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 少年と自転車

2012年 4月

LE GAMIN AU VELO

少年と自転車

  • 監督・脚本・シナリオ・演出・製作:ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ
  • 出演:セシル・ドゥ・フランス、トマ・ドレ、ジェレミー・レニエ
  • 配給:ビターズ・エンド

2011年 ベルギー、フランス、イタリア映画 1時間27分

  • 第64回カンヌ国際映画祭審査員特別グランプリ受賞
  • 第69回ゴールデングローブ賞外国語映画賞ノミネート
  • 第24回ヨーロッパ映画賞最優秀脚本賞

「ロゼッタ」(1999年)、「息子のまなざし」(2002年)、「ロルナの祈り」(2008年)と、問題を抱え、社会から見捨てられた人々を取り上げてきたダルデンヌ兄弟が、日本で聞いたという話を元に、彼らの故郷での経済危機からインスピレーションを受けて製作した作品です。親から見捨てられて荒れる少年が、里親との心の戦いを経て、「この人は自分を見捨てない」とわかり再び人を信じることによって、心の安心と幸せをつかむまでを描いています。


物語

児童養護施設で暮らす12歳のシリル(トマ・ドレ)は、ここに自分を預けた父親と連絡を取りたいと思い、施設の人を困らせている。かつて住んでいたアパートに何度も電話をかけさせ、施設の人は、もう電話は使われていないと説明するが信じることができない。あげくのはてに、施設を抜けだそうとして暴れる。執拗なまでに父親を求めるシリル。

学校へ行くふりをして、アパートにやってきた。しかし、かつて住んでいた部屋は閉ざされたままだった。シリルを探しに来た施設の人の手をすり抜け、診療所に逃げ込んだシリルは、そこにいた一人の女性にしがみつく。パパが買ってくれた自転車があるはずだと叫び、大家に部屋を開けてもらうが、そこには何も置いてなかった。

ある日、診療所でシリルがしがみついた女性が、シリルの自転車を持ってやってきた。サマンサ(セシル・ドゥ・フランス)というその女性は、自転車を買ったという人から買い戻してくれたのだ。シリルは大切な自転車に乗って走り出す。自転車だけが、シリルと父親をつないでくれるただ一つの絆だった。やがてシリルはサマンサに、週末だけ里親になってくれるよう頼む。

少年と自転車
(C) Christine PLENUS


美容院をしているサマンサの家で週末を過ごしながら、シリルは自分の自転車を持っていた人を訪ね歩き、父親(ジェレミー・レニエ)の住所を探し出す。しかし、父親には一緒に暮らしている女性がおり、仕事が見つからない父親は、彼女の店でシェフとして働いていた。シリルは父親と会うことができ、ぎこちなく会話を交わす。しかし、父親は、シリルが重荷で、もう会いたくないと思っていた。「もう会いに来るな」という父親の言葉を聞き、シリルは自分の頭をかきむしり傷つける。そんなシリルを、サマンサは抱きしめるしかなかった。

サマンサは、シリルと真剣に向き合うことを選ぶ。しかしシリルは、同じ境遇である不良少年のリーダー・ウェスとつきあうようになり、ウェスの促すまま盗みを働くようになる。やがて、心配するサマンサに向かい「親でもないくせに」と、サマンサの腕をハサミで傷つけてしまう。シリルは夜の闇の中へ飛び出していく。

 

シリルを演じるトマ・ドレは1996年生まれの新人ですが、父親を探す執拗さと凶暴性、孤独感とおどおどしたまなざしが印象的でした。人間にとって、心の拠り所、自分の居場所があるということがどんなに大切なことか、シリルの姿をとおして教わりました。


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