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 日本のいちばん長い夏

2010年8月

日本のいちばん長い夏

  • 監督・脚本:倉内均
  • 原作:半藤一利編『日本のいちばん長い夏』(文春新書)
  • 音楽:小熊達弥
  • 出演:木場勝己(俳優)、半藤一利(作家/座談会当時は文藝春秋編集部員)、池内万作(俳優)、湯浅卓(国際弁護士)、中村伊知哉(慶応大学院教授)、青島健太(スポーツライター)、小田豊(俳優)、山本清(俳優)、早川純一(俳優)、林望(作家)、富野由悠季(アニメ映画監督)、鳥越俊太郎(ジャーナリスト)、島田雅彦(小説家)、田原総一郎(ジャーナリスト)、瀬川菊之丞(歌舞伎俳優)、市川森一(脚本家)、江川達也(漫画家)、松平定知(アナウンサー)、キムラ緑子(女優)
  • 配給:アマゾンラテルナ
 

2010年 日本映画 111分

 

昭和38年、「文藝春秋」は、戦争を体験しさまざまな立場の人々28人を料亭に集め、ポツダム宣言への政府の対応からはじまって、戦時下、原爆投下、ソ連の参戦、終戦について語ってもらいました。そして、その内容を「文藝春秋」に掲載しました。

この座談会を企画した、当時文藝春秋の編集部員だった半藤一利氏は、こう語っています。「今、この日を思い起こすのは、今度の戦争で死んだ310万人以上の同胞のことを忘れないためであります」と。

映画「日本の一番長い夏」は、この料亭でのやりとりを再現したドラマです。演じるのは、国際弁護士、大学教授、アナウンサー、映画監督、作家、ジャーナリスト、落語家、脚本家などなどで、こういうスタイルを「文士劇」というのだそうです。もちろん、俳優・女優さんも出演していますが、素人の文士たちが演じることで、よりリアルな迫力が出てきます。さらに、料亭での再現ドラマの間に、役を演じている、たとえばアニメ映画監督の富野由悠季氏、脚本家の市川森一氏や、ジャーナリストの鳥越俊太郎氏、アナウンサーの松平定知氏などへのインタビューが入ります。当時まだ小さかったご自身はどのような体験をし、何を感じたか? 父親はどうだったか? などです。

戦争当時、外務省は、外務次官は、駐ソ連大使は、陸軍大佐は、「回天」特攻隊員は、南方にいた兵士たちは、捕虜となっていた日本兵は、日本軍の捕虜だったオランダ兵は、共産党員として獄中にいた者は、新聞社や放送局では、一般市民は、沖縄の少女は、在ロシア日本大使は……、何を体験し、何を考え、どう行動したのかが、同じ場で語られ、戦争の全体が見えてきます。そして、お互いの立場を認識していきます。

監督の倉内均氏は、「戦後65年、戦争の記憶が失われようとしている今、彼らの生々しい言葉を、私の目と耳で再び聞こうと思う。息子や孫のためにも……」。監督は、親たちの体験したことを、子である自分をとおして、次代へ伝えていくことの大切さを訴えています。

昭和38年という、高度経済成長の上り坂にさしかかった時代に、なぜ、戦争について見つめる場を設けたのか、そして、今、なぜ、そのときを再現したのか。「時」が流れゆく中で、深い思いがこもった貴重な作品ができあがりました。


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