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 セラフィーヌの庭

2010年7月

Seraphine

セラフィーヌの庭

  • 監督・脚本:マルタン・プロヴォスト
  • 脚本:マルク・アブデルヌール
  • 音楽:マイケル・ガラッソ
  • 出演:ヨランド・モロー 、ウルリッヒ・トゥクール、
        アンヌ・ベネント 、ジュヌヴィエーヴ・ムニシュ
  • 配給:アルシネテラン
 

2008年 フランス・ベルギー・ドイツ映画 126分

  • 2009年フランス・セザール賞7部門受賞
      <作品賞、主演女優賞、脚本賞、作曲賞、美術賞、衣装デザイン賞>
  • 2010年全米批評家映画協会 主演女優賞受賞
  • 2009年カルフォルニア・ニューポートビーチ映画賞5部門受賞
      <作品賞、監督賞、脚本賞、主演女優賞、主演男優賞>
  • 2009年ロサンゼルス批評家協会賞 主演女優賞
  • 2008年エジプト・カイロ国際映画祭 主演女優賞受賞
  • 他、多数受賞
 

絵画の歴史の中で「素朴派」という画家たちがいることをご存じでしょうか?

「セラフィーヌの庭」の主人公セラフィーヌ・ルイ(1864~1942)が、まさに「素朴派」といわれる画家です。セラフィーヌを見いだしたドイツ人の画商ヴィルヘルム・ウーデは、アンリ・ルソーを見いだし、ピカソの才能を評価した人物でした。彼は、家政婦として働いているセラフィーヌの画と出会い、彼女の才能に驚きます。セラフィーヌは、働いたお金をすべて絵の具や画材を買うために使いますが、それでも貧しい生活では十分に買うことができず、花を摘んだり、泥をこねたりしながら絵の具を作り、それも影響して、彼女しか描けない世界を作り出していました。

しかし、二人は時代の動きに流され、思わぬ方向へと人生を進めることになります。

 

物語

 

パリ郊外のサンリスで家政婦として働いているセラフィーヌは、仕事が終わって家に帰ると部屋にこもり、ひたすら絵を描いていた。絵を描くために働いているといったほうがよい。しかし数時間働くだけでは、絵の具も満足に買うことができず、野原の草や泥から絵の具を作っていた。

 

セラフィーヌの庭
(C) TS Productions / France 3 Cinema / Climax Films / RTBF 2008

ある日、セラフィーヌが掃除をしている家に、ドイツ人の画商・ヴィルヘルム・ウーデが、妹のアンヌ・マリーと引っ越してきた。ある夜、大家のデュフォ夫人が芸術愛好家と食事会を開き、画商のウーデを招いた。つまらない会話に席を立とうしたウーデは、家具の奥に置かれた絵を見て驚いた。それは、デュフォ夫人がつまらない絵とつぶやいたセラフィーヌが描いた作品だった。

アンリ・ルソーを見いだして展示会を開こうとしていたウーデは、今まで見たことのない世界を持っているセラフィーヌに描くことを進めた。ウーデの言葉を最初は信じていなかったセラフィーヌだが、ウーデの援助を受け入れて絵の具や画材を入手できるようになり、次々と作品を生み出していった。セラフィーヌは、ウーデに絵を見てもらうのを楽しみにするようになった。

 

セラフィーヌの庭
(C) TS Productions / France 3 Cinema / Climax Films / RTBF 2008

しかし、第一次世界大戦がはじまって敵国人となったウーデは、フランスから逃れるためサンリスを後にした。

こうして13年の時が流れた。元の貧しい生活に戻ったセラフィーヌは、相変わらず家政婦をしながら、部屋に閉じこもり食べることも忘れて絵を描いていた。彼女を探していたウーデは、市役所で展覧会が開かれることを知る。「きっと、セラフィーヌの絵が展示されるにちがいない」と展示会に足を運ぶ。果たしてそこには、さらに内容を深めたセラフィーヌの大作が展示されていた。

ウーデと出会って再び描くことに自信を得たセラフィーヌは、ウーデをパトロンにして部屋を借り大量の画材を買い、次第にパリでの個展を夢見るようになる。しかしまた、時代の不幸が彼女を襲う。世界恐慌がおこったのだ。ウーデもその影響を受け、「もう資金は出せない。個展も延期だ」とセラフィーヌに告げる。

個展の夢も破れ、再び夢を打ち壊されたセラフィーヌは失望し、その純真な心を壊していく。

 

教会で熱心に祈り、聖歌を口ずさみ、自然に抱かれて花に話しかけ、木に耳を傾けるセラフィーヌ。他者と交わらず黙々と生きる彼女は、貧しく暖房もない冷たい部屋で、食べるのも忘れて絵を描いているときが一番幸せでした。画商ウーデと出会ってつかの間の夢を見たセラフィーヌ。果たしてウーデと出会ったことは、彼女にとって幸せだったのでしょうか?

口をつぐみ、目を見開いて感動し、また自分の世界に閉じこもるセラフィーヌを演じるヨランド・モローが、セラフィーヌのように生きてみたいと思わせ、セラフィーヌのすてきな世界に、見るものを招いてくれます。


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