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ぼけますから、よろしくお願いします。

2018年11月

 ぼけますから、よろしくお願いします。

  • 監督・撮影・語り:信友直子
  • プロデューサー:大島新、濱潤
  • 出演:信友良則、信友文子
  • 製作・配給:ネツゲン、フジテレビ、関西テレビ
  • 配給協力:ポレポレ東中野、ウッキー・プロダクション

2018年 日本映画 102分

  • ぴあ映画初日満足度1位
  • 文部科学省特別選定映画
  • 厚生労働省推薦映画

耳が遠く、腰が曲がった父・良則さん。道路の途中で、電信柱に手をつき休む。「すぐ前のことがわからなくなる」と妻を語る。2014年1月8日、本作品の監督である信友直子さんの母・文子さんは、アルツハイマー認知症と診断された。信友監督は大学進学のために上京してから40年ほど、東京で一人暮らしをしている。故郷の広島県呉市で暮らす両親、父95歳と、認知症の母87歳のふたりだけの生活の様子を、2014年から撮影してきた。

ドキュメンタリー制作のテレビディレクターをしている監督は、両親の暮らしをテレビで放映したところ、大反響を呼び再放送の希望が多く寄せられた。今回は、番組で放送された映像に追加・再編集して、娘の視点から年老いた両親の暮らしを伝えるドキュメンタリーを発表した。子どもとして身につまされる両親の生活シーンが続くが、そこに見えるのは、長年ふたりだけで暮らしてきたからこそ育まれた、絶妙な関係の間に垣間見える夫婦愛である。

 ぼけますから、よろしくお願いします。
(C)「ぼけますから、よろしくお願いします。」製作・配給委員会


次第に自分の状況がわかってきた母は、「どうして、わからんようになるかね」「どうしたらよいかね」「めいわくかけるね」「しょうがないね、ごめんね」という言葉が多くなった。そんな母を、父はいつもと変わらない日常のルーティーンでやり過ごしていく。認知症になったからと言って、特別に何かするわけではない。

父はいつも何か歌っている。新聞の切り抜きをするのが常だ。そのうちに、母は「死にたい、じゃまになるなら死にたい」というようになる。思い通りにならないことから、朝、布団から出なくなり、いじれる。助けてと父に訴えるが、耳の遠い父は聞こえず、手を差し出すことはない。

撮影を続ける監督は、娘として両親をカメラに撮り続けることが辛くなるが、父は「わしがやる。あんたはあんたの仕事をせい」と言う。娘は、今まで気づかなかった父の愛を体験する。

 ぼけますから、よろしくお願いします。
信友直子監督


年老いた両親の生活に手を貸したい娘、しかし、長い間一緒に暮らしてきた夫婦には、夫婦にしかわからない距離間と関係性がある。

 

娘でも入ることができない夫婦の間。両親の生活は危うく心配だが、夫婦で一緒に歳をとっていくという幸せがあるだろう。

自分の親と重ねて見て、身につまされた。信友監督のご両親のすばらしき夫婦の姿に、感謝したくなった。


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