のペマ。彼らの将来には、何の不安もないかのようだった。そして、1998年、チベットの首都・ラサ。歌手のドルカ(ダドゥン)は、中国人の恋人の協力を得ながら、中国デビューの道を探していた。兄のドルジェ(ジャンパ・ケルサン)は、仕事もなく酒におぼれる毎日だった。従姉妹のペマとは、大きくなってからもう何年も合っていない。

ぺマは、尼僧となり、多くの仲間とともに祈りの日々を送っていた。しかし、ある日突然、ダライ・ラマの写真を飾ってはいけないし彼の名を口にしてもいけないという中国当局からの厳しい通達を院長から聞く。ダライ・ラマは、反革命主義者とされたのだ。町の通りには監視カメラが設置され、人々の行動が見張られた。友人と町へ出かけたペマは、怒りを爆発させ「チベットに独立を!!」と叫び捕らえられる。

ペマは不当な拷問を受け、瀕死の状態でドルジェとドルカの家に引き取られる。変わり果てた姿のペマから話を聞き、兄妹はチベットの置かれている状況を意識しはじめる。「弾圧のために戦うんだ!」ドルジェは仲間とともに叫ぶ。チベットを旅していたアメリカ人のエミー(テイジェ・シルバーマン)と知り合いになったドルジェは、彼女のビデオカメラでペマを映し、それを国外のメディアに取り上げてもらう計画を立てる。「どうしても伝えたいことがある」と息も絶え絶えに語るペマ。撮影を終え、ペマは亡くなる。しかし、彼らの行動は当局に知られるところとなり、エミーは出国のとき、ビデオカメラを没収されてしまう。

警察に追われる身となった一家は、ドルカの恋人の助けを得て逃亡する。国境のヒマラヤ山脈を越えるとき、ドルカたちは、人々の自由への祈りや希望が書かれたたくさんの「風の馬(ルンタ)」を飛ばす。

 

歌手のドルカを演じたダドゥンの人生は、まさにドルカと同じでした。チベットの尼僧ペマを演じた女優は、実名をあかすことができない状況です。スタッフもキャストも、また製作のために協力したチベットの人々も、いのちを賭けての作品でした。

映画は10年前のチベットの様子を背景にしていますが、この状況は今も変わっていません。つい数日前も、チベット僧たちのデモ行進が行われ、中国側と衝突しました。チベットの人々の願いが、この映画をとおして世界中の人々に伝わりますように。そして、中国政府の圧政からの解放が、チベットに一日も早く訪れますように。


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