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 もうひとりの息子

2013年 9月

THE OTHER SON

もうひとりの息子

  • 監督・脚本: ロレーヌ・レヴィ
  • 原案: ノアム・フィトゥッシ
  • 音楽:ダフェール・ユーセフ
  • 出演:エマニュエル・ドゥヴォス、パスカル・エルベ、
            ジュール・シトリュック、マハディ・ザハビ、
            アリーン・ウマリ、ハリファ・ナトゥール、
            マフムード・シャラビ
  • 配給:ムヴィオラ
  • 第25回東京国際映画祭サクラグランプリ、監督賞受賞

2012年 フランス映画 1時間41分


湾岸戦争のとき、攻撃された病院で生まれた男の子を、同じ保育器に入れて避難したことから、二つの家族にあってはならない悲劇がはじまります。憎しみ合っている民族の長い歴史の中から生まれた高い壁。越えることができないと思われるこの壁は、愛おしく思う気持ちで壊されることを教わります。


物語


テルアビブに住むヨセフ(ジュール・シトリュック)は、18歳。ミュージシャンになる夢を持っているが、3年間の兵役に就くため、兵役検査を受けた。血液検査の結果を、医師である母のオリット(エマニュエル・ドゥヴォス)に見せると、オリットは目を疑った。オリットと夫アロンの血液型では、ヨセフの血液型は生まれないはずなのだ。どう受け取ったらいいかわからないオリットは、何かの間違いではないかと再検査を依頼した。しかし、結果は同じだった。

オリットは、夫アロン(パスカル・エルベ)に事実を打ち明けた。アロンはイスラエル国防軍の大佐で、フランス人だった。オリットもフランス出身だった。ヨセフには妹がいた。

オリットがヨセフを産んだハイファの病院から連絡が入った。1991年、ヨセフを出産したのは湾岸戦争のときで、病院はミサイル攻撃を受け、新生児を保育器に入れて安全な場所に避難したというのだ。その後、それぞれの夫婦に戻す際に、新生児を取り違えたのではないかということだった。

オリットとアロンは、ハイファの病院に向かった。そこには、もう一組の夫婦サイード(ハリファ・ナトゥール)とライラ(アリーン・ウマリ)が来ていた。彼らはパレスチナ人だった。病院長からDNA検査の結果が報告され、子どもの取り違えだったことがはっきりした。

父親たちは、ショックのあまり外に出て行った。残されたオリットとライラは、持ってきた息子の写真を交換した。自分の産んだ我が子の写真を見つめがら、涙があふれるふたりはいつしか互いに手を握りあっていた。

もうひとりの息子
(C) Rapsodie Production / Cite Films / France 3 Cinema /
Madeleine Films / SoLo Films.


サイードとライラに育てられたヤシン(マハディ・ザハビ)には兄のビラル(マフムード・シャラビ)と妹がおり、ヨルダン川西岸地区で暮らしていた。二つの家族の間には高い壁があり、行き来するには通行証が必要だった。成績優秀なヤシンは医師を目指しており、パリで高等教育を受けていた。大学入学資格試験に合格したヤシンは、家族へのたくさんの土産を持って、足を悪くしたサイードを見舞うため帰国した。

パレスチナ人は兵役に就くことができないといういう知らせが届いたことから、オリットとアロンは、ヨセフに事実を伝えた。ヨセフは、自分が西岸に住むパレスチナ人であることにショックを受けた。

実の母に会ってみたいと思っているヨセフのために、オリットはライラに電話をした。このことがきっかけとなり、サイードとライラも、事実を子どもたちに打ち明けることとなった。兄のピラルは、このことを受け入れることができず、今まで愛してきた弟を「あいつは敵だ」と拒否しはじめた。

オリットとアロンは、ライラとサイード一家を家に招くことにした。通行証はアロンが用意した。兄のピラルは、行くことを拒否した。妹たちはすぐに仲良しになった。ヨセフとヤシンは、庭に出てふたりだけになり、同じ状況である者として気持ちを分かち合った。しかし家の中では、アロンとサイードが、政治的な話になってどなりあっていた。

もうひとりの息子
(C) Rapsodie Production / Cite Films / France 3 Cinema /
Madeleine Films / SoLo Films.

もうひとりの息子
(C) Rapsodie Production / Cite Films / France 3 Cinema /
Madeleine Films / SoLo Films.


 

「ぼくは、君の人生を歩めたかもしれない。でも、ぼくはこの人生を成功させる。君も、君の人生を成功させろ」とういうヨセフの言葉が、心に残ります。

「ふたりの息子」は、2012年25回東京国際映画祭で、最高賞にあたる「東京サクラグランプリ」と「最優秀監督賞」を受賞しました。女性監督だからでしょうか、ふたりの母親の、大切に育ててきて成人しようとしている息子とお腹を痛めた実の子への愛情が、深く静かに表現されています。


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