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葡萄畑に帰ろう

2018年12月

THE CHAIR

 葡萄畑に帰ろう

  • 脚本・監督:エルダル・シェンゲラヤ
  • 脚本:ギオルギ・ツフヴェディアニ
  • 音楽:イオセブ・バルダナシヴィリ
  • 出演:ニカ・タヴァゼ、ケティ・アサティアニ、ナタリア・ジュゲリ
  • 配給:クレストインターナショナル、ムヴィオラ

2017年 ジョージア映画 99分

  • 2018年ロシア・アカデミー賞最優秀外国映画賞

冒頭に見たこともない文字が出てきました。タイの文字のような感じで、クルクルと曲がっていて象形文字のようにも見えます。この映画の制作国はジョージア。え? ジョージア? そんな国名、あったかしら? あるんです。北はロシア、西は黒海に面し、南はトルコ、アルメニア、アゼルバイジャンに囲まれた国です。面積は北海道より一回り小さく、人口は約400万人。3000年の歴史がありますが、周囲の国から侵略と支配が繰り返され、19世紀からは帝政ロシアから支配されましたが、1918年に独立してジョージア民主共和国となりました。しかし、1921年ポルシェビキの侵攻を受けて崩壊し、ソヴィエト政権下に入ります。1991年にソ連邦から独立を取り戻し、今年は独立100年を迎えました。

日本では「グルジア」と呼ばれていましたが、2015年から「ジョージア」となりました。英語表記は「Georgia」です。長い期間の弾圧とロシアとの戦争で、人々は大きな傷を受けましたが、国民の自国への思いは篤く、どんな状況に置かれても守ってきたジョージア魂、それがワインとジョージア文字です。ワイン発祥の地とも言われています。文字は、ブドウの蔓から生まれたとも言われています。ジョージアはワイン発祥の地と言われ、ワイン文化は8000年もの歴史を持っています。


物語

郵便局の車が、ある建物の前に到着する。中に入ると、ローラースケートを履いた職員が、忙しく動いている。ここは「国内避難民追い出し省」。大きな荷物は、この省の大臣であるギオルギ(ニカ・タヴァゼ)に届けられた。荷物の中身は、立派な椅子。デスクの前に椅子を置くとギオルギは、椅子に付いているボタンを押した。椅子は高く高く昇り、座っているギオルギは高いところから下を見てご満悦。大臣という椅子に座り、人生最高の幸せに浸っていた。

とそこへ電話が鳴り響き、ギオルギは一気に現実にもどされた。それは首相からの電話で、避難民を追い出すためにもっと厳しくしろという命令だった。ギオルギは、心重く避難民のもとへと向かうが、力尽くで彼らを追い出そうとして大混乱となる。これは、選挙活動にマイナスになると思ったが、後の祭り。機動隊に追われる女性・ドナラ(ケティ・アサティアニ)を助けようとし、反対に機動隊に殴られきを失ってしまった。果たしてギオルギは、大臣としての任務を果たせるのか?

 葡萄畑に帰ろう


 

ソヴィエト政権下で圧力を受けてきたジョージアの映画人たち。1991年にソ連邦から独立を取り戻した後の混乱期に青春時代を過ごした人々は「失われた世代」と呼ばれています。新世代と言われる彼らは、厳しい時代の社会を描き、世界中から評価されるようになりました。暗く重い作品が多かった中で、巨匠エルダル・シェンゲラヤ監督が21年ぶりにメガホンを取った「葡萄畑に帰ろう」は、風刺が効いた明るい作品として登場し、2018年ロシア・アカデミー賞で最優秀外国映画賞を受けています。

「葡萄畑へ帰ろう」は、母が待つ生まれた地に帰ろうということと、ジョージア国民の原点に帰ろうという意味も含まれているように感じました。母なる大地と、その大地に育まれた人々。いつもあたたかく、ふところ大きく迎えてくれる故郷の心地良さを味わいました。


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